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マンションも築20年になると、リフォーム適齢期になる。わが家も築20年超えなのだが、エコリフォームについては」補助金などもあるので、わが家の浴室をリフォームすることにした。リフォーム会社の見積もりから工事完了まで、どういった手順でリフォームを行ったかをレポートしていこう。
浴室のリフォームを思い立った理由は?住宅ジャーナリストという仕事柄、イマドキの浴室は、床の水はけが良く、断熱性の高い浴槽なのでお湯が冷めづらいということは知っていた。築20年を超えたわが家の浴室は、床の水はけが悪くて水アカなどの白い汚れがついているし、冬は浴槽のお湯が冷めて追い焚きを繰り返している。前から気にはなっていたのだが、故障しているわけではないので、決断できずにいた。
今なら、断熱性の高い浴槽や節水型水栓などのエコリフォームについては、「子育てエコホーム支援事業」の補助金が使えることもあり、先日、浴室の床で足を滑らせたこともあって、リフォームを決断した。ちなみに、「子育てエコホーム支援事業」は、リフォームについては子育て世帯でなくても補助金の対象になる。(新築住宅の取得に対する補助金は子育て等世帯に限定され、リフォームに対する補助金は子育て等世帯であれば上限額が上乗せされる)
リフォーム前のわが家の浴室(筆者撮影)。画像では分かりづらいが、床面には白い汚れがたくさんついている
3社に相見積もり。指定の商品とおススメの商品でさっそく数社を選んで、相見積もりを取り、リフォームを依頼する1社を決めようと思った。筆者の場合は、工務店や住宅設備メーカーに知り合いがいたので、まずはその方々に相談したが、この手順は、どこにこだわりを持つかなどによっても変わると思う。
浴室の細部にまでこだわりがある場合は、ショールームをいくつか見て、好みの商品をあらかじめ決めたうえで、相見積もりを依頼するリフォーム会社を探す手順のほうがよいだろう。筆者は細部にはこだわりがなかったので、先にリフォーム会社を探す手順にした。その結果、自宅から比較的近い、中堅工務店、住宅設備メーカーのフランチャイズ店、住宅設備メーカーの直営店の3社を選んだ。
ただし、相見積もりでは同じ条件を提示しないと比較が難しくなるので、住宅設備メーカーのサイトで浴室の商品を調べて、そのなかから良いと思うものを一つ選び、以下のような条件を提示して見積もりを依頼した。その際に、依頼先は知らせないが、相見積もりであることは伝えている。
子育てエコホーム支援事業の補助金を利用したいユニットバス全体を新しくしたい(浴室乾燥機含む)ユニットバスは、「XXX社のYYYの商品」を必ず、別途おススメの商品を1つ、計2つの見積もりがほしいオプションで浴槽の「お掃除機能」をつけたいなお、お掃除機能はサイトを見ていて、便利だと思ったもの。お掃除ボタンをオンすれば、排水して、洗剤とお湯を強く噴射して浴槽の中を掃除してくれる。浴槽の掃除は腰が痛くなるので、思い切ってオプションを条件に加えた。滑りにくい床材や高断熱浴槽は、最近はどの商品もスタンダードになっているので、敢えて要望はしなかった。
3社はそれぞれわが家を訪問し、浴室のサイズを測ったり、見積もりに必要な項目を筆者に質問したりした。その際に、現状の浴室の出入り口と位置や形状が変わるので、隣接する洗面所の浴室側の壁をいじる内装工事が必要ということが分かった。
3社の相見積もりを比較し、1社に絞り込む3社の見積もりが出そろったところで、比較をしていった。とはいえ、それぞれの見積もりは項目がばらばらなので、金額の大きな項目だけをピックアップしたり、似たような項目で金額が大きく異なるものをピックアップして比較するだけでもよいだろう。可能であれば、似たような項目をまとめるなどして、おおよその傾向の違いを見るようにしたい。
見積もり比較表の例(筆者作成)、実際には合計額に消費税が課税され、各社のそれぞれの値引きが入った額を提示される
まず、いずれの項目も他社より高いA社だが、見積もりの提出が遅かったこともあり、依頼しないことに決めた。次は、B社とC社の比較になるが、最も重要なのは、金額の大きいユニットバスとオプションのお掃除機能の金額だ。B社のほうが安くなっているが、後で明細を取り寄せたところ、お掃除浴槽の定価からの割引率が、他社より大きいことが分かった。
また、C社の仮設養生費用が他社よりかなり安いが、これはマンションの共用廊下やエレベータなどの養生費用を入れず、住戸内だけの養生費用だったので、共用部の養生費を加えるよう依頼した。また、他社が見積もりに入れているアスベスト関連の費用がなかったので確認したところ、既存の浴室にアスベストが含まれる場合は、10万円程度の費用が上乗せされるという回答だった。
さらに、浴室の詳細部分は各社にお任せの見積もりだったので、その明細を取り寄せて比較した。たとえば、浴室の扉はC社が標準の折れ戸、B社は今の浴室でタオル掛けを使っていたことから、開き戸でタオル掛けをつけていた。逆に、クロスの張り替えでは、B社は浴室側の1面の壁のみ、C社は両面の壁と天井までが対象となっていた。というように、細かい点でいろいろな違いがあった。
こうした違いをそろえたうえで、2社に再度見積もりを依頼したが、結論から言うと大きな違いはなかった。それぞれに+-があるのでかなり迷ったが、対応が早いこと、他社が知らない重要な情報を提供してくれたことなどから、少し対応がアバウトだったがC社に依頼することにした。
ショールームでサンプルを見ながら、詳細を詰めるC社は特定の住宅設備メーカーのフランチャイズ店だが、他のメーカーの商品も扱っているので、もう一つの提案として、他社の同グレードの商品を選んで見積もりをしていた。そこで、その2つのメーカーのショールームに行って、サンプルを見ながら詳細を詰めることにした。
このとき、自分たちだけで行ってもよいし、リフォーム会社に同行をしてもらってもよい。今どきのユニットバスは、異なる設備メーカーの商品でも似たような機能があるが、それぞれに個性があるのでかなり迷った。最終的には、共通で見積もりを取った商品の方を選んだ。
ショールームで浴室の詳細を詰めると作成されるプレゼンシートの例
マンションならではのリフォームのルールがあるさて、詳細が決まると、住宅設備メーカーが実際に浴室を調査して、自社のユニットバスを設置できるか、ユニットバスを制作する際に空けておくべき給湯器のリモコンの位置、取り付けるシャワーの位置などを確認していった。これで問題なく設置できるとなると、リフォーム工事の日程を決めて、工事内容を確定し、「建築請負契約」の締結に移行する。
ただし、マンションごとにリフォームに関するルールがある。あらかじめ管理会社に相談しておけば、管理規約にどんなルールがあるかを教えてくれるので、早めに相談したい。わが家の場合は、「管理会社に共用部分や構造への影響、内装・床材の指定についてあらかじめ相談すること」、「施工1カ月前までに管理組合に所定のリフォーム申請書を提出すること」、「着工前に近隣住戸に工事期間などについて通知すること」などのルールがあった。
リフォーム会社は管理組合とのやり取りになれているはずだが、2週間前までに申請すればよいマンションが多いということで、まだ動いていなかった。マンションそれぞれでルールが異なるので、自身でもきちんと確認して、リフォーム会社に連絡する必要があるのだ。
リフォーム期間は5日間、その間は自宅の風呂に入れないさて、契約に際しては、工事内容の詳細確認や金額、支払うタイミングだけでなく、工事のトラブルに対応できる保険に加入しているか、アフターサービス保証はあるかなどの確認も重要だ。契約を終えると、いよいよ工事開始。
工期は5日間。その間は、もちろん浴室は使えない。また、原則として工事中は在宅した。工事の工程は以下の通り。
1日目:養生開始、既存設備解体撤去、給排水管移設
2日目:電気配線移設
3日目:新規ユニットバス搬入設置
4日目:浴室入口枠取付、給排水管接続、電気配線接続
5日目:内装工事、清掃・養生撤去
初日は解体工事。一日中、かなりの音がして、埃が舞っていた。あわてて洗面所に置いていたものを避難させた。解体工事が終わると、浴室はただのコンクリートの箱の状態になっていた。1日目に電気配線の移設もしてしまったため、実際には2日目の工事はなかった。
解体工事終了後の浴室(筆者撮影)
3日目にユニットバスが搬入されて、組み立てられる。4日目に、給排水管と電気配線が接続され、浴室として利用することはできるようになった。5日目は洗面所の内装工事で、今回は壁と床の張り替えをした。
浴室リフォームが完了。特別注文で浴室の扉にタオル掛けを上下2本取り付けてもらった(筆者撮影)
お掃除浴槽(筆者撮影)
お掃除機能は、左上の○のところに洗剤を入れると浴槽の底の○の穴から洗剤や流水が出て、強い水流で浴槽を洗う。ふたをしっかりしめておかないと、浴室が水浸しになる、らしい。洗面所側の浴室乾燥機のリモコンの上に、お掃除浴槽用のリモコンが設置された。
さて、新しい浴室で入浴をしてみた。暑い時期なので、お湯の冷め具合はわかりづらいが、床の水はけはとてもよい。お掃除機能は、想定していたよりはピカピカではなく、ちょっと微妙だ。使い続けてみないと実力はわからないのかもしれない。
補助金でいくらもどってくる?こうしてリフォーム工事が終了した。その費用は約157万円。そのうち、子育てエコホーム支援事業の補助金でいくら戻ってくるかというと、リフォーム会社の試算によると、7万円だった。
子育てエコホーム支援事業の補助金の試算例
ただし、ラッキーなことに、東京都の「既存住宅における省エネ改修促進事業」の補助金が使えることを知った。2023年度までの補助金制度にはなかった「高断熱浴槽」が、2024年度から対象になると発表されたのだ。補助金の額は、「助成対象経費の1/3」か「1住戸当たり9万5000円」か、いずれか小さい額。リフォーム計画中にこのことを知ったので、リフォーム会社に相談したところ、わが家の場合は前者となり、おおよそ5万5000円程度の補助額になるのではないかということだった。
子育てエコホーム支援事業と東京都の既存住宅における省エネ改修促進事業は、併用が可能。工事完了後にリフォーム会社にそれぞれの申請をしてもらうので、まだ決定してはいないが、12万5000円程度のキャッシュバックということになる。浴室のリフォーム自体は額が大きいので、それほど戻ってくる印象はないが、節水トイレのリフォーム工事程度の費用であれば、補助金にもっとお得感があるだろう。
長々の筆者の自宅のリフォーム工事についてレポートしてきたが、リフォームの手順や補助金など、これからリフォームをする人にとって、参考になる情報もあるだろうと考えてのことだ。少しでも役立てていただければ嬉しい限りだ。
●取材協力
子育てエコホーム支援事業(国土交通省)
東京都既存住宅における省エネ改修促進事業
この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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