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都心部の朝の通勤ラッシュでは当たり前の満員電車。混雑した車内に押し込まれるように乗り込み、もみくちゃにされるのは憂うつ以外の何ものでもない。これって、どうにかならないものだろうか?そこで、調べてみると、今年から東京都が「快適通勤ムーブメント」を実施することにしたらしい。満員電車の混雑緩和を目指す取り組みを取材した。
満員電車をなくす一手になるか? クールビズに続く、民間企業を巻き込んだ取り組み列車本数の調整など鉄道の輸送サービスを改善することで満員電車をなくそうという取り組みは、鉄道会社によって進められているが、今回の「快適通勤ムーブメント」は、鉄道の利用者、そしてその利用者が勤める企業も巻き込んで、混雑緩和を実現させていこうという取り組みだ。
「新しく車両や線路を増設させるには、時間もお金も掛かります。そこで、東京都では、多くの人に快適な通勤を体験してもらうため、混雑緩和等を促進させる取り組みとして『快適通勤ムーブメント』を実施することにしました。まずは、効果を実感してもらうことが、快適に公共交通を利用できる都市の実現の第一歩となると考えています」(東京都都市整備局、以下同)
具体的に目指しているのは、環境対策などを目的とした衣服の軽装化キャンペーン「クールビズ」のような社会的なムーブメントを起こすことだという。
「満員電車をなくすという大きな目標を達成させるためには、鉄道会社と鉄道利用者の双方が『せーの』で一斉に取り組むことで、より高い効果が期待されます。そこで、行政として何ができるかと考えた結果、民間企業にお声掛けをして、ムーブメントの輪を広げていこう、という結論に達しました。ムーブメントは、広く世の中に浸透するように『時差Biz』と名付けました。具体的には、鉄道が混むピークは朝の一定時間なので、企業に時差出勤やテレワーク等を促していただくことによって、個人の通勤時間を分散させ、混雑緩和を実現することを目指しています」
7月からの2週間トライアルで快適通勤ムーブメント「時差Biz」を実施する最初の一歩として、今年7月11日から7月25日の2週間、ムーブメントへの参加企業が時差通勤やテレワーク等で「時差Biz」を実施する。一部鉄道会社では「早起きキャンペーン」と称して、早い時間帯での乗車でICカードにポイントが貯められるような取り組みを実施する予定だ。
「この期間はトライアルではありますが、終了後は参加者にアンケートを記入いただき、働き方がどう変わったか、通勤電車の状況はどうだったかなどについて整理していく予定です。さまざまな声を踏まえて、次につなげていきたいです。ムーブメントを継続させていくうえでも、われわれとしては広く社会に浸透させることが成功のカギなのかなと思っています」
現在、都市整備局と産業労働局が連携して、多くの企業から賛同を得られるよう働きかけを進めているそう。
すでに、都内の企業のなかには、早朝出社した社員に朝食無料サービスをつけたり、シェアオフィスの活用を促したりと、独自に働き方改革を進めているケースも増えている。そうした流れと親和性が高い『満員電車ゼロ』への取り組みとあって、「車内の混雑から解放され、従業員のストレスが減り、結果的に生産性の向上に結びつく」というメリットは、企業からも共感を得やすいと感じているのだとか。
さて、気になるのは「混雑解消がいつになるのか?」という点だが、これについての明言はさすがに難しいという。ただ、快適通勤ムーブメント「時差Biz」の取り組みは、2020年オリンピック・パラリンピックも見据えて継続的に取り組んでいくとのことだ。
「満員電車の解消は、小池都知事が目指す『誰もがいきいきと活躍できるダイバーシティの実現』に向けた取り組みの1つです。まだ先のことかもしれませんが、いつか『そういえば昔、満員電車ってあったな』と振り返れるような日を目指しています。すぐにそうした社会が実現するとは思えませんが、ちょっとずつでも皆さんの意識を変えていき、地道かもしれませんが確実に進めていきたいと考えています」
満員電車に乗るだけで疲れ果て、会社に着いたときに働く意欲が低下してしまうのは本末転倒。今年からムーブメントの醸成に乗り出した東京都。急な変化は望めないかもしれないが、小さな一歩が大きなうねりになることを期待したい。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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