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「長期優良住宅」と「低炭素住宅」は認定制度によるものなので、認定住宅ともいわれる。国土交通省は、制度が開始されてから平成27年3月末までのそれぞれの累計戸数を公表した。どういった住宅で、どんなメリットがあるのか、戸数は今後増えていくのかなど、詳しく見ていくことにしよう。
認定制度による「長期優良住宅」と「低炭素住宅」とは?住宅の寿命を延ばす取り組みとして、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(長期優良住宅普及法)が平成21年に施行され、長期優良住宅の認定制度が始まった。
長期優良住宅に認定されるには、建物の基本構造部の耐久性が高いというだけでなく、基本構造部より耐用年数が短い配管などの補修や更新がしやすいこと、間取りの変更がしやすいことなどの厳しい条件があり、長期にわたって使用できる構造が求められる。これに加え、一定の住戸面積であることや、定期的な点検や補修等に関する計画が策定されているなどの維持管理についても、認定の条件に挙げられている。
また、地球温暖化につながるCO2の排出量を削減する取り組みとして、建築物の省エネ基準の見直しに加え、「都市の低炭素化の促進に関する法律」が平成24年12月に施行され、低炭素建築物認定制度が始まった。
まず、新しい省エネ基準では、屋根や壁、床などの断熱性のほか、冷暖房や給湯、照明、換気などの設備によるエネルギーや太陽光発電などの再生可能エネルギーも考慮し、石油、ガス、石炭、原子力等による一次エネルギーをどの程度消費するかを計算して総合的に判断するものになった。
「低炭素住宅」の認定基準にも、こうして計算した一次エネルギーの消費量がかつての省エネ基準よりも10%削減できること、低炭素に効果のある節水対策やHEMS(エネルギー使用量の見える化)の導入などを採用していることが条件となっている。
いずれの認定住宅の場合も、高い性能が求められるために建築コストが高くなるが、その代わりに税制や融資(金利)の面で優遇措置が用意されている。
認定住宅で受けられる優遇措置とは?優遇措置の中でも特に大きな優遇となるのが、住宅ローン減税の拡充とフラット35Sの金利引き下げだ。
住宅ローン減税は、10年にわたり住宅ローンの年末残高の1%を所得税などから控除するもの。平成31年6月までは最大控除額が400万円となるが、認定住宅の場合であれば100万円上乗せされ、最大控除額が500万円に増額される。
また、全期間固定金利型の住宅ローン「フラット35」を借りる場合、認定住宅の場合であれば、当初10年間、適用金利が0.6%引き下げられる「フラット35S(金利Aプラン)」が利用できる。住宅金融支援機構の試算(融資率9割以下で借入額3000万円、返済期間35年、元利均等返済で金利が1.47%の場合)によると、フラット35と比べて約174万円の利息が削減できる効果がある。
さらに、低炭素住宅や長期優良住宅については、「省エネ住宅ポイント制度」(平成28年3月まで)の対象になるので、発行期間であれば30万円相当のポイントがもらえる。
長期優良住宅については、固定資産税のメリットも大きい。新築住宅なら家屋に対する固定資産税が1/2に軽減される特例措置が、一戸建てで3年間、マンションで5年間適用される(平成28年3月まで)。長期優良住宅の場合は、軽減期間がそれぞれ2年間も延長されるからだ。
認定住宅は多いの? 今後増えるの?国土交通省が公表した認定住宅の累計戸数を見ていこう。長期優良住宅は約59万2千戸、低炭素住宅は約8千戸と制度の運用開始時期が異なるので累計に開きはある。
平成26年度だけで見ると、長期優良住宅の10万29戸(一戸建て9万7649戸、共同住宅2380戸)に対し、低炭素住宅は3974戸(一戸建て2190戸、共同住宅1784戸)と圧倒的に長期優良住宅の一戸建てが多いことが分かる。これはなぜだろう。
長期優良住宅の場合は、性能を引き上げる分だけ建築コストが増加するが、この分を居住者が負担できるかどうかが問題になる。注文住宅のように、建築主である居住者が高い性能をのぞみ、コストアップを了承して建築するのであれば問題はない。一方、戸数の多い分譲マンションの場合は、購入者全員は性能強化によるコストアップをのぞまないことも考えられるので、そこまで性能を引き上げないということになる。
さらに、長期優良住宅の場合は、定期的なメンテナンスを継続することも条件となっているため、引き渡して以降も建築会社や売主が居住者へメンテナンスの案内などのフォローを続けることがのぞましく、その体制が整えられるかどうかも課題となる。
一方、低炭素住宅は高い省エネ性能によるコストアップに加え、新しい省エネ基準の算出方法が課題だ。認定されるためのデータ作成の難易度が高いことから、小規模な工務店では対応できない場合も考えられる。そうはいっても、住宅分野についても平成32年4月には「平成25年省エネ基準」が義務化される予定(現在は経過期間)。それに向けて研修などが行われているので、対応できる施工会社が増えていくと予想される。
いずれにせよ、建築コストと認定のための体制づくりといった普及を阻む要因もあるので、住宅全体に占める認定住宅の割合もそれほど多くはない。時期が異なるので適切な比較ではないが、平成26年度の着工戸数では、分譲マンションは11万215戸、分譲一戸建ては12万4221戸、持ち家は27万8221戸あるので、認定住宅の割合は、一戸建てでも1/4程度、マンションに至っては数%程度と推計される。
住宅の性能に対する居住者の意識と供給側の体制次第で、認定住宅の数は変わってくるといっていいだろう。
●参考この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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