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政府の地震調査研究推進本部が4月下旬に全国地震動予測地図2017年版を公表した。これを使うと自分が住んでいる街などで地震によって強い揺れに見舞われる確率を調べることができるらしい。さっそく試してみた。
Mapを開くと揺れに襲われる確率で色分けした地図が現れる
「全国地震動予測地図(J-SHIS Map)」とは、将来日本で発生する恐れのある地震による強い揺れを予測し、その予測結果を地図化したもの。防災科学技術研究所のウェブサイト「地震ハザードステーション」のトップ画面で左上のスタートボタンをクリックするとMapが開く。
Mapを開くと日本列島の地図が現れるのだが、なにやら黄色や赤で色分けがしてある。これは今後30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率の分布図だ。黄色は0.1%未満だが、赤が濃くなるほど確率が高くなり、最も濃い赤は26%以上を示す。首都圏や静岡県、紀伊半島、四国などの太平洋沿岸は軒並み濃い赤で塗りつぶされている。
縮尺を上げて東京都を見ると23区はもちろん、西側も武蔵村山市や昭島市、日野市あたりまでほぼ真っ赤だ。確率が26%よりも低い場所に住もうと思うなら、都心からかなり離れなければならないことが分かる。ちなみにMapの右上にある+マークをクリックすると、地図をグーグルマップに切り替えられるので、よりリアルに感じられそうだ。
地下に広がる活断層の範囲が分かる次に地図の上にあるタブで「想定地震地図」を選択し、左上の「震源断層」と書かれたボックスの中の「主要活断層帯」の項目にチェックを入れる。
すると地図上に赤い長方形がいくつも現れる。これが活断層だ。
この赤い四角のうち、さいたま市から東京都北部にかけての部分をクリックすると、色付きのマップに切り替わり、「綾瀬川断層伊奈ー川口区間」というウインドウが現れた。さらに地図上には黒い直線や長方形、青い星印も現れる。直線は地表に現れている活断層の位置、長方形は地下にある断層の範囲、星印は想定震源を表しているのだ。
この断層は地表ではさいたま市付近から草加市付近にかけて現れているが、地下では断層が南西方向に広がっていることが分かる。そのため、星印を震源とした断層のずれが発生した場合、地下に断層が広がっている範囲ほど震度が大きくなると予想される。
地盤の揺れやすさが色分けされて示される地震の揺れは地盤の硬さ(柔らかさ)にも左右される。そこでタブの「表層地盤」をクリックしてみると、またも色分けされた地図が現れた。
これは地下の揺れが地表でどれだけ増幅されるか、つまり地盤の揺れやすさを示したもので、濃い青が最も揺れにくく、濃い赤が最も揺れやすいことを示している。
首都圏の地図を見ると、湾岸エリアのほか、利根川や荒川など大きな川沿いのエリアを中心に平野部は赤い範囲が広がり、内陸に行くほど緑や青の範囲が多くなっている。湾岸や川沿いなどは砂や砂れきなどがたい積した柔らかい地盤が多く、岩盤で覆われた山などより地震の揺れが大きくなりやすいのだ。
ただし、青いエリアでも安心してはいられない。山側のエリアでは土砂崩れなどが発生するリスクがあるからだ。そこで地図の左上にある「地すべり地形」の項目にチェックを入れると、青いエリアに茶色いマークがたくさん現れる。過去に地すべりが発生した痕跡が残っている場所だ。
住所などで250m角の詳細情報が検索できる場所を絞って見たい場合は、左上の「場所を検索」で住所や施設名称などから検索できる。
トップ画面の「確率論的地震動予測地図」のタブを選択し、例えばSUUMOジャーナルを運営しているリクルート住まいカンパニーがある「東京都中央区八重洲2丁目」で検索すると、地図上に赤いピンが表示された。
そこをダブルクリックすると地点情報についてのウインドウが開き、250m角の範囲の詳しいデータを見ることができる。この地点が30年以内に震度6弱以上となる確率は45.0%だ。
さらに地点情報のウインドウの右上にある「カルテ」のボタンをクリックすると、より詳細なデータを見ることができる。
カルテの中の表層地盤の項目を見ると、地盤増幅率は1.44、微地形区分は「砂州・砂礫州」だ。また影響地震カテゴリーという項目では、その地点の震度6弱以上の影響度はフィリピン海プレートや太平洋プレートなど、「海溝型地震」の影響が大きいことが分かる。PDFとしてダウンロードすることができるのも便利だ。
確率が低いから安心とは限らないこのようにJ-SHIS Mapを使うと今後30年(または50年)以内に地震によって強い揺れに見舞われる確率が分かるほか、地下の活断層の範囲や、地盤の揺れやすさなどが分かる。だが、「確率が低いからといって油断はできない」と話してくれたのは、文部科学省地震・防災研究課地震調査研究企画官の和田弘人さんだ。
「じつは熊本地震のあった熊本県益城町で30年以内に震度6弱の地震が発生する確率は0.9%でした。でもこれは、30年以内に大雨や火災の被害にあうのと同じぐらいの確率なので、決して低い数値ではありません」
沿岸部では海溝型地震のリスクが高く、内陸部でも活断層や地すべりによる災害が発生しやすい日本では、どこにいても地震のリスクから逃れることはできそうもない。住まいの耐震性を確保したり、家具を固定して転倒を防ぐなど、日ごろからの備えが重要といえるだろう。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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