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ノロと初めて海外を旅したのは2002年の夏。ノロがまだ1歳になる前のことです。その後も毎年のように旅を続け、今年6月の旅でなんと14回目の渡航。そのぶん当然ノロも歳をとっておりまして、現在15歳です。
今やすっかりおっさん、いや老境にさしかかる年齢ですが、先日のチェコ&ドイツ旅行で1番タフだったのが、何を隠そうこのおっさん猫……。今回はそんなノロの健康の秘訣に迫ります!
■なんと言っても散歩!
当時11歳という年齢を考慮して「この旅が最後になるかな……」と思いつつ訪れたイギリスで、なんと散歩の楽しさに目覚めてしまったノロ。イギリスは国中にフットパス(※)が張り巡らされた「散歩の本場」なのですが、まさかそこで日本の猫が味をしめて帰ってくるなんて……。
(※宝島オンライン編集部 注:フットパス…イギリスを発祥とする『森林や田園地帯、古い街並みなど地域に昔からあるありのままの風景を楽しみながら歩くこと【Foot】ができる小径(こみち)【Path】』のこと ~日本フットパス協会HPより引用)
その頃、僕は八ヶ岳の麓に移住したばかりだったのですが、あいにくマンションの上階に仮住まい中の身。帰国後、おぼえたての散歩をしたいノロが、1日に何度も、昼夜関係なく「サンポ行こ!」とねだってくるのには、ほとほと参りました。
ほどなくして一軒家へ移り、めでたく思う存分散歩に出かけられるようになったのですが、このことがノロに大きな変化をもたらしたのです。
玄関でリードを見せると、眼の色変えて駆け寄ってくるノロ。お前は犬かっ!
まず食事を残すことがなくなりました。それまで運動量や代謝の落ちる冬場の食べ残しがひどかったのですが、散歩をするようになってからというもの、若い頃の倍量くらいの食事をペロリと平らげることも珍しくなくなりました。もちろん快便快眠であります。
もうひとつの変化が「野生化」。縄張りに目覚めて敷地内で臭い付けをしたり、草を食べたり、木登りを覚えて毎朝そこで爪とぎをしたり……。わが家は森の中なので、狐や鹿など野生動物の臭いも多いのか、五感をフル稼働して散歩を楽しんでいるようです。
散歩は早朝にまず1回。朝5:00くらいから僕らを起こしに来ます。そして午前中にさらに2回、日が高い間は昼寝をしたのち、夕方むくりと起きてさらに1、2回。毎日この繰り返しです。
おかげで獣医さんもびっくりするほどの健康状態をキープするようになり、生まれた頃からノロを診てくれている先生には「こら、まだまだ旅行行けるわ……」と呆れられる始末。最後になるはずだったイギリス旅行の後、さらに3回も旅に出かけることになりました。
■水をたくさん飲む習慣づけ
オス猫特有の尿路系の疾患を予防するべく、幼少の頃から気を付けていたのが水をたくさん飲ませること。うちは毎晩ウェットフードですが、これをさらに人肌程度に温めたお湯でひたひたにして与えることで、食事のたびに水を飲むようにしむけていました。
さらに最近は「風呂の湯」の味を覚え、僕が入浴中、浴室のガラス戸に黒い影がじっと張り付いて待っていることもしばしば。温かいお湯を好む猫は多いようですが、これは彼らが狩りをしていた時代の遺伝子の記憶(=美味しい獲物は温かい)だとする説もあるようです。
※高齢の猫は多飲傾向があるようですが、慢性腎不全などの疑いがあるため、極端な変化には注意が必要です
■念入りにブラッシングする
猫に愛情を表現する一番の方法は「猫が気持ちいいことをしてあげる」こと。ブラッシングに勝る気持ちいいこと、ノロにはたぶんないでしょう……。
ノロが好きな柔らかめのブラシを使って、出来るだけ長~いストロークでブラシを動かすのがコツ。猫が爪や舌でグルーミングしづらいところ(首輪の下、耳の中、目のまわり)をやるもの効果的。ブラッシングの時間は、ノロのしもべになりきって仕えるべし。
実家では「孫の手」でぐりぐり。これはこれで堪(たま)らないみたい……
ちなみに、猫が恍惚としてノドを鳴らす「ゴロゴロ」という低周波音には、人間が幸せを感じたり、和やかな気分になったりする効能もあるとのことで、フランスでは「ゴロゴロセラピー(Ronronthérapie)」なるものもあるのだとか……。猫のブラッシングって、猫も人もハッピーになれる、双方向の愛情表現なのかもしれませんね。
■人間の生活リズムを一定にする
山に移住したのを機に、かつての不規則な生活を改めたのですが、これはノロにとっても好影響だった様子。起床と就寝のペースが出来、食事の時間にきちんとおなかが空くようになりました。毎朝の散歩で朝陽を浴び、体内時計のリセットもバッチリなのだと思います。
さらにノロには時差ボケというものがないようで、ヨーロッパの6~9時間程度の時差は即日リセットしてしまいます。到着した翌日のまだ暗いうちから恒例の「サンポ行こ!」で起こされるのですから堪りません……。日本に帰国した翌朝も同じで、歳を取ると共に時差ボケ解消に悩まされている僕としては、羨ましいような、ウザいような、ノロの元気っぷりなのであります。
*
そんなノロもこの秋で16歳。幸いどこも悪いところはないようですが、そろそろ一緒に旅に出るのもおしまいの頃合いなのかもしれません。
さあノロ、またどっか行くか?!
(本連載は今回で最終回となります。8カ月間のご愛読ありがとうございました!)
ノロのひとこと
「ヘルシンキの獣医さんでも『元気だね!』とほめられたノダ。」
illustration: Tomoyuki Okamoto
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■著者プロフィール
平松謙三(ひらまつ けんぞう)
1969年、岡山県生まれ。
2002年から現在まで、黒猫の「ノロ」と37カ国を旅し、世界の美しい風景とノロを写真に収め、書籍やカレンダーなどを通して発表している。
ふだんは八ヶ岳南麓の山小屋に暮らし、フリーで、グラフィックデザイン、WEBディレクションなどを行う。
趣味は自転車と薪作り。
※誌面画像、イラストの無断転載はご遠慮ください
この記事のライター
宝島オンライン
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