/
寒く長い冬が半年近く続く北海道だが、最近の住宅は断熱性気密性が高く、ストーブをガンガンに焚かなくても家の中はあたたかい。前編では、北海道は実は室温の高さが日本一であることを紹介した。とはいえ、冬の暖房費はけっこうかかるのではないかと東京人は思っているだろう。そこで、北海道の夏と冬の光熱費の差や、一般家庭で実際にかかっている暖房費、節約のための工夫などを北海道在住歴35年の筆者が紹介する。
東京都区部と札幌市の年間光熱費の差は約3万円。意外に少ない?
総務省の家計調査では、札幌市で1年間にかかる平均光熱費は31万2818円、東京都区部では28万83円(総務省統計局 平成27年度「家計調査」二人以上の世帯の場合)。その差は約3万3000円。月平均にすると札幌市のほうが約2750円多くなっている。東京では夏のエアコン使用で電気代が増えるが、札幌市では夏よりも冬の暖房で電気代やガス代、灯油代が増える。光熱費が多くかかる時期は違うが、年間でのトータルコストは実はそれほど違わない。
いちばん寒い時期の暖房費は月1万〜2万円台が目安?では、北海道ではどんな暖房器具を使っていて、暖房費はどれくらいかかるものなのだろう。暖房費は、家の大きさや構造、断熱気密性能、家族構成、ライフスタイル、熱源(電気、ガス、灯油など)によって大きく違ってくる。そのため、平均値を出すことは難しい。ここでは、灯油の一般的な年間使用量や、ガス電気の夏冬の使用料金のモデルケースからおおまかな暖房費の目安を見ていくことにしたい。
■主流はガス石油ストーブで83%
まず、北海道人は冬の暖房器具に何を使っているかを見てみよう。2013年11月にウェザーニューズ社が行った調査によると、北海道では83%がガスまたは石油ストーブ。かつては補助的な暖房だった電気ストーブは、オール電化住宅が増えたことで主要な暖房器具として使われるようになっているがこの調査では12%。エアコンは3%、こたつ、カーペットは2%とわずかだ。
■灯油代はいくらくらいかかるもの?
灯油を給湯や暖房に使用している一戸建ては、建物の脇などに灯油タンクを設置している。容量は490Lで、定期的に灯油販売会社等に補充に来てもらう。道内の灯油販売会社によると、一般的な一戸建てでの灯油の年間使用量の目安は1500Lと言われているそう。1L当たり65円換算で、年間の購入価格は9万7500円。そのうち約8割が暖房に使われると仮定すると、原油価格によって変動はあるが約8万円がひと冬の暖房費の目安と言えそうだ。
■夏と冬の光熱費の差は?
北海道ではストーブを使う冬の光熱費が夏に比べて高くなる。そこで、夏と冬のガス代、電気代にはどう差が出るかを見てみよう。北海道電力と北海道ガスの協力で、光熱費の少ない8月と、暖房費がピークになる2月のモデルケースを試算してもらった。Case1は給湯も暖房もすべて電気でまかなうオール電化住宅の場合、Case2は給湯と暖房はガス、ガスから発電するシステム「コレモ」を設置し使用した場合(モデルケースは試算条件が異なるため、単純に「オール電化がいいか」「ガス+電気がいいか」といった比較にはならないので注意)。
上記モデルケースで出した夏と冬の光熱費の差額のなかには、冬になると使用量が増えるキッチンや洗面台、浴室の給湯分も含まれるため、暖房のみの費用を出すことはできないが、一番多い月で数千円〜2万円台前半が目安といえそうだ。
なお、都市ガスを使用した場合の光熱費のシミュレーションが北ガスランニングシミュレーターでできる(記事最下部、参考リンクを参照)。
暖房のシステムや暮らし方、住宅によって暖房費はいろいろCase1とCase2のモデルケースを見ても分かるように、暖房にかかる費用は条件によってさまざま。暖房費が高くなるイメージがあったオール電化住宅も、灯油ストーブ使用の場合との差はそれほど大きくなさそう。また、Case2のように家庭用のガス発電システムを導入した場合など、冬の光熱費を大きく抑えることも可能になっている。
暖房にかかる費用は、暮らし方や住宅の気密性断熱性などによっても違ってくる。そこで、周囲の北海道人に実際にかかっている暖房費と節約のコツなどを聞いてみた。
●石油ストーブで月2万円前後〜2万5000円。その年によってけっこう差が出ます。暖房費節約のためには、セントラルヒーティングの温度設定を一定にしておいて、寒かったら厚着! 毛布みたいなガウンを着て耐えています(千歳市40歳女性築20年の木造一戸建て)
●12月〜3月は月に450〜550Lの灯油を使います。単価100円のころは月6万円くらいになったことも! 寒いなと思っても暖房の設定温度は変えずに、フリースの上着を着たり、カイロを貼ったりして節約しています(江別市45歳女性築20年の木造一戸建て)
●石油ファンヒーター1台で12畳のLDKと6畳の洋室をあたためて灯油代は月2000円くらい。友だちにも驚かれるほど暖房費がかかりません。たぶん、日当たりがすごくいいからだと思う(札幌市41歳女性築30年のマンション)
●石油ストーブを24時間つけていて月4万〜5万円。湿度を上げると、あたたかさを感じる気がするので結露は気にせずに加湿器を使っています(札幌市40代男性築40年超の木造一戸建て)
●暖房はプロパンガス。ワンルームであまり部屋にいないのに冬のガス代に月2万円くらいかかることも!引越したいです(札幌市28歳女性築年数不明の賃貸アパート)
●暖房は都市ガス。寒がりなので、ガス代は冬になると1万〜1万8000円くらいアップします。去年、窓を複層ガラスの二重窓にしたらあたたかく、今までよりもストーブをつけなくなりました。この冬のガス代は少し下がりそうです(札幌市52歳男性築21年のマンション)
●暖房は都市ガス。ガスストーブの暖房費は月1万円くらい。私が会社に行っている間は猫のためにオイルヒーターをオンにしておくので電気代も1万円近く増えます。冬の間は窓に断熱シートを貼ったりしていますが、節約になっているかは不明(札幌市42歳女性築15年のマンション)
●オール電化住宅なのでストーブも電気。冬になると電気代が1万円弱くらい上がるので、たぶん暖房費はそれくらい。寒いのは嫌いなので暖房費の節約は考えていません(札幌市35歳女性築1年の木造一戸建て)
●オール電化のマンションで冬の電気代は1万〜1万5000円くらいのアップ。各部屋にヒーターはありますが、使っているのは床暖房くらい。寒い日にエアコンを補助的に使ってます(札幌市30代女性築2年のマンション)
夏のエアコン代はかからないが、冬は暖房費がかかる北海道。とはいえ、住宅の高断熱高気密化が進んだことで築浅の住宅では暖房効率がアップし、省エネ型の給湯暖房システムも登場しているため、昔ほど暖房コストのかからない暮らしを実現しやすくなっているのだ。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
172
『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
ライフスタイルの人気ランキング
新着
カテゴリ
公式アカウント