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住宅ローンを組んで住宅を購入する場合、住宅ローン減税(控除)によって税制上の優遇措置を受けることができます。これは新築物件に限らず、中古物件を購入した場合でも適用を受けられる制度ですが、適用を受けるためには一定の要件を満たす必要があります。
この記事では、中古物件を購入した場合での住宅ローン減税の適用条件や手続き方法について解説します。制度の仕組みを正しく理解して、負担を減らしながら理想の住宅を手に入れましょう。
住宅ローン控除によって減税制度を活用するためには、まずは基本的な仕組みを理解しておく必要があります。そもそも住宅ローン控除とはどのような制度なのか、控除が適用される金額などについて解説します。
住宅ローン控除とは、正式名称を「住宅借入金等特別控除」といいます。個人が住宅ローンを利用して住宅を取得した場合に、年末の12月31日時点での住宅ローン残高または住宅の取得対価のいずれか少ないほうから、1%の金額が所得税から控除されて減税が受けられるという仕組みです。
所得から一定金額が控除される生命保険料控除などの所得控除とは異なり、個人が負担する所得税額から直接差し引くことができる税額控除となっています。
よって、仮に新築物件で年末の住宅ローン残高が3000万円あれば、30万円もの税金負担を減らすことができるため、その恩恵は非常に大きいといえます。
住宅ローンを組んで取得する住宅は、戸建てに限らず、マンションでも住宅ローン控除の適用を受けられます。最近では中古マンションを安く購入して自分好みにリフォームするという需要も増えており、そうしたケースでも住宅ローン控除は役立ちます。
しかしながら、自身の居住や床面積など、以下にて解説する適用条件を満たしていることが前提です。投資用物件や床面積の狭い単身マンションなどは対象とならないため注意が必要です。
住宅ローン控除の適用金額は以下の通りです。
新築の場合
(消費税がかかる場合)
中古の場合
(消費税がかからない場合)
住宅ローン年末残高
(控除限度額)
4000万円
※認定長期優良住宅は5000万円
2000万円
※認定長期優良住宅は3000万円
控除期間
10年間
※消費税増税(10%)の特別措置あり
10年間
最大控除額
400万円
※認定長期優良住宅は500万円
200万円
※認定長期優良住宅は300万円
消費税を負担しなければならない新築物件の場合は、1年あたり40万円、最大で400万円の減税が受けられます。消費税の負担がない個人間売買などの中古物件の場合は、1年あたり20万円、最大で200万円の減税になります。
減税金額が所得税から控除しきれなかった場合、つまり住宅ローンの控除額が所得税額を上回った場合には、住民税から控除を受けることが可能です。所得税から控除しきれない金額(上限13万6500円)が、翌年支払う住民税から控除されます。
令和元年の消費税増税に伴い、令和元年10月1日~令和2年12月31日までに消費税10%で取得した新築住宅については、控除期間が3年間延長され、13年間控除が受けられる時限措置がとられています。
また、新型コロナウイルス感染症の影響で期限までに入居できない場合、注文住宅の場合は令和2年9月末まで、既存住宅や増改築等の場合は令和2年11月末までに契約していれば、入居期限が令和3年12月31日へと緩和されることになりました。
https://manetasu.jp/1286987
住宅ローン控除の適用を受けるためには、以下の要件を全て満たす必要があります。
自らが居住するための住宅であること。
床面積が50平方メートル以上で、床面積の半分以上が自身の居住に使用されていること。
取得した日より6か月以内に居住を開始し、控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住していること。
控除を受ける人の年収が3000万円を超えていないこと。
ローン返済期間が10年を超えていること。
以下にてそれぞれ解説します。
住宅ローン控除の適用を受ける本人が居住していることが前提です。例えば、別荘や投資目的で賃貸住宅として購入したものや、親のために建てた住宅などは、住宅ローン減税の対象になりません。居住の実態については住民票で確認します。
減税対象の住宅の床面積が50平方メートル以上である必要があります。床面積の測定は、戸建て物件であれば壁芯面積(壁や柱の中心から測定する面積)、マンションの場合は内法面積(室内の内側の面積)となり、不動産登記簿にて確認します。
取得後6か月以内に入居し、その年の12月31日まで居住していることが必要になります。居住の実態は住民票で確認します。
住宅ローン控除を受ける本人の合計所得金額が3000万円以下でなければ、住宅ローン控除が適用されません。合計所得金額とは、給与だけでなく退職金や株の売買益や配当益、不動産や山林の譲渡で得た金額なども含みます。
返済期間が10年以上の住宅ローンを利用していなければ、住宅ローン控除は適用されません。また、住宅ローン控除は民間の金融機関や住宅金融支援機構などからの借り入れが対象です。親族からの個人的な借り入れなどは対象外となりますので注意が必要です。
住宅ローン控除の適用を受けるためには、サラリーマンやOL、アルバイトなどの給与所得者であっても確定申告を行う必要があります。これは住宅を取得し、入居を開始した翌年に、住宅ローンを組んでいる本人が行わなければなりません。
住宅ローン控除は一度申請すれば完了という制度ではなく、毎年申請を行う必要があります。給与所得者の場合、確定申告が必要なのは初回のみで、2回目以降については勤務先にローン残高証明書を提出し、年末調整で申請を行います。
確定申告の手続きに必要な書類と、それぞれの入手先は以下の通りです。スムーズに手続きが進められるよう準備しておきましょう。
住宅ローン残高証明書(借り入れを行った金融機関から入手)
源泉徴収票(勤務先から入手)
登記事項証明書(法務局から入手)
不動産売買契約書の写し(不動産会社やリフォーム業者から入手)
本人確認書類の写し(マイナンバーカードや運転免許証など)
住宅ローン控除は、新築物件だけに限らず、中古物件であっても利用できます。しかし、中古物件は新築物件の適用条件に加えて、中古物件固有の条件を追加で満たすことが必要です。中古物件は減税の適用金額も新築物件とは異なりますので、十分に確認した上で活用しましょう。
中古物件で住宅ローン控除を利用するには、新築物件の条件(本人の居住や床面積、所得やローン返済期間)を満たしていることに加え、中古物件固有の条件を満たさなければなりません。中古物件固有の条件とは、以下の2点です。
中古物件の場合、建物が建築された日から取得した日までの期間が制限期間内であることが条件になります。制限期間は、木造住宅など耐火建築物以外なら20年以下、鉄筋コンクリート造住宅など耐火建築物なら25年以下となります。
耐火建築物とは、建物の登記簿に記載された住宅家屋の主たる部分が、石造やれんが造、鉄骨造(軽量鉄骨造は除く)、鉄筋コンクリート造などで造られたものをいいます。
中古物件の場合、住宅取得日前の2年以内に、地震に対し安全上必要となる基準(耐震基準)をクリアした建物であることが条件となります。
耐震基準の適合には、役所の耐震推進課や認定検査機関による耐震基準適合書や建設住宅性能評価書を取得すること、また既存住宅販売瑕疵担保責任保険を締結することが必要です。
中古物件の減税の適用金額は、個人間売買で取得した場合は1年あたり20万円、最大で200万円となります。新築物件と異なり、個人間売買の中古物件には消費税の負担がないため、新築と比較し上限額が低く設定されています。
よって、仮に中古物件で年末のローン残高が3000万円あった場合でも、年間の控除金額はローン残高の1%の30万円ではなく、最大で20万円となりますので注意しましょう。
住宅購入というと新築をイメージする人も多いですが、近年ではリノベーション人気の高まりから、中古物件を自らの好みにリフォームするという人も増えてきました。また、親の介護などに伴う家族の事情やライフスタイルの変化に伴い、大規模なリフォームを実施するというケースも考えられます。
リフォームを目的とした住宅ローンの場合でも、住宅ローン控除を利用できます。金融機関によっては、住宅購入費用とリフォーム費用を合わせて借り入れすることができる、リフォーム一体型のローンもあります。
リフォームで住宅ローン控除を利用する場合の条件について解説します。
リフォームの目的で住宅ローンを組んだ場合、住宅ローン控除が利用できる条件は以下の通りです。
自身が所有、および居住するための増改築等であること。
床面積が50平方メートル以上、かつ増改築後の床面積の半分以上が自身の居住に使用されていること。
取得した日より6か月以内に居住を開始し、その年の末日まで居住していること。
控除を受ける人の年収が3000万円以上ではないこと。
ローン返済期間が10年を超えていること。
増改築工事の費用が100万円を超え、かつその半分以上が居住用部分の工事費用であること。
中古物件の場合、木造住宅の場合は築20年以内(マンションなど耐火建築物の場合は築25年以内)であること。
中古物件の場合、一定の耐震基準をクリアした建物であること。
住宅ローン控除の適用が受けられるリフォームは、以下に該当する工事です。
増築、改築、大規模な修繕、大規模な模様替えの工事
区分所有部分の床や階段、壁の半分以上に施す一定の修繕、または模様替え工事
家屋のうち、居室や調理室、浴室、トイレ、洗面所、玄関や廊下における、床または壁の全部に施す修繕
地震に対し一定の安全基準をクリアするために施す修繕または模様替え
一定のバリアフリー工事
一定の省エネ工事
ここで注意すべきは、リフォームが自身が所有し居住するための建物の増改築でなければなりません。そのため、同居していない親のために行う実家の増改築やバリアフリー工事などは、住宅ローン控除の対象にはなりません。
リフォームで住宅ローン控除を適用するには、多くの条件があります。ローン返済期間が10年を超えるような大規模な増改築工事などが対象であるため、条件を満たしていない場合は住宅ローン控除の対象外となります。
ただ、住宅ローン控除が対象外でも、省エネやバリアフリー化・耐震改修などを目的とする一定条件を満たしたリフォームであれば、他の減税制度の適用を受けられる可能性があります。
リフォームに関する減税制度は、以下の通りです。
自己資金
ローン
最大控除額
住宅ローン控除
×
〇
(期間10年以上)
400万円
(40万円×10年間)
省エネ改修減税(ローン型)
×
〇
(期間5年以上)
62.5万円
省エネ改修減税(投資型)
〇
〇
25万円
(太陽光発電設備設置の場合は35万円)
バリアフリー改修減税(ローン型)
×
〇
(期間5年以上)
62.5万円
バリアフリー改修減税(投資型)
〇
〇
20万円
耐震改修減税
〇
〇
25万円
ローン型リフォーム減税とは、5年以上10年未満の住宅ローンを組み、省エネ化やバリアフリー化を目的として行ったリフォーム工事の場合、ローン残高の2%(上限12万5000円)が5年間、最大で62万5000円が控除される制度です。
住宅ローン控除と異なる点は、返済期間が5年以上10年未満の場合にも適用できることです。借り入れの負担額を減らし、ローン返済期間を短くしたい場合に役立ちます。
リフォームで住宅ローンを組む場合、返済期間が10年未満であればローン型減税、10年を超える場合は住宅ローン控除を活用するのが得策です。ローン型リフォーム減税と住宅ローン控除の併用はできません。
投資型リフォーム減税とは、住宅ローンを組まずリフォーム資金を自己資金から出した場合、1年間のみ工事費の10%が控除される制度です。省エネ工事の場合は最大25万円、バリアフリー工事の場合は最大20万円となります。
住宅ローン控除と異なる点は、住宅ローンを組まない場合でも減税が適用できることです。借り入れの負担なく全額自己資金で工事を行いたい場合でも、減税の恩恵を受けられます。
省エネ工事とバリアフリー工事を同時に行った場合は、合算して控除が受けられる点もポイントです。ただし、各工事において国や自治体から助成金を受けた場合は、その金額は除いて計算します。また、投資型リフォーム減税と住宅ローン控除の併用はできません。
公的な助成制度としての住宅ローン控除は、新築物件や中古物件に関わらず、また取得費用だけでなくリフォーム費用についても利用できます。住宅ローン控除の恩恵を最大限に受けられるよう、制度の概要やそれぞれの適用条件、申請方法などを十分に理解しておきましょう。
この記事のライター
マネタス
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