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賃貸物件なのに全室テーマが違う! ゴルフ、バイク、ボルダリングなど9室の趣味部屋

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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9部屋すべてがテーマ違う!? ゴルフ、バイク、ボルダリングなど趣味人のための賃貸

賃貸住宅の多様化が進み、独自のテーマや付加価値を持つ物件が増えてきました。こうした流れのなかで評判になっているのが千葉県柏市にある「ガルガンチュア」。その特色は、全9部屋が一部屋ごとに、ゴルフ、陶芸、ボルダリング、ピアノ演奏など、異なるテーマに沿って設計され、設備があることです。ここはどのような発想でつくられ、また居住者はどのように感じているのか、取材しました。
長く住んでもらうために趣味嗜好に特化する

「ガルガンチュア」は、豊四季駅(東武アーバンパークライン)から徒歩約14分の住宅地の中にあります。大家の奥山羊太さん(有限会社奥宮園代表取締役社長)はこう語ります。

(写真撮影/内海明啓)

(写真撮影/内海明啓)

「この地域はもともとカブの名産地。奥山家もカブ農家で広い農地を持っていました。しかし義父の代からはそれを賃貸住宅に転用するようになったんです」
奥山さんは医療機器メーカーや自動車メーカーに勤務する会社員でしたが、先代の娘さんと知り合って結婚し、婿養子となりました。2017年に先代が現役を退いたのを機に、不動産賃貸業の有限会社奥宮園を引き継ぎました。

ところが当時所有していた物件の入居率は5割以下。「そのうちの1件の木造アパートに足を運んでみると、古く、利便性も悪く、私も借りたいと思えないような部屋でした。そこで、自分が借りたい、こういう人に借りてほしい、を思い描きながら、リフォームしたのが始まりです」

9室すべてコンセプトが異なる(写真提供/奥宮園)

9室すべてコンセプトが異なる(写真提供/奥宮園)

大家の奥山羊太さん(有限会社奥宮園代表取締役社長) (写真撮影/内海明啓)

大家の奥山羊太さん(有限会社奥宮園代表取締役社長)(写真撮影/内海明啓)

「ガルガンチュア」もこの発想の延長に誕生しました。奥山さんが奥宮園を引き継ぎ、空いていた農地に賃貸住宅を建てようとしたとき、意識したのは入居者に長期入居してもらうということでした。「長期で住んでいただくなら、万人向けの必要はありません。個々の入居者の好みに合えば、長く住んでいただけるはず。そこで個人的な趣味嗜好を追求できる部屋にしようと決めました」

奥山さん自身はクルマ好きなため、当初はガレージハウスにすることを考えました。しかしすべての世帯がをガレージハウスにすることには物足りなさもありました。見積もりを依頼した設計施工メーカーが、ガレージハウスに加えて防音室を提案してきたことをきっかけに、それならいっそ、全室異なる個性の部屋にしよう、と考えました。

この決断自体が奥山さんの個性とも言えるでしょう。奥山さんはクルマのほか、読書好きでもあります。陶芸の経験も楽しかったし、ボルダリングもやってみたかったそうで、趣味を持つ人の「あったら良いな」を現したいという想いがありました。「ただ設計の方々にはご苦労をかけたと思います。注文住宅が9つあるようなものですから」と奥山さん。

こうした住宅のつくり方では投資額も増えますから、財務面も慎重に検討しました。会計事務所に相談しながら事業計画を立案、投資額や利回りから家賃を算定し、近くの、流山おおたかの森駅(東武野田線、JRつくばエクスプレス)周辺の同面積の物件の家賃と比較してみると、大きな差が出ないことが分かり、着工を決断しました。
ちなみに、賃貸住宅の名「ガルガンチュア」は、奥山さんが大好きな米映画『インターステラー』に登場するブラックホールの名にちなんだもの。一度入ったら居心地が良くて出られない空間をつくりたい、奥山さんはそんな想いをこめて名付けました。

(写真撮影/内海明啓)

(写真撮影/内海明啓)

趣味や仕事に活かす派、関係なく利用する派、両方が住む

各部屋の特色は次のようになっています。
typeA(マイバッハクラスの大型車が2台格納できるガレージ付き)、typeB(自転車愛好者のため、10.9畳の土間と勝手口を設置)、typeC(吹抜けに高さ4mのボルダリングウォール付き)、typeF(大型壁面鏡、ランニングマシンなどの設置が可能な耐衝撃床を持つフィットネスルーム付き)、typeG(天井高2.8mのスクリーンを持つゴルフシミュレータールーム付き)、typeL(20.6畳のLDKに大型書棚、2階ホールにも大型書棚がある)、typeM(主にバイクのためのガレージ付き)、typeS(楽器演奏のための防音室付き)、typeW(陶芸用土間と専用庭に立水栓がある。電気釜を使えるようにするため、200V、50Aの電源を確保)。

ちなみに、typeに付けられたアルファベットはBならBicycle、LならLibraryのように、テーマの頭文字を意味しています。

ボルダリング付きのtypeC(写真提供/奥宮園)

ボルダリング付きのtypeC(写真提供/奥宮園)

大型書棚付きのtypeL(写真提供/奥宮園)

大型書棚付きのtypeL(写真提供/奥宮園)

入居者はこれらを趣味や仕事に活用している方もいれば、それと関係なく広さやデザインに惹かれている方もいます。
前者の趣味や仕事に活用しているケースではtypeLには数学の大学講師の方、typeSには音楽家の方が入居しています。
typeAに入居しているTさんは東京都内にあるバイクショップの経営者で、ガレージは趣味の外車や旧車(過去の名バイクなど)を置くのに使っています。

typeAのガレージ(写真提供/奥宮園)

typeAのガレージ(写真提供/奥宮園)

「ガレージ部、住居部のどちらも満足しています。特に2階部から階段を降りてくると大きなはめ込み窓からガレージ内部が見え、愛車やバイクを日々感じられるのがうれしいですね」と語ります。
Tさんは最初この物件を知ったとき、この地域としては家賃がやや高いかな、と感じたそうです。「しかし住んでみると、設備も含め、すべて快適で不満はありません。私の例に限らず、個人の趣味嗜好や生活様式は多様になっていますから、こうした住宅形態は今後、東京近郊中心に増えていくのではないかと思います」

プロゴルファーが自宅兼スタジオとして利用

typeGの入居者はゴルフのレッスンプロの石井昭仁さん。プロゴルファーになって4年目、トーナメントにエントリーする一方、自宅や池袋でレッスンも行います。
この物件はたまたま石井さんの父が見つけて教えてくれたそうです。

ゴルフシミュレータールーム(写真撮影/内海明啓)

ゴルフシミュレータールーム(写真撮影/内海明啓)

機種は「JoyGolf smart + (ジョイゴルフスマートプラス)」(株式会社ゴルフランド)のもの(写真撮影/内海明啓)

機種は「JoyGolf smart + (ジョイゴルフスマートプラス)」(株式会社ゴルフランド)のもの(写真撮影/内海明啓)

石井さん。ゴルフシミュレータールームを活かし、ゴルフのレッスンスタジオを運営(写真撮影/内海明啓)

石井さん。ゴルフシミュレータールームを活かし、ゴルフのレッスンスタジオを運営(写真撮影/内海明啓)

「ゴルフシミュレータールームはお客様のレッスンにも、自分のトレーニングにも使っています。シミュレーターにはいろいろな種類があり、性能の良し悪しもさまざまですが、ここに設置された機械は、実際のショットのイメージに近く、満足しています」
弱点は収納です。プロゴルファーにはかなりの量のゴルフウェアが必要なため、普通の人以上の収納が必要です。しかしtypeGは9部屋の中でも収納が少ない部屋なので、そこがややミスマッチというところ。一方、ゴルフバッグやシューズの収納には困らないほどの玄関の広さには満足しています。

広い玄関まわりはゴルフバッグを置くのも楽々(写真撮影/内海明啓)

広い玄関まわりはゴルフバッグを置くのも楽々(写真撮影/内海明啓)

家賃が高めとも言われますが、石井さんはそうは考えていません。「自分でゴルフシミュレーターを購入してスタジオを経営することを考えたら、その設備があってこの家賃というのは決して高くないと思います」

入居者の意見をすぐに反映させるオーナーの姿勢もうれしいとのこと。「駐車場が暗く、心配だと伝えたらすぐに照明を設置してくれましたし、シミュレータールームの出っ張り部分がショットのとき気になることを伝えたら、すぐに改修し、取り除いてもらえました」

石井さんはスタジオ(豊四季ゴルフスタジオ)を始めたばかりですが、今後仕事が増え、別のところに住むことになっても、この部屋を事務所として利用することも想定しています。

石井さんの部屋のリビングルーム部分。階下にゴルフシミュレータールームがある(写真撮影/内海明啓)

石井さんの部屋のリビングルーム部分。階下にゴルフシミュレータールームがある(写真撮影/内海明啓)

リビングルームに接してパティオ的なスペースがある。テーブルと椅子は石井さんが購入して置いた(写真撮影/内海明啓)

リビングルームに接してパティオ的なスペースがある。テーブルと椅子は石井さんが購入して置いた(写真撮影/内海明啓)

先ほど、部屋のテーマと直接関係のない入居をしているケースもあると述べましたが、その例としては、typeCのボルダリング付きの部屋には広いLDKに魅力を感じた経営者の方が入居していますし、建材商社勤務の鈴木敏夫さんもテーマとは関係なく、陶芸ができる部屋のtypeWに入居。陶芸のために用意された土間を鈴木さんはガーデニングの鉢を置くのに利用しています。妻との二人暮らしですが、飼い猫2匹と一緒に暮らせることも大切な条件でした。
「観葉植物や寄せ植えなど10鉢くらいを屋内に置いています。以前住んでいた賃貸ではベランダに並べていましたが、風雨の強いときにそれを避ける場がなかったので、今は助かっています」
以前の住居から引越しを決意した理由は上階の物音が大きかったからだそうです。「この部屋の環境は静かですし、使い勝手もよいですね。(陶芸のためにつくられた)土間はベランダと寝室それぞれにつながる出入口があります。猫は自由に走り回っていて、私たちより喜んでいるのではないでしょうか(笑)」

typeW 広々としたリビングルーム部分(入居前)(写真提供/奥宮園)

typeW 広々としたリビングルーム部分(入居前)(写真提供/奥宮園)

前述のTさんが指摘されたように、個人の趣味嗜好や生活様式の多様化は今後も進むでしょう。また働き方としては副業も増える時代になっています。そうしたなかで、ガルガンチュアのようなコンセプト賃貸は今後、増えていくかもしれません。

●取材協力
有限会社奥宮園
豊四季ゴルフスタジオ

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この記事のライター

SUUMO

『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。

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