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元気に美しく空中を舞う姿がSNS等で話題の「無重力猫・ミルコ」をはじめ5匹の猫と暮らす、中川ちささん。猫を迎えてから、DIY未経験だった夫が猫トンネルやキャットウォークなどを家中に巡らせ、シンプルな注文住宅が激変!「自分たちの手でここまでできるの?」と驚く「猫の巨大ジャングルジム」のような家ができるまでのストーリーと、素人でもトライできる「猫のためのDIY」について話を伺いました。
「初めて猫を飼う不安」より目の前の猫の可愛さが勝り5匹の親にTwitterやInstagramで人気の「無重力猫ミルコの家」を発信している中川ちささん。中川夫妻は15年前に、たくさん持っていた絵が映えるようにと、ダークブラウンと生成り色の壁でコーディネートしたシンプルシックな注文住宅を建てました。「いつか猫か犬を飼いたい」と思っていたことを知る友人から、「里親を募集している子猫の引き取り手がいなくて困っているから見に行こう」と誘われて会いに行きました。2人とも猫との暮らしがどういうものか分からなかったこと、壁や家を汚されるのではないかという不安はありましたが、猫のあまりの可愛さにほだされて、その場で迎え入れることを決意したのです。
猫専用通路を張り巡らせた家で、ミルコを抱いた中川ちささん(写真提供/中川ちささん)
「里親を募集していたのはオスとメスの2匹でしたが、夫が仲のいい2匹を引き離すのはかわいそうと言うので、2匹を同時に連れて帰ることにしました。飼う前は不安があったのに、実際暮らしてみたら癒やししかありませんでした」(ちささん)
2012年にうしお(オス)とピーチ(メス)と暮らし始め、1年後にベンガルのレオン(オス)を、2015年に駐車場でひろったミルコ(オス)も加わり、2017年に保護猫シェルターにいたロッケ(オス)を迎えました。ロッケは子猫のころから腎臓の持病があることが分かりましたが、獣医師に診てもらい、投薬を続けながら普通の生活ができています。「猫の飼いやすさは個体差があって何匹なら飼いやすいとは言えませんが、病気になったときのことなどを考えると、うちで飼えるギリギリは5匹です」
飛び跳ねるポーズがダイナミックで美しい白猫のミルコ(写真撮影/中川ちささん)
(写真撮影/中川ちささん)
ユニークだったのは、躍動的に飛び跳ねるミルコでした。その写真を撮影してちささんがSNSに投稿するとたちまち話題になり、出版社からのオファーで「無重力猫、ミルコ」の名前が入った写真集が2冊発売され、「バレリーナのような猫」と海外でも話題に。ちささんは、「もっと猫について正しい知識を得たい」「猫と暮らす住まいについて学びたい」と、愛玩動物飼養管理士、ペット共生住宅管理士の資格を取得。猫との暮らしに関するコラムを執筆したり、猫イベントに呼ばれて参加するなど生活が一変したのです。
釘やビスを使わず組み立てた初めてのDIY作品「猫棚」夫は週末DIYを始め、住まいは猫仕様に変わりました。リビング・ダイニング・キッチンを見ていきましょう。
猫トンネル、キャットウォーク、スケルトンキャットウォーク、本棚兼キャットタワーへ、家中を走り回れる住まいになった(写真撮影/中川ちささん)
DIYを始めたきっかけは、猫を完全な室内飼いにしたこと。「猫が3匹だったころ、庭で木登りをしたりして遊んでいるうちに塀を越えて隣の庭に入ってしまって。ご近所に迷惑をかけてはいけないと、庭に出さないことを決意しました。すると、外遊びができなくなった猫たちが淋しそうで、猫たちが家の中で楽しく遊べるようにと、夫がDIYを始めたのです」
DIY未経験の夫が初めてつくったのは、ちささんが欲しかった本棚と、猫たちが上り下りできる遊び場の2つのニーズを叶えた「猫棚」でした。収納したかった本が収まり、色合いもデザインも部屋になじんでいます。
初めてつくった猫棚(右)(写真撮影/中川ちささん)
「猫棚は、これまでつくったDIY作品の中でも最も苦労したものです。初めてで分からないこともあって、DIYは釘やビスを使うと猫が爪を傷めないかと心配で、ビスや釘を一切使わず、木と木の凸凹を組み合わせるほぞ組みで組み立てました。今考えると取り越し苦労でした」と夫。
作業は仕事がオフの週末だけ。実際の制作時間は短いものの、構想に時間がかかるそう。「『こういうものをつくりたい、欲しい』と思いついてからプランを練って作業に入るまで2、3カ月かかります。デザインが決まったら、サイズ、手順、必要な材料などを考えてメモして、完成イメージが決まれば、ホームセンターで材料を買って作業に入ります。作業時間は物にもよりますが、だいたい数日でできます」(ちささん)
細かいことが得意だという夫が描いた自分用のメモのような設計図(写真撮影/中川ちささん)
Excelでつくった猫棚の立面図。ここまでできれば完成が見えてくる(画像提供/中川ちささん)
猫棚の扉の取っ手を猫型にくり抜いたのはちささんの希望。細かいところも愛がキラリ(写真撮影/中川ちささん)
もともとあった丸窓の前のステップ台とカーテンレールの上のキャットウォーク(写真撮影/中川ちささん)
壁に穴を空けて部屋から部屋へ抜けて遊べる「猫トンネル」夫が猫棚の次につくったのは猫専用通路「猫トンネル」でした。猫を飼ったことがある人は分かると思いますが、猫は狭い所、高い所、隠れられるところが大好きです。中川家の猫トンネルは、壁に穴を空けて、壁を通り抜けて隣の部屋や1階と2階への行き来をショートカットできる猫専用通路。「あそこの壁に穴をあけよう」と夫が言い出して、リビングの小さな吹抜けから2階の寝室に抜けるトンネルをつくりました。
くぐったりお昼寝したりできるトンネルは猫たちに人気(写真撮影/中川ちささん)
食器棚の上から階段へ続く猫トンネル。くぐるミルコの後ろ姿が可愛い(写真撮影/中川ちささん)
上の写真のトンネルを抜けるとそこは階段。『マツコ会議』(日本テレビ系列)で紹介されたトンネルは穴から顔だけ出したり、覗いたりして遊べる(写真撮影/中川ちささん)
「猫トンネル」のつくり方を教えてもらいました。
猫トンネルのつくり方
(1)壁に穴を空ける前の準備として、壁の中の間柱を調べる機器「下地センサー」で柱がない場所を確認して、壁の中が空洞になっている部分に穴をあけます。電気配線が通っていそうな場所を避けるよう注意。
(2)猫の胴回りなどのサイズから、(4)の塩ビパイプのサイズ(直径)を決めます。
※塩ビパイプは決まった規格があるので、塩ビパイプに壁の穴の大きさ(5)の木枠の穴の大きさを合わせます。
(3)引き回しのこぎりで壁(入口と出口になる壁)に同じ大きさの穴をあけます。
(4)貫通した壁に塩ビパイプを通します。
※塩ビパイプは、下水道管や土木管など、排水や輸送配管として使われる建築資材です。
(5)円の周囲に木枠を当てて木工用ボンドで接着して完成。
写真のようにトンネルの木枠の色は、部屋のテイストと合わせてペイントしています。「1階のリビングから寝室へ続く道、リビングから夫の部屋に続く道、キャットウォークからキャットウォークに続く道、そして食器棚から階段に続く道と、家では4つも猫トンネルをつくってしまいましたが、失敗したら大変なので、おすすめはしません」と、ちささん。つくる際は、自己責任で正確かつ慎重に行う必要があります。マンションは自分のモノでも、外周壁や戸境壁は共用部分になるため、穴をあけられません。また、住戸内の壁も、管理規約で穴をあけることが禁止されている場合があるので確認が必要です。
猫も人も楽しめる天井の下の猫専用通路「キャットウォーク」猫トンネルをくぐる猫たちの姿を見て、もっと駆け回れる範囲を広げたいと、夫はキャットウォークに着手しました。キャットウォークは、猫たちの専用歩道のようなもので、室内飼いの猫の運動不足、ストレス解消にもうってつけ。猫の飼い主が注文住宅を建てるときに要望が多いアイテムです。中川家は、ウォーキングコースを増設するようにキャットウォークを次々とつくり、猫の動線を伸ばしていきました。
板を棚受け金具で留めただけのシンプルなキャットウォーク(写真撮影/中川ちささん)
キャットウォークを製作中の夫と作業を見守るレオン(写真撮影/中川ちささん)
猫好きが大好きな「肉球」を下から見放題のスケルトンキャットウォークは、透明な椅子に猫をのせて肉球の写真を撮っていたちささんが、肉球が歩く様子を見たいと要望して、夫が製作したもの。写真のように真っすぐ一直線に長くするのではなく、角度をつけているのは猫が全速力で走って、勢い余って落ちたりすることがないようにとスピード抑制対策です。また、アクリル板と木の枠の間にナットをはさみ少し隙間をあけたことで猫たちの抜け毛が溜らずに落ちて、植物や飾りを吊るすこともでき、一石二鳥でした。
アクリル板と木の枠の間に隙間を確保するのがポイント(写真撮影/中川ちささん)
キャットウォークの両脇に設けた木の枠は特別な部屋のよう(写真撮影/中川ちささん)
上の写真はキャットウォークの支柱を枠上にデザインしたものですが、猫たちが手やあごをのせて休むのにちょうどよいスペースになりました。
窓際の高い所から外を眺める「見晴らし台」。形を変えるとキャットウォークにもなる(写真撮影/中川ちささん)
パーツをステインで着色。パーツは正確に丁寧に切り出す(写真撮影/中川ちささん)
天井や壁に穴をあけるのはちょっと困るという方のために、簡単につくれるキャットウォークを教えてもらいました。もともとカーテンレールの上を平行棒のように歩いたり、カーテンを上るのが好きな猫も多くいます。カーテンレールの上に細長い板を置いて、U字型のサドルバンドで留めて固定すれば完成。設置する前には、カーテンレールが壁にしっかり固定されているか念のため確認しましょう。
これなら、マンションでも穴をあけずにつくれますね。ただし、カーテンレールの上のキャットウォークまで上れる、足掛かりになるものを用意してあげましょう。
カーテンレールの上のキャットウォーク(写真撮影/中川ちささん)
サドルバンドでカーテンレールと板をしっかり固定してつくったキャットウォーク(写真撮影/中川ちささん)
人と猫の喜ぶものを次々とつくり広がる「猫パラダイス」中川家は、長年使っていた食器棚の一部を活かして食器棚を新たに製作し、食器棚の上をキャットウォークにしました。普通なら、人と猫が使うものは別で、空間が狭くなりがちですが、キャットステップ兼用の本棚も同様に、猫の遊び場と人の使い勝手が調和しています。
キャットウォークから食器棚の上のキャットウォークへ、さらに猫トンネルを通って階段に出られる(写真撮影/中川ちささん)
キャットステップ兼用の本棚には猫トンネルや隠れ場所もある(写真撮影/中川ちささん)
見晴らし台やキャットウォークへアクセスするのに便利な螺旋階段(写真撮影/中川ちささん)
中川家のDIYがステキなのは、夫、妻、猫たちの三位一体の作品だから。妻が欲しいものと猫たちが喜ぶことを頭に描きながら、時間と手間をかけて形にする夫。ときには製作を見守り、完成したらうれしそうに使う猫たち。最近は色を塗ったりするなどの作業を手伝うこともある妻は、猫たちが作品を使う様子を撮影してSNSで発信。「真似したい」「つくり方を教えて」という問い合わせが多く、誰かの役に立つならと、目で見て分かりやすいYouTubeでつくり方を発信し始めました。
夫が仕事から帰ってくると、最短ルートのキャットウォークを駆使して、猫たちが玄関まで走って出迎えるそう。「DIYの面白さは、自分のセンス、知識、技術を自由に発揮できること。難しいのは、見栄えと機能性をどう両立させるかですが、だからこそやりがいを感じます。猫たちはキャットウォークで昼寝をしているか、走り回っているか、存分に活用してくれるのもうれしく、つくり甲斐があります」(夫)
夫が庭で作業する様子を並んで見守っている猫たち(写真撮影/中川ちささん)
「何をつくっているのかにゃ?ボクたちのもの?」と、興味津々な猫たちに見守られて作業するのは楽しいもの。けれども、仮止めした製作途中の作品に猫がのらないよう注意が必要です。
15年前に注文住宅を建てた中川さんは、猫5匹の大家族になり生活スタイルも変化、時とともに家具やインテリアの好みも変わったそうです。「注文住宅を建てるときにもし猫たちがいたら、全然違う家を建てていたと思います。例えば、猫のトイレと人のトイレを近くに置きたかったですが、後から変えられる部分と変えられない部分があります。DIYにトライして、失敗したら自己責任でやり直しての繰り返しで、家とともに自分たちも成長してきました。これからも少しずつDIYのアイテムを増やしたいです」と、ちささん。
家の購入、注文住宅は完成・引き渡しがゴールではありません。変化するライフスタイルや好みに合わせて自らが手を加え工夫して、家族が喜ぶ家にカスタマイズしていく。そして、家族の豊かなおうち時間を過ごし思い出を育む、そこからが「世界にたったひとつのわが家づくり」はずっと続いていくのです。
●取材協力
無重力猫ミルコのお家
Instaglam
この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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