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大統領の訪日で話題になったフィリピンだが、現在セブ島に移住する日本人が増えている。そのきっかけは英会話の短期留学として人気を集めていることにあるようだ。今回、私も短期留学を体験したので、英語の勉強の合間に取材をし、セブ島に移住した人たちに話を聞いた。移住後の暮らし、セブ島の住宅事情や物価事情について3回に分けてレポートする。1回目は現地で不動産会社を経営する松田和人さんに語ってもらったセブの魅力を紹介しよう。
セブの魅力は温暖な気候とフィリピンの人たちのホスピタリティ
「セブ島に留学してきます」と話すと、青い海と白い砂浜を併せ持つアジアを代表するリゾート地をイメージするが、意外にフィリピンにあることを知らない人もいた。もともとフィリピンという国は7000を超える島の集合体で、セブ島はその一つの島である。飛行場のある隣のマクタン島とセブ島を中心にセブ州が存在している。広告でよく見る「青い海と白い砂のビーチリゾート」はマクタン島の東海岸にあるホテルのプライベートビーチの場合が多い。
セブ島の東海岸中央部にある州都セブ市を中心としたメトロ・セブ(セブ市、マンダウエ市、ラプラプ市、タリサイ市等)と呼ばれるエリアは、メトロ・マニラに次ぐ大都市圏を形成している。セブ市では高層ビルやモールも次々に建設されている。最近では観光業だけではなく、コールセンター業務、ソフトウェア制作などIT産業のアウトソーシング先としても注目されているようだ。
「セブの魅力は、なんと言っても温暖な気候ですね。四季ではなく雨季と乾季の2つに分かれています。だいたい6~12月が雨季、1~5月が乾季です。年平均気温は26~27℃といったところでしょうか」と教えてくれたのは株式会社アイランドウェイフィリピンを経営する松田和人さんだ。
「もともとは地元の福岡で不動産・介護事業をしていましたが、そこで働いてくれるフィリピンの人たちのホスピタリティの高さを知り、セブに興味をもちました。3年ほど前から足を運び、2013年の12月にセブで法人を設立、現在、さまざまなカタチでセブの不動産事業に携わっています」とのことだ。
50歳以上なら2万ドルの預け入れ額でリタイアメントビザを取得松田さんは財団法人ロングステイ財団にも参加、「日本からセブに移住したい、長期間滞在したい」という人のサポートをしている。取材当日も日本からやってきた男性2人連れのアテンドをするということで、建築中のコンドミニアムに一緒に連れて行ってもらった。
「マクタン島に建設中のコンドミニアムで、スタジオタイプは約1000万円~、1ベッドルームタイプは約2500万円~といったところです」と松田さん。マクタン島の海辺はリゾートホテルが立ち並び、プライベートビーチになっていることが多いので、海に直接面した立地に立つコンドミニアムは価値が高いのだそうだ。ほとんどの住戸に販売済みのマークが付き、人気の高さがうかがわれた。
日本から来た方たちは、リタイア後に夫婦2人でのんびりできるリゾート地を探しているそうだ。「ハワイも検討しましたが価格が高い。セブの5倍くらいはしますね」と話してくれた。「セブは飛行機で日本から4時間半程度と近いのもいいですね」と評価は高い。このコンドミニアムにはプライベートビーチも設置され、エントランス近くには有名なレストランが入るそうだ。
「フィリピンではほかの国と違い、永住権のあるリタイアメントビザが比較的簡単に取れるのもメリットです。
50歳以上なら、なんと2万USドルを政府指定銀行に預ければ取得できます。その預け金でマンション購入などの投資をすることも可能。また就労もできます」とのこと。近年、人気を集めているマレーシアも長期滞在ビザ(MM2Hビザ)を取れば10年間連続して滞在できるが、35万RM(マレーシアリンギット・約1050万円 2016年11月時点)の資産証明や月額1万RM (手取りで約30万円)の収入証明が必要でハードルが高い。
セブ島とマクタン島には2つの大きな橋が架けられ、どちらも渋滞するほど利用されている。「フィリピンと日本の関係は深く、2つの橋はどちらも日本のODA(※)で建設されたものです。South Road Properties (SRP) は、セブ島の東海岸エリアで進められている広さ300haの再開発ですが、これもフィリピン経済区庁 (PEZA) の下、日本の国際協力銀行 (JBIC) の資金により進められています」とのことだ。
※政府開発援助(Official Development Assistance, ODA)とは、発展途上国の経済発展や福祉の向上のために先進工業国の政府及び政府機関が発展途上国に対して行う援助や出資のことである。
「まだフィリピンは発展途上国です。インフラも日本のように整っていません。確かに工事の進捗状況も日本のようにきっちりしていませんし、建築物の完成が遅れるのもよくあることです。ですが親日の人が多く、とてもフレンドリーで暮らしやすいと思います」と松田さん。確かに私が英会話学校に滞在している間、先生はもちろん、掃除や料理を担当するスタッフまで、いつも明るく挨拶をしてくれた。
フィリピンは英語が公用語として子どものときから使われているので、ほとんどの人が英語を話せるというのも、ほかのアジアの国とは大きく違う点だ。「多少現地なまりはありますが、タクシーの運転手でも販売員でも英語が通じます」。簡単な英語ができれば生活できるというのもメリットだ。
「日本人の平均年齢が46歳なのに比べてフィリピンは24歳と若い国です。これからどんどん人口が増えていくはずです。人口が減少していく日本にとって、お互いに補い合えるいい関係を築いていけるとベストだと思っています」と松田さん。
フィリピンのなかで「セブ」がなぜ人気なのかセブは世界有数の美しいビーチリゾートにホテルやコンドミニアムをはじめとしたリゾート施設があり、スキューバダイビングなどのマリンスポーツが1年中楽しめる。加えてゴルフ場や本格的なスパ、エステサロン、カジノやレストラン、ショッピングモールも充実している。
「花粉症がないので、日本で花粉の時期になるとセブにロングステイされる方もいます。寒暖の差も大きくないのでヒートショックの危険も少ないです。また私立総合病院の主治医はアメリカ留学経験者が多く、医療レベルも高いといわれています。高齢の方には適した環境ではないでしょぅか」と松田さん。気になる治安もマニラやミンダナオに比べて、比較的安全だそうだ。「もちろん日本のように、夜1人で女性が歩くというようなことは止めておいたほうがいいですが、それは外国なら、どこでもそうだと思いますよ」
何より、松田さん自身がセブの将来に手ごたえを感じているようだ。「年間3万人以上の人が日本から英会話習得のためにセブに来ています。今までは韓国経営の学校が多かったですが、日本人オーナーの学校も50ほどになりました。セブの環境が気に入って移住を考える人が増えていますね」。リゾート地としての魅力だけではなく、人口増加が見込まれ、移住受け入れの姿勢もあるので、ビジネスとしての視点からも人気を集めているようだ。
次回は、40代でセブへの移住を決め、セブで留学エージェントを起業した人に、移住後の話を聞いた。セブでの生活や仕事について紹介する。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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