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家電などのモノがネットにつながることでその機能を増す“IoT”。近年さまざまな分野でクローズアップされているが、12月下旬から地域ぐるみで高齢者の健康維持に活用する自治体がある。大阪府南部の泉北ニュータウンで、小型センサーで日ごろの運動量を把握し、専門家が健康指導する試みが始動する。ソフト開発のヴァイタル・インフォメーション社と、堺市で高齢者向けに健康支援を手掛ける一般社団法人ひと・まちプロジェクト、大阪経済大学がタッグを組む。
IoTを使った高齢者の健康管理はすでに個人単位で行われている一方で、地域ぐるみでの取り組みは珍しい。泉北ニュータウンは2017年「まちびらき50周年」になるが、高齢化が進み、特に駅から遠いエリアでは高齢化率が40%以上になっている。全国的に高齢化が進む大規模団地の、先進的な取り組みといえる。
利用する高齢者にはヴァイタル社が開発したネットにつながる小型の身体運動センサーが貸し出される。大きさはマッチ箱程度で重さは17グラム。センサーをポケットに入れて生活し、家事や散歩での運動量を測り、どの日の何時にどれほど負荷がかかる運動をしていたかを運動強度で表す「メッツ」という値で示す。スマートフォン(スマホ)のほか、地域で住民が月1回開く体操教室の会場で記録をチェックできる。センサーのレンタルと体操教室への参加、体力測定、運動指導を各サービス毎に月額500円で提供する。今年度は補助金事業で専門家派遣費用や機器代など補填している。まずは泉北ニュータウン南部から運営を始めて、運用方法などを関係者と検証する。
ヴァイタル社の担当者によれば同社のIoT活動量計では、座位時間と中強度の運動強度時間を測定しできるとのこと。「家の中で立って行う家事など、通常の万歩計では正確に運動量を測れないような行動も計測することができます。また、最近の論文では座位時間が『たばこを吸っているのど同じ位、不健康である』といわれているので、この時間も計測します」とのこと。測定したデータはスマホやPCのブラウザで“見える化”する。これなら出歩くことが少ない高齢者でも、家のなかでの運動量を把握し、日々をアクティブに過ごすための指針にできそうだ。
併せて近隣の自治会館や、コミュニティカフェで開催される健康体操教室に通ったり、専門家(理学療法士、管理栄養士)から個人データに基づいた運動面、食事面のアドバイスを受けたりすることで、老人が要介護状態になりにくい地域づくりを目指す。
今後は大手通信会社と連携し、自宅にいてもセンサーの情報を発信するシステムを実現する構想もある。離れて暮らす家族のスマホでも運動の記録をリアルタイムで参照でき、一人暮らしの高齢者の見守りにもつなげる。
少子高齢化によって医療費の財政圧迫が懸念されるなか、IoTを活用し地域ぐるみで高齢者の健康維持を目指す泉北ニュータウンの取り組みには多くのヒントがありそうだ。
住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナルこの記事のライター
SUUMO
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