/
“日本一暮らしやすい街(※)”、島根県松江市。NPO法人ふるさと回帰支援センターの「移住希望地域ランキング」では、2014年に8位だったのが2015年では3位と人気が高まってきている。実際県外からの移住者も多いと聞くのだけれど、そんななかに、東京から移住して1年でマイホームを建てたご家族がいるとの情報。しかも、200万円以上もトクしちゃったのだと言うので、コトの真相を確かめに行ってきた。(※平成27年3月経済産業省調べ)
200万円以上トクしたという話は、ホントだった!
早速、そのトクしちゃった家族、青木さん宅にお邪魔するなり聞いてみた。「なんで200万円以上もトクしたんですか?」すると青木さんは穏やかに笑いながら教えてくれた。「そのうちの150万円は松江市の”子育て世帯定住促進事業補助金”を利用したんです」なんと、いきなり150万円のおトク話!
でも、それだけでは200万円には届かない。「ほかにはどういう方法で?」矢継ぎ早の私の質問にも青木さんは丁寧に答えてくれる。「県産材と地元の特産品の石州瓦を使ったので39万7600円の補助が出ました。あとはすまい給付金制度で18万円の補助があります。年齢的な条件が満たされれば、もう少しもらえたんですけどね。なので正確には207万7600円のキャシュバックということになりますね」
なるほどそういうことだったのか。噂は本当だったようだ。調べてみると、松江市の”子育て世帯定住促進事業補助金”は市内移住の場合は、条件を満たしても100万円。市外からの移住者は優遇されているようだ。
地元民としては衝撃の差額50万円だけれど、移住&マイホームを考えている人にとっては朗報だ。なにより青木さんのような移住家族にとって、初期費用で約200万円が戻ってくるのは、新しい生活をスタートさせる上で大きな安心材料であるのは間違いない。
つい、お金の話に先走ってしまったけれど、そもそも島根には縁もゆかりも無かったという青木さんが、なぜ島根に移住することになったのか?「もともと地方で暮らしたいという思いはあったんですよね、僕も妻も。特にココ!という場所があったわけじゃないんですが……」と青木さん。
地方で暮らしてみたいけれど、心配事は仕事のこと。青木さんの専門とするIT関係の仕事に就けることが移住先の条件だった。2015年11月ごろから、ネットなどで情報を集める青木さんのアンテナに引っかかったのが松江市だったのだそう。「松江市は、Rubyという国産プログラミング言語での開発のメッカなんですよ。行政も企業誘致に力を入れていて県内外資本のIT企業の数が多いんです」
その後、都内で開催されていた島根県のフェアをのぞきに行った際、休憩所で今の会社の社長に声をかけられた青木さん。その偶然の出会いが青木さんと島根の距離をぐっと近いものにしてくれた。後日、正式な面接で社長が提示してくれた条件は、収入面でいくと東京でのそれよりも5%ほど低い額だったが、「もっと低いと思ってた」という青木さんにとっては、予想以上の好条件だった。
収入の不安がクリアされた2人は、多摩の3DK賃貸マンションを引き払い、2015年の夏には飼っていた猫と一緒に松江へ転居。当初はようやく見つけたペット可の賃貸住宅(家賃5万5000円)に住んでいたが、築30年の住まいで迎える山陰の冬は2人には想定外の厳しさだった。とはいえ、賃貸では猫と一緒に暮らせる物件を新たに見つけることは難しかった。「みんなはどんな家に住んでいるんだろう?」そんな興味が湧き、結果、それが一戸建て購入活動への布石となったという。
情報を集めているうちに、前述の”子育て世帯定住促進事業補助金”の存在を知り、これなら月々8万円で考えていた予算内で家が持てそうだと本格的にマイホームを検討開始。結局、移住して翌年の夏、現在の住まいを手に入れることになった。電光石火のごとき展開に驚くばかりなのだが、青木さんたちはその決断を後悔していないと言う。それはなぜなのか?
「ほどよい大きさの街だからこそ、人間らしく生きられる気がします」知り合いもいない、妻にいたっては、移住するまで足を踏み入れたこともなかった松江に暮らしはじめて、わずか1年で家を建てた青木さんご家族。最大の理由は、前述の市の補助制度が住民登録後1年以内という条件があったということもあるけれど、それは決して勢いなどではなく、将来の暮らしのイメージも見据えた上での決断だったようだ。
「都内で働いていたころと収入的には大きな差がないこともありますし、IT企業が多く、自分の今後のキャリアを考える上でも選択肢が豊富なんですよ」と青木さんは言う。現在の彼の主な仕事は業務用のスマホアプリの開発。開発環境やクライアントに関して言えば、これもまた都会と変わらない。行政が業界全体を応援しているので、業界の交流会や勉強会なども頻繁に開かれ、同業者同士のつながりも都市部以上に濃く、エンジニアとして心強いネットワークが広がっている。
妻は別の視点で松江での暮らしを評価する。例えば、子育て環境。実は島根県は、0~5歳人口10万人あたりの保育所数が全国1位になったことがある(平成25年総務省統計)。また、未就学児の育児をしている女性の就業率も全国1位だ(平成24年総務省調査)。つまり、働きたいママたちのサポートが手厚い街でもあるのだ。
これは青木さんのような若い子育て世帯にとってはかなり心強いはず。「あ。あと、やっぱりお米とかが安くておいしいんですよ!」と。そうそう! 島根にはおいしいものがたくさんありますから! 「それと、おいしい日本酒がたくさんあるのがいいですね」と付け加えるのを忘れない、日本酒党のお二人。そうですね。島根は銘酒もたくさんありますから! (筆者は島根在住!)
子育て移住者への優遇制度を整えている自治体は多いですが、なによりITエンジアに魅力的な条件が整っている島根県松江市への移住は、青木さんご一家にとって大正解だったようです。200万円オーバーのキャッシュバックはもちろんだけれど、取材の最後に「おいしいものを食べて飲んで、ゆったり暮らす。そういうのが”生きる”ってことなのかな、って最近感じますね」と語ってくれた青木さんご夫妻を見ていると、その発見こそ、2人にとってキャッシュバック以上の収穫なのかもしれないなと思うのでありました。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
172
『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
グルメ・おでかけの人気ランキング
新着
カテゴリ
公式アカウント