/

「若いころと比べると、性欲があきらかに落ちたのを感じます」--46歳のイヅミさんの話はそんなふうにはじまった。
性欲は、ホルモンの影響を受けるものであるため、一般的に40代から50代にかけて徐々に落ちていくといわれる。35~70歳を対象としたアンケート調査でも、女性の46%が「10年前と比較して性欲が弱まった・なくなった」と回答している。*1
人の性欲は、ホルモンだけで決まるわけではなく、心身の状態やパートナーの有無、仕事の忙しさ、住環境など、さまざまな要因から影響される総合的なもの。20代で欲求がまったくない人もいれば、50代になって新たなパートナーを出会い、「この人とセックスしたい!」と強く感じる人もいる。年齢だけで測れるものではない。
けれどイヅミさんは自身に訪れた変化を、年齢によるところが大きいと見ている。
「20~30代後半まで私は気ままに生きてきて、決まった相手は作らず、常に性的パートナーが4~5人いる状態。性欲を感じたら、そのなかの誰かと会えばいいだけなので、持て余すことはほとんどない生活でした。39歳で結婚したとき、これからはひとりの人としかしちゃいけないんだと思うと不安になりました。それが、あっという間にセックスレスに突入するんだから、まさかの展開ですよ」
夫とは、きょうだいのように仲がいいのだという。子どもはいない。
「いまも私がひとり暮らしのときに使っていたセミダブルベッドで寝ているので、ふたりではちょっと手狭。いつもぴったりくっついて寝ています。夫にふれると安心感があるし、愛情も感じます。なのに彼相手には性欲がピクリとも動かない。ほかの人とセックスしたくてたまらないんですよ。ある時期は、仕事をしていても何をしていても考えるのはそればかり。自分で解消しようと試みても、『私が欲しいのは男性の肉体なんだ!』って思っちゃうんですよね」
結婚して1年経ったころ、結婚前に関係を経ったはずの男性、タクヤさんに連絡を取った。彼はもともと既婚者だったが、ヨリはあっさり戻った。ただ、イヅミさんにとっては独身時代と違い、「絶対にバレてはいけない」という緊張感が常にともなう。それはそれでスリルがあった。
「私は月に1回は会いたいと思っているのですが、彼は忙しいから2、3カ月まったく会えないこともありました。それがコロナ禍になってから彼の出張がなくなって、月1ペースになっています。そうすると、もっとしたくなるんですよね。でも頻度を上げると、リスクも上がる……。基本的に、ラブホテルの部屋で落ち合って、そのまま部屋で解散。向こうも既婚者で、どこに誰の目があるかわからないから。夫とはもうセックスできる気配がないし、そうなると私にとって彼が”最後の男”になるかもしれない。長くつづけたいからこそ、リスクはできるだけ排除したいんです」
健康寿命という言葉があるように、セックスできる寿命もあるのではないか。40代に入ってからイヅミさんはときおり、「自分のセックス寿命はいつ尽きるのか」と考えるようになった。それは常に「年をとった私とセックスしたいと思う男性がいるのだろうか」という不安とセットになっている。
▶まさか私が…。フェイドアウトしていく性欲に焦りが
結婚して7年、タクヤさんと再燃して6年。イヅミさんは46歳になった。
「性欲があからさまに減退したのが、自分でもわかるんです。いままで自分の身体の一部のように存在していて、ときおり『早くなだめてよ!』ってせっつかれることもあって、ちょっと厄介だけど馴染みのある姉妹のような存在。それが消えていくことに、さみしさと同時に焦りを覚えます。完全に火が消える前に愉しんでおきたい。彼と抱き合いたい。ここまでくると純粋な性欲とは違ったものなのかもしれませんが」
かつては「中高年になったらセックスはしないもの」という空気が、たしかにあった。筆者はハウツーセックス本の制作などにも関わってきたが、セックスとは「若い(主に生殖年齢にある)」「男女」がするもの、というのが大前提。けれど現在はそうした企画を立てるとき、年齢やセクシャリティで「こういう人はセックスしないもの」と決めつけることなく、属性を限定せずに制作するケースが増えた。
加齢によって、性欲だけでなく肉体にも変化が訪れる。若いときと同じセックスは、いずれできなくなる。だがその年齢なりのセックスがあるのではないか。肉体的な欲求とはまた別の、ふれ合いたいとかお互いの身体を慈しみ合いたいとか、そうした欲求から肌を重ねる関係にシフトすればいいーー筆者からイヅミさんにそうお話したところ、
「そうできたら素敵だとは思うんですが、最近、自分の容姿にも自信がなくなってきたんですよ」
という答えが返ってきた。
次ページ▶▶「裸になった自分のことを想像すると、とたんに自信がなくなる」理由って?
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
1153
女の欲望は おいしく。賢く。美しく。OTONA SALONE(オトナサローネ)は、アラフォー以上の自立した女性を応援するメディアです。精神的にも、そして経済的にも自立した、大人の女のホンネとリアルが満載。力強く人生を愉しむため、わがままな欲望にささる情報をお届けします。[提供:主婦の友社]
ライフスタイルの人気ランキング
新着
公式アカウント