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「数学の力」というと早くても小学生以降…というイメージかもしれません。しかし、もっと幼い2歳からの言葉のかけ方次第で子ども数学力は伸びるのです。書籍『子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ』(植野義明 著)より、幼児期の今しかできない、家庭での言葉がけのヒントをご紹介!第七回は「駐輪の場所」です。
※写真はイメージです
単純に、「考えなさい」と言うだけでは、子どもの思考力は育ちません。子どもは、そもそも何を考えたらいいのか、わからないからです。
子どもに、「いっしょに考えてみよう」ともちかける時間をもつことはとても大切です。
小さい子には、親がいっしょに考えながら、考える楽しさを共有します。上手に考えられたときはいっしょに喜び、考えが足りないときは、もう少し考えようとはげまします。
こうして、考えることの楽しさが子どもにも実感として少しずつ感じられるようになると、子どもは自分ひとりでやってみたいと思ったり、「自分でやる」と言ったりするようになります。そうした段階では、自分で考えることをはげまし、応援する声がけがとても大事です。また、失敗したときの言葉がけについても考えておきたいですね。
1つの答えだけで満足せずに、観点を変えて別の答えを探すことも重要です。
数学は答えが1つしかないから好きだという人もいますが、これは数学に対するかたよった考え方です。むしろ、幼児期からいろいろな考え方ができる柔軟性を育てておくほうが、将来に向かって伸びていく「数学力」に結びつきます。考えるという行為は、あらゆる活動の基本なので、対象も方法も多岐にわたるのが当然です。
また、どうしてもわからない問題に出会ったときも、すぐに諦めるのではなく、そのときの知識や能力に応じて、何とか工夫し、できる範囲で考えようとする態度を育てましょう。探求心にあふれた子どもは、きっと成長して社会に出てからも、まわりの人たちから好感をもたれるでしょう。
繰り返し述べているように、数学では、正解は1つではありません。
正解と呼ばれる1つの解答よりも、間違っているかもしれないたくさんの解答のほうが価値がある場合もあるのです。しっかりとした根拠をもって考えたならば、答えは多少変でもかまわないのです。
家庭では子どもといっしょにさまざまな実験をしてください。子どもに予想させることは、本書を通して重要なテーマの1つです。どんなに小さな実験でも、「どうなると思う?」と子どもに言葉をかけ、返ってくる声に耳を傾けましょう。
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子どもに「自分の頭で考えてもらう」ためには、どのように働きかけるのがいいのでしょうか。
自分の頭で考えられるように子どもを育てるポイントは、2つあります。
1つは、子ども自身が考えなければ一歩も前に進めない状況を作り出すことです。もう1つは、自分の頭で考えてほしいという気持ちを、言葉で直接伝えることです。
子ども自身が考えなければ一歩も前に進めない状況は、日常生活のあらゆる場面で見つかります。
以前私は、あるカフェの店先で、小さな女の子がお母さんに「自転車をどこに置けばいいの?」と聞いている場面に出会いました。この質問に、自分ならどう答えるだろうかと考えながら様子を見ていると、そのお母さんは「どこに置けばいいか、自分で考えてごらん」と答えたのです。
イラスト:Mariko Minowa「子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ」より
その後も、いろいろな会話がありました。
まず、前提として、カフェの入り口は地面が傾斜しているので、なるべく平らな所にとめないと低いほうにずり下がってしまうこと。また、通路は狭いので、通路の真ん中にとめると出入りする人のじゃまになってしまうことなどを、そのお母さんは1つひとつ丁寧に説明しました。
でも、自転車をどこにとめるかは子どもに自分で決めさせたのです。
時間に余裕のない現代の生活の中では、子どもに考える機会を与えることは、もどかしく感じることもあるでしょう。あるいは、そこに自転車をとめたことのあるお兄さん、お姉さんに聞いたほうが早かったかもしれません。
なぜ、このお母さんは、「ここにとめなさい」という一言で終わる会話に、何分も時間をかけたのでしょうか。
子どもにとって、自分の頭を使って考え、とめる場所を決めた経験は、貴重な学びの機会になったに違いありません。子どもとのこのような会話は、時間という資源の投資先として、とても効果が大きいのです。
「どうしたらいいと思う?」という言葉がけで子どもに判断をゆだねたり、「いっしょに考えようね」という言葉がけで、なるべく自然に子どもを考えるモードに導いたり、時には「自分で考えてみようね」という親の言葉がけが有効となる場面もあるでしょう。
これらの言葉は、どんなに困難な課題に出会ったときも、自分で立ち向かっていく力、レジリエンス(ねばり強さ)となって、その子の人生を支えていくことでしょう。
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\言葉がけのコツ/
時間はかかるものと考える
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\「考える力・見つける力」の芽を育てよう/
いつでもできる簡単な言葉がけで子どもの数学力(算数力)は大きく伸びます。
■子どもの数学的な力を育む「言葉のかけ方」をお教えします子育てでは、子どもへの声がけや話しかけが、とても大切です。子どもを伸ばす、子どもが変わるなど、様々な話しかけ方の書籍があります。本書は、子どもの数学的な力が自然と育つ、言葉のかけ方、話しかけ方を紹介する初めての本です。
■考える力の「芽」を育てよう小さな子どもの能力は無限大。幼少時にちょっとした声がけをしながら一緒に遊んだり、ゲームをしたり、実験をしたりすることで、考える力の「芽」はどんどん育ちます。「こっちには何個入っているかな?」「点をつないだら、何に見える?」「これと同じ形はできるかな?」「どうしたらいいと思う?」……などなど、少しのきっかけを作ってあげるだけで、子どもの頭はフル回転しはじめます。
■2~6歳のいまだから渡せる一生モノのギフト著者の植野氏は、数学を教えて35年の経験から、幼少時の習慣が数学(算数)の力を育てることを実感しています。日々、いつでもできる話しかけで、お子さんに生涯使える大きなギフトを贈ってあげてください。
東京大学非常勤講師、くにたち数学クラブ代表、日本数学会会員、数学教育学会代議員。東京大学理学部数学科卒、東京大学大学院で数学を専攻、理学博士。1986年より東京工芸大学講師、准教授。2021年4月、定年退任と同時に国立市で3歳から100歳までの人たちが数学の美しさに触れ、数学で遊び、数学が好きになれる場所として「くにたち数学クラブ」を設立、代表。著書に『考えたくなる数学』(総合法令出版)がある。
この記事のライター
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