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星座早見表を片手に、夜空を見上げたことはありませんか?このところでは、流星群の到来などで、天体観測が趣味という人も増えています。
私たちが普段目にする星座や星に「和名」があることをご存じでしたか?日本で古くから呼ばれてきた由来や、美しい星の名前に触れてみましょう。
ここでは、星の和名を《春・夏》《秋・冬》に分けてお伝えします。和名を知ることでマイナーな星でもかっこいい名前があったのかと、素敵な発見があるかもしれませんね。おしゃれな名付けの由来も多いので、ぜひチェックしてみましょう。
春や夏に見える星座には、神話もあれば日本の「七夕伝説」での素敵な言い伝えもあります。学校で習う星の名前は、ベガやアルタイルといった海外でも通用する名称が主ですが、それらにも日本ではおしゃれで美しい和名がつけられていました。
ここでは、春と夏の星座を中心にその由来などを紹介します。きれいな和名を知ったら、夜の星空を眺めてみませんか。また、何百年も前からの光を体に受けながら、神話による言い伝えにも思いをはせてみましょう。
北斗七星を見つける目安となる北極星(ポラリス)は、北の天極に近いところにある輝く星です。北の空を見ると、通年同じ位置にあるように見えるので、古い時代には「北を示す星」として、珍重されていました。北極星自体は季節を問わず見える星ですが、春の星座となるこぐま座を構成する星の一つなので、春夏の星に分類しています。
この星は、「こころ星」という素敵な和名がつけられています。「北辰」とおしゃれに呼ぶこともあるようです。夜空を見上げると、一番見つけやすい美しい星座なので、おしゃれな和名を確認しながら探してみるとよいでしょう。
うしかい座を構成する星で最も明るい星を「アークトゥルス」と呼びます。肉眼では美しい赤い色に見える大きな星です。この星は春の麦を収穫するころに見えるため「麦星」という和名もありますが、梅雨のころに明るく見えることから、「五月雨星」というおしゃれな和名が主流です。
星を見て季節を知るということができるのも、天体のメリットといえるでしょう。北斗七星とスピカを結ぶ春の大曲線を構成する星でもあるので、北斗七星を頼りに赤い星を探してくださいね。
スピカはおとめ座を構成する最も明るい星です。もともと、スピカの和名はなかったといわれています。かつて大分県で呼ばれてきた「しんじぼし」をスピカと断定し、その語源が真珠だったと推測したことで真珠星といわれるようになったとされています。真珠星という和名が周知されたのは、太平洋戦争の末期に海軍航空隊からの依頼で常用恒星に和名をつけることになったから。
おしゃれなエピソードが多い中で、悲しい由来があることも覚えておくべきでしょう。春の大曲線を構成する、五月雨星の赤い星と対になると考えられ、夫婦星といわれることもあります。
アルコルは、おおぐま座を構成する星の一つです。4等星なので明るい星ではありませんが、この星には「寿命星」や「添え星」という和名がついていますよ。古い時代、この星が見えなくなったら、年内に寿命を迎えるだろうという言い伝えがあったそうです。しかし、その言い伝えは老眼で目が見えにくくなるため、迷信と言われています。
地方では、老いを象徴する「四十暮れ」という不名誉な和名もあったようです。江戸時代の辞書のような役割を果たした「節用集」には、「添え星」と記載されていました。中国語で星座を意味する「輔星」を訳したものとみられています。
夏の大三角の一つを構成するベガは、こと座を構成する最も明るい星です。ベガには、七夕伝説のおりひめ星という可愛い和名がついています。地域によっては織女星というところもあるようですね。
今では廃れつつある星の和名ですが、悲恋物語として語り継がれる七夕伝説のおかげか、今でも呼ばれることが多いおしゃれな和名のひとつです。夏の大三角も、小学校で学ぶ星座として有名です。七夕の時期(7月上旬)の夜に東の空を眺めてみましょう。
アルタイルは、わし座を構成する明るい星の一つです。アルタイルは、彦星や牽牛星といわれ、織姫星であるベガと夫婦星として知られています。今となっては彦星が主流ですが、平安時代の辞書(和名類聚抄)では、犬を連れているように見えることから「以奴加比保之(いぬかいぼし)」という名がつけられていました。
ちなみに、夏の大三角を構成するデネブは、十文字星と呼ばれますが、七夕の後に光が目立つようになることから「七夕の後星」ともいわれます。このような名付けもおしゃれですね。
中央に3つ並んだ星と、それを囲むように4つ角に存在する星を総称してオリオン座と呼びます。一般的には冬の星座ですが、夏の明け方に昇りくる美しいさまが人気です。日本では和楽器の鼓の形に重ね「鼓星」というおしゃれな和名がついていました。
ちなみにオリオン座の中心にある3つ並んだ星は「小三つ星(こみつぼし)」という和名があります。今ではオリオンという語感の美しい響きが支持されるようになりましたが、日本でも星の形を何かに見立てて名付けをしているということがわかる素敵な例ですね。
冬の空は空気が澄んでいるので、美しい星が目立ちます。ビルの明かりや街灯が目立つ都市部でも明るい恒星は見えやすいので、星座が見つけやすい時期ではないでしょうか。冬場は、火星大接近などの報道が増える時期でもあるので身近に思っている人もいることでしょう。
ここからは、秋と冬に見える星座の和名に関してピックアップしました。おしゃれでかつ美しい和名の由来を知ることで、ビルの街を脱出して天体観測を始めたいと思う人も増えるかもしれません。星座早見表などを片手に出かけてみませんか。
おうし座の恒星集団をプレアデス星団といいます。美しい星の輝きが見える冬場の空で、肉眼でも見られますよ。オリオン座の右斜め上あたりに見えるのでわかりやすいでしょう。都市部でも見えやすいので探してみてくださいね。
プレアデス星団は和名で「昴」といいます。また、この星の集団の数は肉眼で6~7個ほど見えるといわれたことから、昴のほかに「六連星(むつらぼし)」という和名がついていました。六連星とはおしゃれですし、プレアデス星団を表現するのに最適な和名ですね。
火星は星座ではなく惑星ですが、冬の空に大きく赤く見えることで知られています。火星の和名はかつて「熒惑(けいこく)」と呼ばれていました。しかし、これは中国の陰陽五行説に由来するものとされています。日本の和名として夏日星(なつひぼし)といわれるようです。江戸時代のころにいわれていたもので、おしゃれながらも力強く美しい和名ですね。
一部の地域においては西南戦争で殉じた西郷隆盛を偲んで火星を「西郷星」と呼ぶこともあるようですが、限られた呼び方でのようです。
トレミー48星座のひとつであるペガスス座は、明るい星で構成される星座です。中心部にペガススの四辺形と呼ばれる形が構成されることから「枡形星」という和名がつけられています。この枡形星は、秋の四辺形ともいわれますよ。
枡形星のほか、地域によって「四隅星(よつまぼし)」や「四星(しぼし)」と呼ばれています。普段このような漢字を書くと「よすみ、よつぼし」などと読んでしまいがちですが、「よつまぼし」などと読むのは粋でおしゃれですね。
アンドロメダ座は、ペガスス座に隣接した星座です。ペガスス座を構成する上部2点の星の延長線上に存在し、その中で最も明るいアルフェラッツという星は、アンドロメダ座を構成している星です。
アンドロメダ座は「斗搔き星(とかきほし)」という和名があります。これは、升の容量を正確に測るためのすり切り棒を意味する「斗搔き」に由来していますよ。星の並びを見ると、升形星であるペガスス座の升に隣り合っているので納得できることでしょう。
「Wの形をした星座」といわれるカシオペア座。小学校でも学ぶほか、おしゃれな特急列車などにも名付けられていたことがあるため、知らない人は少ない美しい形をした星座です。このカシオペア座の和名は「山形星」や「錨星」と見たままの形の通り表現されていました。
ちょっとアンバランスなWの形であったことが由来するのか不明ですが、大分方面では「角違い星」とも称されています。また、北斗七星の和名である「七曜の星」に並ぶ5つの星なので「五曜の星」や「五寄せ星」などといわれることもあるようです。
オリオン座にある恒星のベテルギウスは、冬の大三角を作る星の一つです。一等星で赤く見える美しい星なので、わかりやすいのではないでしょうか。この星座の和名は「平家星」です。大分方面でいわれていたという文献が見つかったことから、平家星といわれるようになりました。
リゲル(オリオン座の恒星)の源氏星と対になっており、源氏と平家の戦いに由来していると考えられています。天文民族学者が地域の古い文献をもとに確定させた和名といわれています。
こちらもオリオン座を構成する一等星です。リゲルはベテルギウスよりも明るく光る白い星。平家星の赤と相対させているとされています。しかし、リゲルは源氏星と、ベテルギウスは平家星だと確定させるまで、賛否両論ありました。
地域によっては源平の旗色を真逆に理解していたため、リゲルが平家星だったといういわれがあったそうで、和名を確定させるまでにかなりの時間を要したといわれています。天文民族学者が古い文献や方言から見出した見解を再調査するなど、並みならぬ努力があったといわれていますよ。
日本に言い伝えられている星の和名を季節に分けて紹介しました。美しい名前や素敵な由来が多いことがわかりましたね。ホロスコープに記載されているおしゃれな星座の名前に近い感じがあれば、日本の生活を当てはめた名前なども見られました。
和名は平安時代に名付けられたものが多いのですが、戦時下で「敵性語」を言い換えるためにつけられた星の和名がある事実にも驚きます。
星にまつわるいろいろなエピソードが隠されていましたが、美しい日本の言葉の響きは大切にしていきたいですね。
この記事のライター
folk
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