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トイレの後もすっきりしない、便通がある日がまちまち、など便秘に悩む女性は多くいます。そんな時、漢方の力を借りて解決することはできるのでしょうか?今回は「便秘に効果がある漢方薬と誤った対処法」について、漢方薬剤師の西崎れいな先生(KAMPO MANIA TOKYO)に教えていただきます。
1.どんな状態になったら「便秘」っていうの?2.便秘が起こる原因と「誤った対処法」とは?3.病気の可能性がある「注意が必要な便秘」とは? 4.便秘に効果のある漢方薬は?5.便秘改善のために日常生活でできることは?
解説してくれた先生 KAMPO MANIA TOKYO 管理薬剤師西﨑れいな 先生 昭和大学薬学部卒。大手調剤薬局、多診療科クリニックの院内調剤室勤務を経て、漢方専門店にて管理薬剤師。漢方相談や漢方の啓発に努め、2021年より現職。監修を務めるKAMPO MANIAでは、自分の症状や体質からカスタマイズしてくれるサービスも受けられる。
もともと女性は男性に比べて女性ホルモンの影響で便秘になりやすいので、便秘の患者さんは圧倒的に女性の方が多いんです。
便秘はストレス、食生活の乱れ、睡眠不足など、たくさんの要因が重なって慢性化してしまうことが多いので、生活習慣を見直しつつ漢方薬を上手に使うと良いでしょう。
しょっちゅうトイレに行きたくなる下痢と違い、いつものことだからと何日も便が出ない状態に慣れて放置していると、深刻な結果につながることもあるので注意が必要です。
例えば、便がカチカチになってしまってお腹が痛くなったり、硬くなった便が排泄のときに肛門を傷つけて痔を悪化させたりします。
便は、排便により体の外に出るべき老廃物です。便秘になると何日間も老廃物を外に出せていない状態になるので、腸内に老廃物が溜まり悪玉菌が増加。お腹が張って苦しいだけでなく、肌荒れやだるさ、食欲不振などをまねきます。漢方薬の服用で便秘が改善し、同時に肌荒れや体のだるさもよくなる場合も多いんですよ。
日本内科医学会の定義では「3日以上排便がない、または、毎日排便はあっても残便感がある状態」をいいます。
排便自体は毎日でなくても、スルッといい形のうんちが出て、スッキリしていれば問題ないのですが、逆に毎日出ているのに排便後にまだ残っている感じがするとか、本人が不快感のある状態であれば便秘といっていいでしょう。
たかが便秘、いつものことだからとあなどってはいけません。便秘や下痢を繰り返す過敏性腸症候群(IBS)、腸が炎症を起こすクローン病、大腸がんなどの病気が隠れている場合があるからです。
具体的には、以下のような症状が出た場合は受診をおすすめします。1.5日以上便が出ない2.強い腹痛、吐き気や発熱を伴う3.便に血が混じる4.排便の際にお尻が切れて血が出る
そうなんです。先ほどお話したように、便秘には様々な要因があるため一概には言えませんが、慢性的な便秘で少しでも様子がおかしいなと思ったら早めに消化器内科や肛門科を受診するようにしましょう。そうすれば、大腸がんの早期発見や早期治療につながります。
病気が原因ではないもので、主に生活習慣の乱れにより引き起こされる便秘を「機能性便秘」といいます。慢性的な便秘に悩まされているこのタイプの方は、ぜひ漢方薬を生活にとりいれてみてください。
大腸では、私たちが消化した残りかすをまとめて、内容物を肛門へと送り出す準備をします。この送り出す作業を、「ぜん動運動」というのですが、便秘の患者さんはその動きが鈍くなってしまい、うまく便を送り出せていない状態になっています。
ほかにも、・ストレスでこのぜん動運動が阻害される・便意を我慢しすぎて便が出たがっているのに神経が鈍り反応できなくなる・食物繊維が足りなくて便そのものが固くなるなど、便秘は複合的な要因が重なっています。
さらに、便秘で長く腸の中に停滞すると、便はカチカチになっていくので、どんどん悪循環にハマってしまうのです。
この状態を改善してくれるのが漢方薬をはじめとするお薬の役目なのですが、毎回お薬に頼ってしまうと、自然に便を出す力が弱くなり、さらにはだんだんとお薬の効きも悪くなってしまいます。やはり、お薬を服用すると同時にストレス解消方法を見つけたり、食生活の見直したりして根本的な原因を解決することが大切です。
するどいですね。センナ茶の薬効成分であるセンノシドは、大黄(だいおう)という便秘に使われる代表的な生薬の成分なんですよ。妊娠中の漢方薬の記事にも出てきましたよね。
漢方医学での便秘の治療方法は様々ですが、基本的には瀉下(しゃげ)剤といって、いわゆる下剤のような作用がある生薬が配合された漢方薬を服用することが多いです。その場合だと西洋薬と同様にお腹が痛くなったり、かえって下痢を起こしてしまう場合もあるため、あまり長く使い続けることはできません。
漢方薬のいいところは、生薬の組み合わせによってガツンと効く薬と、比較的穏やかな薬があり、その選択肢が多いことです。また、肌荒れやお腹の膨満感、月経異常など、併発している症状によってお薬を変えれば、便秘だけではなくその他の不調も同時に改善できるのが特徴ですね。
代表的なものは先ほども話に出た、大黄が含まれる大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)ですね。大黄には排便を促す作用の他に、血の滞り(瘀血)を改善する作用もあります。
また、大黄が服用できない妊婦さんや、体力のあまりない高齢者の方は桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)を使います。
便秘に効果的な漢方薬でも、ぜん動運動を促して腸の動きをよくしたり、便に水分を含ませて柔らかくしたり、体力や便の状態によって使い分けるのです。
【体質、症状】体質を問わず便秘に広く用いられます。【効能】腸を刺激してぜん動運動を促し、下剤として効果を発揮する大黄に、お腹の痛みを軽減する甘草を加えた非常にシンプルな漢方薬です。便秘の解消とともに吹き出物などにも有効です。【使われている生薬】大黄、甘草【服用のアドバイス】大黄は、妊婦さんへの投与は「避けることが望ましい」とされています。また、下痢の症状が現れる場合は一度服薬を中止して、様子を見ながら使用しましょう。
【体質、症状】どちらかというと体力がない方で、加齢に伴う便秘にも有効です。腹部に膨満感があり、コロコロした固い便が出る場合に使われます。【効能】腸に刺激を与える大黄に加え、麻子仁は腸に潤いを与えるため、便を柔らかくして排泄を促します。大黄甘草湯に比べると効き目が穏やかなので、体力のない虚証タイプの方に適しています。【使われている生薬】麻子仁、大黄、枳実、杏仁、厚朴、芍薬【服用のアドバイス】腸が乾燥してスムーズに便が流れない、コロコロ便が特徴です。山芋、里芋、豆腐などの体に潤いを与える食材を摂ると良いでしょう。
【体質、症状】体力があり、イライラや不眠などの精神症状を伴う場合の便秘に有効です。血(けつ)の流れが悪くなっている「瘀血(おけつ)」の状態。便秘のほか、肌荒れ、肩こり、月経不順などにも使用されます。【効能】大黄に加えて、芒硝という下剤の生薬が入っています。体の余分な熱を冷まし、イライラやのぼせを改善します。桃仁が血の流れをスムーズにしてくれるため、血行不良により引き起こされる女性特有の悩みに対しても効果的です。【使われている生薬】桃仁、桂皮、大黄、甘草、芒硝【服用のアドバイス】この漢方薬は便秘だけでなく、頭痛やめまい、他にも、生理痛や生理に伴うイライラや不安感などの女性特有の悩みにも総合的に効果のある漢方薬です。他の便秘薬と違い、飲み続けることで体質改善にもつながります。
瀉下作用のある生薬は、量を増やしたり常用したりしても、効果を上げるとは限りません。薬効成分の多い少ないではなく、証(しょう)にぴったりの漢方薬を選べるかどうかが大事です。自分の体に合ったものを服用してこそ、漢方薬が効果を発揮するのです。
はい、やはり必要な栄養素をしっかり摂ることと、生活のリズムをきちんと作ってあげることですね。体質に関わらず、便秘に悩む方は次のようなことを意識してください。
1.水分、食物繊維、良質な脂質をとる2.毎日同じ時間にトイレにいく(朝食後など)3.便意を感じたら我慢しない4.適度な運動を心がける(ウォーキングやストレッチなど)
こまめに水分を摂ることはもちろんですが、食物繊維は便を柔らかくするのを助けてくれます。ワカメなどの海藻類、果物、こんにゃくや山芋などの水溶性食物繊維は積極的にとるようにしましょう。寒天をスープに入れるなど、味を変えずに追加することもできます。
ダイエットのためにカロリーを気にして避ける人も少なくないのですが、腸のはたらきをよくする効果があるため、脂質も便秘解消のために必要な栄養素です。オメガ3系の油を習慣的に摂ることや、オリーブオイルをドレッシングとして使うなど、カロリーを取りすぎない程度に食事に取り入れましょう。
他にも、食事やトイレの時間を一定にすることで、生活のリズムが整って排泄がうまくいくようになります。現代は朝食を取らない人が多いのですが、朝食をしっかり食べてトイレに行くと、排泄の習慣がつきやすくなります。最初のうちは出なくても構わないので、とりあえず数分トイレに座る習慣をつけましょう。また、運動は腸の動きを良くするので、ストレス解消のためにも無理のないところからスタートして、定期的に体を動かすことも大切ですね。
何度も言うようですが、便秘改善のための基本は、規則正しい生活をすることです。いきなり理想的な生活へとシフトするのは難しいと思いますが、コンビニのごはんでも、少し栄養を意識して選ぶだけでも変わってきますので、無理のない範囲でコツコツ続けていきましょう。
薬剤師の先生から漢方について学ぶ「ママのお悩み漢方相談室〜不調な私の取扱説明書〜」。第8回の今回は、便秘体質を改善するための漢方薬についてお伝えしました。便秘の漢方薬の第一候補は大黄甘草湯となります。そのほか便の状態や症状に合わせて選択しよう。生活習慣の見直しも併せて上手に取り入れたいですね。
(解説:西﨑れいな 先生<KAMPO MANIA>)
※画像はイメージです
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、薬剤師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます
この記事のライター
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