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子どもたちの「未来の仕事」の多くは「今ない仕事」であると知っていますか? 『SDGsでわかる 今ない仕事図鑑ハイパー 自分の才能発見ブック』(講談社)は、SDGs(持続可能な開発目標)をガイドに「今はまだないけど、未来に生まれるかもしれない仕事」をわかりやすく紹介。子どものキャリア教育にピッタリの1冊です。
1970年千葉県出身。東京大学大学院工学系研究科修了。1996年から宇宙航空研究開発機構(JAXA)に勤務。1999年国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士候補者に選ばれ、2001年認定。2010年、スペースシャトル「ディスカバリー号」で宇宙へ。日本人ふたり目の女性宇宙飛行士に。2011年、JAXAを退職、現在は内閣府の宇宙政策委員会委員などを務める。
1999年に訓練を開始しましたが、宇宙船に搭乗できたのは2010年。結果的に11年間の訓練期間がありました。いつ、宇宙に行けるかわからず、また訓練を積んだからといって、実際に搭乗できる保証もない。2003年には、スペースシャトル「コロンビア号」の事故もあり、打ち上げ再開の見通しも立たなくなりました。
不安もありましたが、「自分が今できること」に気持ちをフォーカスし、ロシアや、アメリカのNASAで訓練をして準備に努めました。
宇宙飛行士の仕事は長丁場で、訓練中でも宇宙でも予定通りにいかないハプニングばかり。その中で、自分の軸はぶらさずに、どんな環境でも人生を楽しむことがたいせつなのではないかと思いました。実際、わたしはこの間に長女を出産しているんですよ。
2010年4月、ついにスペースシャトル「ディスカバリー号」で宇宙に行けたときはうれしくて、初めて行ったのに懐かしくて、まるで故郷のような感覚がありましたね。
宇宙船という閉鎖空間の中では、何よりもチームワークがたいせつです。わたしを含め七名の宇宙飛行士たちは、搭乗の1年半近く前からチームで訓練し、お互いを理解し合いました。性別、国籍、年齢などのバックグラウンドの違いも、一緒に暮らしていると気にならなくなります。
宇宙船の中ではそれぞれが任務で忙しいのですが、夜はみんなでそろって食事するのを日課にしていました。そのときに、仕事中のお礼や何気ない会話をすることも、コミュニケーションに役立ちました。
あいさつや「ありがとう」を伝えること、整理整頓、他人に迷惑をかけないようにすることなど、基本的なことをきちんとすることがチームワークのためにはたいせつだと実感しました。
また、地上にいる運用管制官や宇宙飛行士のみなさんにも、お世話になりました。軌道上にいるわたしたちを二四時間体制でサポートしてくれる、地上の管制チームの方たちとも一緒に任務を行います。ミッションを成功に導くためには、クルー同士はもちろんのこと、地上と宇宙がうまく連携を取って作業を進めていくことが重要です。
宇宙で気がかりなのは地上に残してきた家族のことです。離れている自分には直接何もできないので、地上のメンバーがわたしに代わって宇宙ステーションの中でのわたしの活動を家族に伝えたり、何かとサポートしてくれたことがありがたかったです。宇宙船だけでなく、地上のメンバーも含めてのチームワークで、任務を遂行できたと思います。
日本人には和を重んじられる人が多く、主張するだけでなくまわりの人がどう思っているのかを聞いてチームを取り持ち、良い方向に導く力がある人が多いように思います。よく、「自分の意見をはっきり言わない」と言われますが、「協調性」もチームの中で役立てられる強みではないかなと思います。
国際宇宙ステーション自体も、国境や人種を越えて一五か国で一緒に開発して運用しているものですが、地球を宇宙船から見てみると、人間はみな「地球号」という宇宙船の乗組員の仲間のように思えます。
未来では感性豊かな子どもたちが、たとえば修学旅行で月に行って月面から地球をみんなで一緒に見るような経験をしてもらいたいです。そんな経験ができたら、国境や人種の違いなど関係なく、地球人の一員として親近感を持ち、大きなチームワークで働きやすくなると思うのです。
各地の科学館で宇宙の話をする機会がありますが、以前は「人類のために役に立ちたい」という子どもたちが多い印象でした。最近は「地球のために役に立ちたい」という意見も多いんです。人類から、環境、動物や自然、植物も含めて、問題意識の視野が広がっているのはすごいなと思っています。
未来では、今よりも地球の課題解決の可能性が広がると思います。現代には課題が多くて不安もあると思いますが、同時に技術も発達しています。宇宙開発もその可能性を広げるためのものです。宇宙を知ることは地球を知ることにつながり、わたしたち自身を知ることにもつながります。
宇宙開発における極限状態に挑戦する過程では、さまざまな技術が生まれ、地上でも役立つものに転用されてきました。サングラス、フライパンのコーティング技術や人工心臓など。オムツも宇宙服開発技術から生まれたんですよ。
このように、宇宙開発のアイデアと地球の課題解決はどんどん結びついていくと思います。たとえば発電所や工場など、地球環境に負荷をかけている施設を宇宙に移設できれば、地球環境保護につながります。
そんなふうに、視野や可能性を未来に広げられる宇宙開発でありたいと思っています。宇宙に「今ない仕事」をもっとたくさん作って産業のすそ野を広げ、さらに多くの人が宇宙に行けることを目標に活動していきたいです。
宇宙開発も、未来の仕事も、自分ひとりではできないし、ひとりで全部やる必要はないんです。自分の得意な分野でチームに貢献をすることがたいせつです。苦手なことはどんどんほかの人に助けてもらっていいんです。
そうやって地球人みんなの力で、地球のために役立つ仕事をしていけるといいですね。
(上村彰子・「今ない仕事」取材班(著)、澤井智毅・宇野カオリ(監修)、ボビコ (イラスト)『SDGsでわかる 今ない仕事図鑑ハイパー 自分の才能発見ブック』(講談社)より一部抜粋/マイナビ子育て編集部)
→『SDGsでわかる 今ない仕事図鑑ハイパー』のほかの回も見る
・子どもに長時間の勉強はNG! 元教員・隂山英男先生が教える家庭学習の鉄則『小1の不安「これだけ!」やれば大丈夫です』・「子どもの性格タイプ診断」でチェック! 性格で変わる、伝わる声かけ『わが子がやる気になる伝え方』・生理があるだけじゃない! 女の子の体の変化|小学生だから知ってほしいSEX・避妊・ジェンダー・性暴力
『SDGsでわかる 今ない仕事図鑑ハイパー 自分の才能発見ブック』は、SDGsや“今ない仕事”にまつわる情報がほかにも盛りだくさん。気になったらぜひ、書籍でもお楽しみください!
今の子どもたちの平均寿命は100歳を超えると予想されていますが、企業の平均寿命は30歳あまり。ゆえに、多くの子どもたちの「未来の仕事」は、これから生まれる「今はまだない仕事だけど、未来には生まれるかもしれない仕事」なのです。
『SDGsでわかる 今ない仕事図鑑ハイパー 自分の才能発見ブック』(講談社)は、国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)をガイドに、世界の現状を理解しつつ、DX(デジタルトランスフォーメーション)で生まれる新しい力に想像の翼を広げて、子どもとともにわくわくする未来を構想するための本。
子どもにもわかりやすい図鑑形式やマンガで“未来の働き方”を楽しみながら学べるので、親子でキャリア教育を始めたいという方におすすめです。
東京都浅草出身。出版社にて子ども雑誌編集、TOEIC(c) Program (英語テスト事業)マーケティング業務を経て、2006年よりフリーランスでライター・翻訳業。カルチャー、社会、教育問題、マーケティングに関する執筆、音楽・映画関係の翻訳を行っている。著書に『お騒がせモリッシーの人生講座』(イースト・プレス)、『大人は知らない 今ない仕事図鑑100』(講談社)、翻訳書に『モリッシー自伝』(イースト・プレス)。
WIPO(世界知的所有権機関)日本事務所長。特許庁審査第一部長、第二部長、調整課長、知的財産研究所ワシントン所長、国際課長等を歴任し、2019年11月より現職。WIPO(世界知的所有権機関)特許、意匠、著作権、地理的表示等の国際的な知的財産権制度の発展を所管する国際連合の専門機関、ジュネーブに本部を置く。日本事務所は、7つある外国事務所の一つ。知財制度のプロモーションや日本政府や裁判所、産業界、大学等と国際機関であるWIPOとの橋渡し役を担う。
ポジティブ心理学者。一般社団法人日本ポジティブ心理学協会(JPPA)代表理事 [http://www.jppanetwork.org] 。ポジティヴ心理学創始の地であるアメリカの、ペンシルバニア大学でポジティブ心理学の学位を取得。現在は、国内外の大学や研究機関で、ポジティブ心理学の研究と教育に従事する。主な翻訳書に、『ポジティブ心理学入門』(C・ピーターソン/著 春秋社)、『ポジティブ心理学の挑戦』(M・セリグマン/著 ディスカヴァー・トゥエンティーワン)など。本書では心理学の監修を担当。
東京都浅草出身。女子美術大学デザイン科卒業。雑貨メーカーSWIMMERの商品デザイナー、テーマパークの物販デザイナーを経て、フリーランスのイラストレーターとして活躍中。絵本『ブラックライトでさがせ! 深海の不思議な生きもの』(パイ インターナショナル)にて、イラストを担当。また、雑貨ユニット「ゴンバ社」を立ち上げ、オリジナル雑貨の制作やイベント等を行っている。
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