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新生児の赤ちゃんは、しきりに手足を「バタバタ」「モゾモゾ」動かしていることがあります。機嫌が悪そうでなければちょっと不思議に感じるだけかもしれませんが、何度も目にすると理由が気になってきますね。新生児が手足をバタバタさせる理由と対処法を解説します。(監修:森戸やすみ先生)
新生児とは「生後0ヶ月」、つまり生まれた直後から1ヶ月間の赤ちゃんのことです。
新生児がしきりに手足を「バタバタ」「モゾモゾ」動かしているときには、どんな理由が考えられるのでしょうか。
生まれたばかりの赤ちゃんは、膝やひじが曲がり、手足が体にぴったりくっついているような姿勢をとっていることが多いものです。これは、ママの子宮のなかに収まっていたときの名残。
赤ちゃんは、生まれてから数週間かけて、徐々に腕と脚を伸ばし始めますが、そのために、やたらと手足をバタバタさせたり、モゾモゾさせたりしているように見えることがあるかもしれません。この場合、胎児のときの丸まった姿勢から、手足を伸ばすのに慣れようとしているだけです。
まれにひどいO脚に見えることもありますが、主治医に治療が必要と言われていない限り、生後1年ほどかけて自然に治っていくものなので、とくに心配いりません。
音や体勢の変化など、赤ちゃんが外からの刺激を感じたときに急に「びくっ」とし、両手を開いて腕を外側に伸ばし広げることもあります。その後、両手を握り、抱きつくように腕を曲げ縮めることも。
これは「モロー反射」といって、低月齢の赤ちゃんによく見られるもので、成長とともに自然になくなっていきます。これも正常な反応なので、心配する必要はありません。
人間の赤ちゃんは生まれてすぐ目を開くことができますが、実はまだあまり外の様子は見えていません。生まれて間もないころの赤ちゃんの感覚の中で、一番鋭いのは「触覚」と言われています。
手足をバタバタさせることで、空気の流れの変化を感じたり、寝具に触れたりして、その感覚を楽しんでいるのかもしれません。
また、新生児のうちは、脳から体の一部に信号を運ぶ経路がまだ完全に発達していないため、ぎくしゃくした動きになりがちです。そのために、手足をバタバタさせているように見えることもあるかもしれません。
赤ちゃんの神経系が発達するにしたがって、よりなめらかな動きができるようになっていきます。
生まれたばかりの赤ちゃんでも「興奮」することはあります。ただ、それを表現するために言葉を発することはできません。その代わりに「手足をバタバタ」させている可能性も。
興奮していることを、手足をバタバタさせて表現することで、ママやパパに伝えようとしているのかもしれませんね。
コリックとは「疝痛(せんつう)」のことです。これが原因と考えられることから、「黄昏泣き(たそがれなき)※」のことを指してコリックと呼ぶこともあります。
※夕方以降によく起こる、赤ちゃんがなかなか泣き止まない状態になること。新生児期から見られる
疝痛は「発作的に起こる腹痛」のことで、これのせいで赤ちゃんが手足をバタバタさせることもあります。
・手や脚をバタバタさせる・こぶしをぎゅっと握っている・背中をそらせている・脚をお腹のほうに向かって引き上げている・抱っこされるともがく/嫌がる
疝痛がなぜ起こるのか、実はよくわかっていませんが、低月齢のうちは神経や胃腸などの消化器が未発達なことがその一因ではないかと言われています。
お腹にガスが溜まったり、胃がけいれんしたりすることで痛みを起こすことがあるのです。また、タバコの煙にさらされると、それが刺激となって起こることもあるようです。
疝痛の場合、赤ちゃんには泣く以外に病的な症状はなく、数時間以内に落ち着きます。ほかの時間帯は比較的穏やかなのであれば、あまり心配はいりません。疝痛を起こしやすいのは生後3〜4ヶ月ごろまでですが、生後6ヶ月ごろまで続くこともあります[*1]。
新生児が手足をバタバタさせていてもたいていは心配いりませんが、注意したい場合もあるのでその特徴を解説します。
注意したいのは、赤ちゃんに何か病気や異常があるせいで手足をバタつかせたり機嫌が悪かったりする場合です。
低月齢の赤ちゃんで、手足をバタバタさせる以外に以下のような様子も見られたら、すぐに受診するか「子ども医療電話相談(♯8000)」に電話で相談してください[*2]。
・いつもと様子が違う感じがする・泣き方が弱々しい・元気がない・呼びかけに対する反応や目線、呼吸などがおかしい・顔色や体の皮膚の色がおかしい(青ざめている、白っぽい、まだらなど)・手足や体に痛そうなところがある・便や尿の異常(色、回数など)があったり、吐いたりしている
手足がバタバタというより、「けいれん」や「ふるえ」を起こしているように見えたときも、状況によっては注意が必要です。
・新生児が「泣いているとき」に、腕や脚にふるえやけいれんが見られる・ちょっとした刺激に反応して、手足や口がピクピクしたりワナワナしたりする・寒くてプルプル小刻みにふるえている
これらの場合は心配ありません。泣いているときのふるえやけいれんは、生後1〜2ヶ月になるとあまり起こらなくなるでしょう。部屋の中が寒すぎる場合は、適度な室温に温めてあげてください。
・けいれんが5分以上続く・けいれん後30分間経っても意識が戻らない・短時間のうちにけいれんを繰り返した・左右でけいれんの強さが異なる・けいれんの前に頭を強くぶつけた・生後3ヶ月未満で 38℃以上の発熱がある・おう吐や下痢など胃腸炎の症状もある・顔色や体の色、呼吸や目の動きがおかしい・手足がガクンガクンと激しく動くのを繰り返す
とくに「けいれんが5分以上続く」場合は、すぐに救急車を呼んでください。
なお、上記のような様子がないか観察するときは、顔を横に向け平らな場所に寝かせましょう。このとき、口の中に物や指を入れたり何か飲ませたりする、ゆする・叩くなどしてはいけません。
また、スマホなどで動画撮影しておくと、あとで受診したときに医師の診断の助けになることがあります。
心配なけいれんやふるえではなさそうなとき、新生児が手足をバタバタさせていたら以下のようなことを試してみましょう。
手足をバタバタしたりモゾモゾさせたりしているけれど、機嫌は良さそうにしているなら、優しく声掛けしたり、抱っこしたりしてみましょう。
手足を伸ばす練習中なのかもしれませんし、ママやパパに何か伝えたいと思っているのかもしれません。
手足をバタバタさせながら泣いているときは、
・空腹ではないか・げっぷが出そうではないか、お腹が張っていないか・おむつが汚れていないか・部屋の温度は暑すぎ/寒すぎないか
など、赤ちゃんが不快を感じていないか確認し、必要に応じて対処しましょう。もし、ほかにも気になる症状があった場合は、受診が必要かどうか、注意深く観察してください。
最初に解説した「モロー反射」のように、新生児期には、病気や異常が原因ではない独特の動きがみられることがあります。
手足をバタバタさせているだけで体調に心配がなさそうなら、この時期ならではの変わった動きの可能性もあるので、よく観察しておくのもおすすめ。動画に撮っておくと、「生まれてすぐのころは、こんな変わった動きをしていたよ~」とあとで親子で一緒に楽しめるかもしれません。
新生児が手足をバタバタさせるとき、考えられる理由や受診が必要な場合の見分け方、それぞれの対処法を解説しました。ひと口に手足をバタバタさせているといっても、その動き方や程度はさまざま。心配ないことがほとんどですが、なかには受診が必要な場合もあります。
そんなとき頼りになるのが、実はママやパパの感じる「いつもと違う」という感覚。とくに低月齢のうちは体調不良が原因だと心配なので、新生児の動きに違和感を覚えた場合は遠慮せず、かかりつけ医や「子ども医療電話相談(♯8000)」に相談してみてください。きっと親身になってアドバイスしてくれるはずです。
この記事の監修ドクター 小児科専門医森戸やすみ 先生 東京生まれ。小児科専門医。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都谷中のどうかん山こどもクリニック院長。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本の発表に意欲的に取り組んでいる。『子育てはだいたいで大丈夫 小児科医ママが今伝えたいこと! 』(内外出版社)、『祖父母手帳』(日本文芸社)など著書、監修多数。■どうかん山こどもクリニックHP■Twitter(構成・文:マイナビ子育て編集部/監修:森戸やすみ 先生)
※画像はイメージです
参考文献[*1]The American Academy of Pediatrics: Colic Relief Tips for Parents
[*3]乳幼児健康診査身体診察マニュアル – 国立成育医療研究センター
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます
この記事のライター
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