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育児休業を経験し、子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」。今回は計4回の育休を取得したパパに話を聞きました。
今回のパパ斎藤靖之さん/42歳/株式会社日立製作所 デジタルプラットフォーム事業部 ソフトウェア・サービス開発本部 システムアーキテクチャ
●ご家族妻:美月さん/39歳/団体職員(図書館運営)長男:昴くん/5歳長女:亜月ちゃん/3歳(※ご家族のお名前は全て仮名です)
●斎藤家のパパ育休一回目:2017年8月に長男を里帰り出産。自宅に戻ってくるタイミングで1ヶ月取得。二回目:保育園入園のタイミングで2018年4月に1ヶ月間取得。三回目:長女が誕生した2019年10月〜12月までの3ヶ月間取得。四回目:長女が保育園に入園する2020年4月におよそ1ヶ月取得。現在はリモートで勤務し、仕事・家事・育児に奮闘中。
――斎藤さんは、お二人のお子さんがいらっしゃいますが、それぞれ二回に分けて計四回の育児休業を取得されているのですね。
斎藤さん第一子の長男は里帰り出産だったので、長男と妻が自宅に戻ってきたタイミングで初めての育休を取得しました。身の回りのことをサポートしたいというのが大きな理由ですね。翌年の4月に保育園に入園することになったのですが、最初の数週間の保育は1時間、2時間、午前中だけ……と、子どもが園に慣れるため短時間の「慣らし保育」。妻は4月から復職で慣らし保育への対応が難しく、それなら私がやろうと、ここでも1ヶ月育休を取得しました。
――第二子の産後は3ヶ月と取得期間が伸びました。これは第一子の経験から、「3ヶ月はあった方がいいな」と思われたのですか?
斎藤さんそうですね。長男のときは緊急帝王切開になり、妻の体が回復するのに時間がかかりました。また、娘は里帰りせずに最寄りの病院で出産したので、少なくとも前回よりは長めに育休を取ってサポートして欲しいという妻の要望もあり、あらかじめ3ヶ月で申請しました。四回目の育休は長男のときと同じで、慣らし保育のために取得しました。
――慣らし保育は、復職直後のママが担当している家庭が多いですよね。復帰したばかりなのにすぐ帰らなければならず、心苦しいという声も多く聞かれます。
斎藤さんそう聞きますよね。私は仕事柄、妻よりも自由がきくので、妻が無理をするのではなく「別に私がやるからいいじゃない」と思っていました。実際、4月にタイミング的に担当業務の区切りもよい時期だったので、1ヶ月育休を取っても特に支障はなかったです。職場でも男性社員の育休に関して理解が浸透しているので、最初に申請したときから上司は「いいね、いいね! やってみるといいよ」と背中を押してくれました。
――ということは、他にも育休を取得している男性社員の方は大勢いらっしゃるのですか。
斎藤さん私はむしろ子どもが産まれて育休を取らなかったという事例は自部署では聞いたことがないですね。期間は数日〜数ヶ月と人によりますが、私の周りではほとんどの男性社員が育休を取っていると思います。「子どもの発熱で早退します」といったことも、みんな普通にしていますし、わが家もコロナ前から保育園の呼び出しは私を第1順位に登録しています。コロナ前から、在宅で仕事ができる環境は整っていたので、急な早退の時は子どもが夜寝てから調整をしていました。
――とても働きやすそうです。
斎藤さん育休のみならず、社内制度を柔軟に活用しやすい雰囲気があるんです。会社にはいろいろなコミュニティがあるのですが、育児、介護などをしている社員同士のコミュニティもあって、その1つとして男性たちの育休経験などを共有できる「育休部」があります。私もそこに参加していて、座談会で自分の経験を話すこともあります。
――どんなお話をしているのですか。
斎藤さんやはり皆さん、育休にまつわる不安や心配ごとが多いので、そうした相談に応えるようにしています。男性だからなのか、育休中の収入面を気にする方も多いです。そこで私なりに「育児休業給付金など収入面が実際どうなるのかと合わせて、育休の開始や終了するタイミングはこうするといいよ」とノウハウを話しています。
――とても具体的ですね。社員同士、助け合いをする風土なのですね。
斎藤さん部署にもよりますが、日立はもともと「自分たちがボトムアップで改善活動をしていこう」という、社員の向上意識が根強い気がしますね。社員同士で集まってノウハウを共有するとか、うまくいく仕組みを考えてみるとか、ツールを開発してみんなで使ってみるとか…‥そういったことは以前から比較的、自由に行われていて、育休に関してもその一つだと言えると思います。
お子さんたちが描いたカラフルな絵が、家の中を彩ってくれています
――奥様の仕事は平日の遅番や土日出勤もあるそうですね。育休中から現在まで、家事や育児と仕事の両立について、夫婦間でどのように調整していますか。
斎藤さん妻が仕事で不在のときは当然、私が家事や育児をやります。でも、保育園のお迎えに行ってからごはんを作って食べさせるのが大変で。怒涛の2時間ですよね。この時間をスムーズにのりきるためには、いかに事前に準備をしておくかが大事だということを実感するようになりました。リモート勤務になってからは、日中に少しずつ先回りして準備ができるようになり、余裕ができるようになりました。
――ちょっとした下準備で、怒涛の2時間に少し余裕ができますよね。特にご夫婦間の分担というのは決められていないのですか。
斎藤さん基本はやれるほうがやります。ただ、物理的な問題で、在宅の私がほとんど全部やることになってしまいますけど(苦笑)。妻の職場はシフト制で、遅番の日は帰宅が22時を回るので、私が1人で子どもたちのお迎えから寝かしつけまでしています。土日の週末も2週に1回は妻が出勤日で不在なので、その週末はやはり私が一人で面倒をみます。正直もう少しバランスを取れたらと思わないこともありませんが、私の実家に出掛けることも含め、父子三人で過ごしています。雨が降るとお出掛け先が絞られるので、暗澹たる気持ちになります……。食事は私も作れますが、妻のほうがずっと得意でおいしいのと、栄養への配慮もあって、食事は妻に作ってもらっています。その代わり、掃除全般はガス周りも含めて全て自分がやっています。
――お子さんの離乳食の時期などは、特に大変でしたでしょう。
斎藤さん大変でしたね。特に長男は離乳食が始まってから、卵と小麦のアレルギーだとわかって。初めてパン粥をあげたときに、アナフィラキシーショックが起きてしまったんですよ。うちの子の場合は遅延型なのか、食べた直後ではなく数時間が経った夜中に発症してしまうようで、救急車に乗ったことも2〜3回あります。
――それは心配でしたね。
斎藤さん食べたものを全部リストアップして血液検査をしても、何が原因なのかすぐにはわからなかったので不安でしたね。結局、卵と小麦のアレルギーがあるとわかりましたが、そうするとうどんやパンなど手軽に出せて多くのお子さんが好むようなものは食べられず、食事作りにはかなり苦労しました。現在も継続的に総合病院に通院していて、私が付き添いを担当しています。
――第二子の誕生後、コロナ禍での育児という状況にもなりました。当時、保育園や幼稚園が閉まって大変な思いをしている保護者が多くいましたが、斎藤さんのお宅はいかがでしたか?
斎藤さんやっぱり大変でしたね。息子が2歳、娘が0歳のときに新型コロナの流行が始まり、私は在宅勤務にシフトしました。でも、子どもがいる自宅では全然仕事にならないですよね。私は子どもたちには出かけたふりをして、こっそり別の部屋にこもって仕事をするという生活をほぼ1年間続けました。トイレも自由に行けないのが結構つらかったですね(笑)。でも、それは自分が仕事をしている間は、妻が二人の子供たちの面倒を見ながら家事をしてくれていたからなので、感謝しています。
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――経験を積んですっかり頼れるパパな斎藤さんですが、第一子が誕生して最初に育休を取った頃は、戸惑うこともありましたか。
斎藤さん子どもが本当に小さいときのお世話は、私は育児というより家事をしているという感覚に近かったです。オムツを替えたり、夜にミルクを作ったりするのは、どちらかというと家事スキルに関わってきますよね。そういった意味では、新生児期のお世話って、男性だからとか、女性だからとか、あまり関係ないのかなと思いました。
――育休を取ってよかったと思うことはなんでしょうか。
斎藤さん親としての自覚が芽生えたことです。自分の子が生まれる前も、甥や姪もかわいいし、赤ちゃんも好きでした。やっぱり自分の子が生まれたときも、かわいいなと思いましたが、親になったという自覚が、最初はあまり持てませんでした。でも育休中に子どもと密接に関わることで、意識がだんだん変わっていったように思いますね。育休を取れていなかったら、この変化がもっと遅かったかもしれません。
――「ここで変わった」というポイントはありますか?
斎藤さん明確なターニングポイントがあるわけではないのですが、徐々に子どもが自分に対して「父親への反応」を返してくれるようになってからでしょうか。それから特に実感がわいてきました。
――最後に、四回の育休を経験した斎藤さんから、これからパパになる男性たちへメッセージをお願いします。
斎藤さん女性が子どもを産んで、産休・育休を取るとき、おそらく自分の判断や調整がきかないところや、裁量の入る余地がないところもあると思います。でも男性育休の場合は肉体的な変化もないですし、タイミングを調整できますよね。もちろん環境の差はあるでしょうが、妻と一緒に新生児期の育児をすることもできますし、慣らし保育のタイミングで取得することもできます。各家庭でやりやすいように選択できればいいと思います。
(取材・文:宮本貴世、イラスト:ぺぷり)
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