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一児の父 栗原心平さん「教えるのは“料理”ではなく“段取り力”」、料理教室の小学生生徒が“段取り力”で勉強意欲までアップした理由

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目次

生きるために欠かせない「食」。子どもに豊かな食生活を送ってもらいたいと願う親が知りたい、忙しい毎日でもできる「食育」の教え方や、子どもが苦手な食べ物への対処法などを、料理家の栗原心平さんに聞きました。

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一児の父 栗原心平さん「親には“失敗”でも子どもには“成功”かもしれない」、「食育」で親ができること インタビュー前編はこちら

共働きで忙しい親でも、「買い物」で食育できる

ーー親としては、ていねいに食育できたり料理を教えられるのがいちばんですが、共働きでなかなか時間がなく、子どもに教えるほど料理が得意ではない場合、子どもにどんな働きかけができますか?

栗原心平さん(以下、栗原)一緒に買物に行くのはどうでしょう。僕が子どもと買い物をするときに意識していたのは、野菜や魚の旬を認識してもらうことでした。入ってすぐの野菜コーナーに、その時期の野菜が出ていますよね。「たけのこがあるね。たけのこは、今の季節のものなんだよ」ということをよくしていました。

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一年中豊富な食材を目の当たりにしている今の子どもたちは、旬を感じるのが難しいですが、日々の暮らしのサイクルで、「旬を伝えること」は親にとっても幸せなポイントのひとつだと思っています。買い物中にそういった会話があれば、子どもも旬を覚えることができるし、毎年その時期になると「今年もたけのこご飯を作るの?」と子どもに聞かれるようになったらちょっとハッピーじゃないですか。

ーーお菓子コーナーに追いやっていたらダメですね……。

栗原休日で旅行に行くなら、今って道すがらに道の駅がたくさんあるじゃないですか。農家さんの直売所もいいですよね。何が旬か、直接新鮮な食材を見ることはとても意義があります。最近のスーパーでは、大根が1本ではなく半分に切った状態で売られていることも多いですが、もしかしたら大根の形状を知らない子もいると思います。お肉の判別も難しい。ウチの小学生の子どもでも、赤みがかった豚肉だと「これは牛肉?」と言うことがあります。

ーー口に入れる前の食べ物について知らないことがあるのは、最近の子どもの特徴でしょうか。

栗原いえ、「最近」というのは関係ないと思います。その子の親御さん自身が、食への興味が低いのかもしれません。先日、ある幼稚園と関わる機会がありました。その幼稚園は手作り弁当を持参するか、仕出し弁当を購入するか、選択できるんです。そんななか、ほとんどのご家庭が仕出し弁当を選択するといいます。でもね、子どもは食べ残すんですよ。それで、帰宅する子どもはお腹が減っているはずだから、おそらく親御さんも残していることを把握していると思いますが、やっぱり手作りは選択しない……というのが現実ではないでしょうか。

キライな野菜は、ムリして食べさせなくていい

ーー仕出し弁当もプロが作っているわけですし、おいしくないわけではないと思いますが、なぜ子どもは残してしまうんでしょう。

栗原まず、飲食店のプロが作ったものをその場ですぐに食べる状況とは違います。仕出し屋さんとしてのプロが作るとなると、質やコストが違うんです。それでも出来たてはなんでもおいしいと思いますが、「何時間後に食べる」と逆算した上での味付けや、揚げ物の衣の付け方などですし、「いかに菌を発生させずに味を担保するか」という考え方で作らなければならないので、どうしても限界があるんです。

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ーーそもそも作る際の考え方が違うんですね。逆のパターンも聞いたことがあります。同じく手作りと仕出しを選択できる幼稚園で、逆にほとんどが手作りを選択するから、仕出しを選択したくても「プレッシャーに押されて、意地で3年間作り続けた。きょうだいもいるし仕事もあって大変なのに」という声を聞きました。

栗原そういうところもあるでしょうね。僕自身は子ども一人ですし、お弁当は自由に設計できるから、作っていた時期はすごく楽しかったです。でも、たまに言われたんですよ、「友だちが持ってくるようなキャラ弁を作ってほしい」と。絶対にイヤでしたねぇ(笑)。

ーー(笑)。たまにならまだしも、習慣化して毎日のこととなったら共働き夫婦にとっては大変です。

栗原余裕があるときに、ドラえもんを作りましたが、絵心がないので「目がちょっと離れているな……」「内側のライン歪んでいるな……」など苦心しましたね(笑)。

ーー栗原さんでもそんなことがあるんですね!(笑) 子育て中の方と接する機会も多いと思いますが、みなさんどんな悩みをお持ちでしょう。

栗原「野菜がキライなんですが、どうしましょう」という悩みは多いです。でもたいていはみなさんがそうであるように、大人になると克服して食べるようになりますよね。子どものころに出された春菊、いまは居酒屋で突き出しとして出てきたらちょっとテンション上がりませんか?

ーー上がります(笑)。

栗原ですよね? ということでキライな食べ物は意識しなくていいと思います。ただ、「ネギの匂いがどうしてもダメで、食べた瞬間に吐き戻してしまう」というレベルだと、大人になってからも食べられないと思うので、「ムリしないでください」と伝えています。

段取り力は、自由な時間をもたらす

ーーどちらにしろ、ムリをして食べさせることはない、と。

栗原ムリヤリ食べさせてネガティブな記憶を植え付けるよりも、時期を待てば絶対にテンションが上がるようになりますから。ピーマンだって食べるようになるし、油を吸ったナスは大人になったらもっとおいしさがわかると思います。

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ーーナスの揚げ浸しはおいしいですよね。甘じょっぱさも最高です。

栗原甘じょっぱさは子どもの好みではありますが、ナスの揚げ浸しは、視覚的な抵抗感がハッキリ出ますよね。

ーーテカテカして色鮮やかになりますもんね。「グジュ」っとした食感がダメという子もいます。

栗原ダメな子はダメですよね。よく、「キライな野菜を小さく刻んで、ミートソースの中に入れる」といった方法がありますが、本質的な解決にはなっていないんですよね。ナスやピーマンからしか摂れない栄養素がある、というわけではないのなら、食べさせなくてもいいと思います。ほかの食材で補完できるはずです。

ーーそう言われると気持ちが楽になる親は、たくさんいるいると思います。ところで、2022年12月18日に上梓された、子どものための初のレシピブック『栗原心平のキッズキッチン』(世界文化社)のきかっけは、栗原さんが運営するオンライン料理塾「ごちそうさまクッキングスクール」だったんですよね。なぜ料理塾を開こうと思ったのでしょうか。

栗原僕はいい意味でも悪い意味でも“段取り魔”なんですが、社会人としては「段取りをする」ことはいい意味で働くというか、得する方が多いなと思っているんです。段取りが上手ければ、時間をムダにしない行動が取れる、ということですよね。

今の時代は、みんながいろいろな時間に追われて生活しています。そんななか、効率的に動くことができると、自由な時間が得られるんです。その自由な時間を得て初めて、それが自分のための時間になる、ということを最近実感していまして。今の時代を生きる子どもたちも、そんなふうに自分の自由な時間を作ることができるきっかけになればいいと思って、始めたんです。

ーー“料理”ではなく、”段取り”を教えるということですね。

栗原段取りの思考回路は、プログラミングに似ていますよね。物事が建設的に考えられるようになれることができればと思っています。

段取りを覚えることプラス、子ども時代に親に認められたり知り合いに褒められたりしたときの気持ちを経験することは、すごくいいことだと思っています。大げさな言い方になってしまいますが、人に料理を作ることは、ある意味自己犠牲だといえます。その自己犠牲により喜びが生まれ、その喜びが自分に跳ね返ってきたときに、それを「幸せ」だと感じられたら、そんなに素晴らしいことはないなと。そのときに、相手への思いやりも生まれますしね。

親戚中の「すごいね!」に、自己肯定感アップ

ーーそんな考え方が、『栗原心平のキッズキッチン』には凝集しているんですね。

栗原「ごちそうさまクッキングスクール」でやっていることを、そのまま書籍化したような感覚です。

ーークッキングスクールに通っている子どもには、どんな変化が訪れていますか?

栗原カリキュラムは計2年で、1年で辞める子もいるし応用編まで行く子もいますが、今一番進んでいるクラスの小学校3年生の子は、応用編の真ん中くらい。「3品の献立を同時に作る」ということをやっています。

ーーすごい……!

栗原1週目はメイン、2週目で副菜とメイン、3週目で副菜とメイン、汁物で、3品の献立が完成するカリキュラムです。3品まとめて作るからこそ、段取りが重要になってくるんです。1品目の野菜を切りながら、2品目に使うための水を温め、沸いたらさきほどの野菜を茹でて……みたいな。

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ーー小学校3年生でそんなスムーズな段取りでこなせるなんて。

栗原この子は今年のお正月、覚えたレシピを親戚に振る舞ったそうなんです。それで親戚のおじさん、おばさんたち、いとこたちがみんな「すごいね!」と言ってくれたことで自信に繋がったようです。それによって学習塾の点数もよくなり、自発的に塾の宿題の量も増やしたそうです。

ーー料理で自信をつけ、相乗効果が勉強にまで繋がったんですね。「料理が上手くなるため」とは一味違う目的が画期的だと思いました。

栗原その子の体験は、予期せぬ副産物ではありますけどね。クッキングスクールにもレシピ本にも共通しているのは、「子ども目線でない」ということなんです。大人が子ども目線に膝を落とし、子どもに迎合した時点で、教える側が続かないんですよね。親も子どももフラットな状態で、双方おいしく食べられるのが、正しい“食”のあり方だと思っています。

ーーたしかに、目線を落としていないと思われる、「しらすとほうれん草のあえもの」や「ひじきの煮物」などの渋いレシピもあります。特に読んでほしいのはどんな子どもですか?

栗原食べることに興味がありつつ、作る機会がない子にチャレンジしてもらいたいですね。そして、保護者が教育に悩んでいる……というと大げさですが、辛いことが日常化している子にも一度トライしてみてほしいです。忙しいなかでしょうけれども、もしかしたらその子の何かが開くかもしれません。それで、自信に繋がればうれしいです。

【information】栗原心平さん初のキッズ料理本が好評発売中!

基礎から応用まで、子どもの段取り力と想像力を育み、子どもひとりで作れる64レシピを掲載。すべての漢字にはふりがなが振ってあるので、低学年の子どもでもひとりで読むことができます。栗原さん自身の子どものころからの料理経験と、小学生男児のパパとしての子育て経験、そしてクッキングスクールの運営を通して学んだことを元に、子どもたちの成功体験の後押しをしてくれます。

栗原心平/料理家

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一児の父。株式会社ゆとりの空間代表取締役社長。料理家として活動し、『男子ごはん』(テレビ東京系)をはじめとするテレビ出演、雑誌連載、著書多数。子ども向けオンライン料理塾「ごちそうさまクッキングスクール」を主宰。

(取材・文:有山千春撮影:松野葉子/マイナビ子育て編集部)

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この記事のライター

マイナビウーマン子育て

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