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「海外の教育事情ってどうなってるんだろう……」中学受験を考えている編集部 川島にふと湧いた疑問。それを解消するため、海外で働くパパママたちに取材してみました。「世界で働く親が考える子供の教育」は、5回の短期連載でお届けします。
新垣ゆり子さん(仮名・40代)には、健一さん(中2)と誠二さん(小6)の2人の息子さんがいます。幼少の頃は、スイス、小学生になってからロンドン、そしてインドのデリーに4年半駐在したという海外経験豊かな帰国子女兄弟です。
圧倒的な存在感のタージマハル。デリーから南へ200キロ。アグラという街にあります
デリーは大気汚染が深刻で、部屋にいるときには空気清浄機が欠かせないような状況だったそうですが、デリーで過ごした家族生活はとても充実していたそうです。健一さんと誠二さんは兄弟でブリティッシュ系のインターナショナルスクールに通いました。「同じ学校に通うインド人は、日本人の想像を超える裕福な家庭の子が多かったので、お誕生日会や様々なパーティーが日本の結婚式以上に豪華。楽しかったです」と、ゆり子さん。学校では、日本の学校では学べなかったであろう第二外国語のフランス語やヒンディー語、コンピューターの授業が充実していました。また、授業の中で生徒がテーマごとに内容を深掘りしてプレゼンをする機会が多く、自由度の高い勉強スタイルだったことが、やる気に繋がったとのこと。
「兄弟ともに英語は努力をしてきたと思います。話せるようになるにつれ仲の良い友達も増えていき、一目おいてもらえるように。そこで更に頑張ることが出来たようです」
インターナショナルデーは、各国の民族衣装や国旗が校内に溢れます
長男の健一さんが、まだデリーにいるときに「ラグビーが強くて寮があり、なおかつ身につけた英語力を更に伸ばせる国際バカロレア認定校はどこだろう」と思い、調べたところ「茗溪学園だ!」と心が決まりました。健一さんが受験をした年には家族はまだデリーに残る予定だったので、健一さんは単身で帰国し、寮に入ることに決めました。
茗溪学園は、学術都市として知られる茨城県つくば市にあります。健一さんはデリーから帰国子女受験で合格しました。その後、次男の誠二さんは健一さんが文武両道で頑張りつつも、楽しそうに取り組む様子を見て「自分も茗溪学園に行こう」と決心し、健一さんが入学した2年後に帰国してから受験し、見事合格。「得意の英語を生かすこともできる」と思ったことも学校選びの決め手となりました。
ちなみに茗溪学園は共学なので、女子寮もあります。現在約230名が入寮中で、国内は北海道から九州まで幅広い範囲から、また寮生の6割が「海外帰国生」となっており、海外からの留学生たちも在寮し、国際色豊かに寮生活を送っているそうです。
中学受験業界でも「IB」「国際バカロレア」という言葉を耳にする機会が増えました。「将来は海外の大学で学んで欲しい」と望む親や、留学を考えているお子さんは、日本にあるIB認定校・候補校をチェックしているかと思います。現在、日本では207校(2023年3月現在)が対象となっています。国際バカロレア(IB:International Baccalaureate)とは、スイス・ジュネーブに拠点を持つ国際バカロレア機構が提供する国際的な教育プログラムです。生徒の年齢(3 歳~19歳)に応じて教育プログラムを提供しています。世界159以上の国・地域で約5,500校が国際バカロレア認定校となっています。茗溪学園は、海外大学への進学用の国際統一カリキュラムを実施。2年間履修し、最終試験を経て所定の成績を収めた生徒は、国際的に認められる大学入学資格(国際バカロレア資格)を取得可能です。
「長男はオンラインよりも直接先生から学ぶ方がやる気の出るタイプで、episという海外子女専門の塾に通っていましたが、小6の間の1年間はコロナ禍で塾の授業が全てオンラインになってしまい、モチベーションや集中力をキープするのに苦労しました。次男も小5の頃から兄と同じepisに国算の授業のみ週に2日通い、志望校を茗溪学園に決めてからは、特に苦手科目となってしまった国語の克服に注力しました。次男はオンライン授業でも自分のペースで集中でき、苦に感じなかったようです」
5年の12月に入り、帰国をした誠二さんは、栄光ゼミナールの県立中高一貫校コースをとることに。
茗溪学園の国語は文章量が多く記述式の問題もあるので、毎日、新聞を読み、文章を読む練習と書く練習を重ね、過去問題集も7年分ほど徹底的に解いて、分析しました。英語は4年間のインターナショナルスクール生活で得意になっていましたが、※帰国子女アカデミーのオンラインクラスで1年間エッセイを書く練習をひたすら積み重ねました。
※帰国子女アカデミー帰国生に特化した学習メソッドを研究し続けている塾。都立大学、目黒、三田などに校舎がある。
インターナショナルスクールのイベントは親子共に出逢いを広げる大切な機会。母のゆり子さんも学校のボランティア活動に積極的に関わるようにし、子どもの友達や保護者たちと会う機会を増やすよう努力しました。
「長男は、国算英の3教科で受験したこともあるかと思いますが、入学してから理科と社会で苦労していたようです。理科は生き物が好きなこともあり、インター校では得意科目でしたが、あまり暗記することを経験をしてこなかったせいか、覚えることが大量だったこと、単語を漢字で覚えなければならないことに苦労していました。社会も日本以外の世界のことばかりを学んできており、理科同様新しく覚える項目が多く、日本の人物名や地名などの漢字が難しく、苦労をしていたようです」と、ゆり子さん。
どの国に住む日本人生徒も声を揃えるのが「漢字は書かないと忘れてしまう」です。筆者が住むシンガポールでも、漢字の練習で苦労しているインター校の生徒は数多くいます。英語がメインの生活をしていると、漢字を使う機会がぐっと減るのが現状です。漢字を使いこなすためには、週末の補修校、もしくは家庭でドリルに取り組むなどしてコツコツと積み重ねる習慣が必要になってきます。
「長男は、コロナ禍の2021年に茗溪学園に入学しました。前半はオンライン授業がメインだったためシステム上受け身になってしまうことが多く、満たされない想いを感じていたこともあったようです。また、ラグビー部でもコロナの制限があり、思う存分練習することができず仲間ともなかなか馴染めないところがあったようでした」と、ゆり子さん。
健一さんは中学2年になり、コロナ規制も緩やかになる中、ラグビーの練習を制限なくできるようになりました。チームメイトたちとも仲良くなり、学校生活が楽しくなってきたとのこと。ラグビーの強豪校でありながら、生徒たちの自主性を重んじる学校の雰囲気や練習内容も気に入っているそうです。授業においては、グループワークやディスカッションが多く、積極的に参加。インドにいるときに兄弟で決めた学校選びは大正解で、青春を謳歌している真っ最中です。
ーー5回の短期連載で、シンガポール、アメリカ、イギリス、香港、インドでそれぞれ小学校時代を過ごし、中学受験を成功させたご家族にお話を伺いました。どの家庭にもそれぞれの創意工夫がありました。共通していると感じたのは、親、もしくは親子で子供の個性をのばすことが出来そうな学校をリサーチし、最適な塾や先生、先輩たちに積極的にコンタクトをされていたことです。さまざまな受験情報が溢れている昨今ですが、親子で良質な情報を取捨選択することが理想の学校生活を送るための鍵になりそうです。
(取材・文:栗尾モカ)
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