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『中学受験 やってはいけない塾選び』(青春出版社)の著者・杉浦由美子さんが、3年後を見据えて、中学受験のこれからを探る連載「3年後の中学受験」。連載第2回となる今回は、私立と比べて状況が見えづらいと感じる人も多い公立中高一貫校、なかでも都立中高一貫校のこれまでとこれからに、スポットをあてていきます。
リーズナブルな学費で中高一貫教育が受けられる都立中高一貫校。同様に私学よりも学費が安い国立大学附属の中学・高校が放任主義傾向なのに比べて、都立中高一貫校は、ちゃんと勉強もさせてくれます。
そう聞くと保護者にとっては「おいしい話」に聞こえますが、実際には、入試の倍率は下がっています。2005年に白鴎が都立中高一貫校として初めて、中学入試をした時の倍率は13.21倍でしたが、2023年度は4.55倍となっています。
なぜ、倍率が低下しているのでしょうか。取材を重ねると、一番の要因は「記念受験」がなくなったことだと分かりました。
都立中高一貫校に入学するためには、適性検査という、私立の入試とはまったく異なる検査を受ける必要があります。
2005年に都立一貫校の適性検査がスタートした当初、私立入試とまったく異なる検査ということで、みんな、どうやって対策をしていいか分かりませんでした。誰もアドバンテージのない状態ですから、記念受験をすれば、運良く受かることもあったため「とりあえず受けてみるか」という受験生が多かったのです。
しかし、都立中高一貫校の歴史ももうすぐ20年になろうとしている現在では、受験対策のハウツーは確立してきています。
大手塾でも都立中高一貫校対策に力を入れているところが増えています。enaは都立中高一貫校対策をメインに舵を切っていますし、栄光ゼミナールも『E-style by Produced 栄光ゼミナール』という都立中高一貫校対策の塾を立ち上げました。
実際にenaを取材してみると、入試対策のメソッドが科学的に構築されており、適性検査に特化したテキストや授業は大変工夫されていると感心しました。
今は、塾でちゃんと勉強してきた子どもたちが都立一貫校に合格していきます。
家で軽く過去問をやった程度では受からなくなったため、記念受験の層が参戦しなくなり、実質の難易度は以前と変わらないのに、倍率が下がっているように見えるのです。
塾に通って対策をしないと都立中高一貫校には受からない。反対にいえば、都立に強い塾に行けば、ちゃんと対策ができます。
私立中学受験は小4から塾に通いますが、塾の都立中高一貫校対策コースは小5からスタートする場合が多いので、費用の面で負担が少なくなります。
昨今の物価上昇の中で、少しでも教育費を抑えたい家庭が増えています。そう考えると、都立中高一貫校志願者は、また増加しそうに思えますよね。しかし、実際のところはそうでもないと私は推測しています。
なぜなら、都立中高一貫校は、私立中学の受験とは別ベクトルにハードルが高いからです。
まず、適性検査は突然、出題傾向が変わることもありえます。
2022年の適性検査では、従来と違う傾向の出題がされて、真面目に対策をしてきた受験生たちが不合格になってしまうということがありました。
今後もそういったことがないとは言い切れません。(もっとも出題傾向が突然変わることは、私立入試でもあり得ないことではありませんが。)
また、都立中高一貫校の適性検査は、すべて同日に開催されます。一校しか受験できないので、当日、体調が悪かったり、緊張しすぎたりして実力が出せないと、残念なことになってしまいます。
多くの私立中堅校が適性検査型入試を取り入れていますが、あれは都立中高一貫校に運悪く落ちた学力が高い受験生たちに入学してほしいから実施しているんです。
しかし、都立中高一貫校に不合格になった生徒の大部分は、それらの私立を受験し合格していても、進学しないで、地元の公立中学に進んで、都立高校受験を目指します。「やっぱり都立に行きたい」という志向が強いのです。
そうなると、小学5年生から中学3年生まで塾に通うことになります。その上、高校に入ってもまた通塾をするとなれば、およそ8年間もの塾代が必要になってしまうのです。
経済的にかなりの負担となりますし、子ども本人も8年間も塾通いして勉強漬けになのはつらいでしょう。一方で、私立中高一貫校に進学すれば、中学生の間は塾に通わずに済む場合も多く、部活や趣味に没頭できる可能性が高まります。
※中学受験ナビの連載『3年後の中学受験』の記事の一部を、マイナビ子育て編集部が再編集のうえで掲載しています。全文は中学受験ナビにてお楽しみください。元の記事はコチラ。
この記事のライター
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