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「数学の力」というと早くても小学生以降…というイメージかもしれません。しかし、もっと幼い2歳からの言葉のかけ方次第で子ども数学力は伸びるのです。書籍『子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ』(植野義明 著)より、幼児期の今しかできない、家庭での言葉がけのヒントをご紹介!第二回は「背伸びで体重計」です。
※写真はイメージです
身のまわりの世界を理解するうえで、かぞえることと同じように大切なのは、測るという行為です。数は、重さ、長さ、速さなど、いろいろな種類の量に関係しています。そこで、家庭にある体重計やメジャーなどを使って、いろいろな量を測ってみましょう。
親が子どもに向かってにこにこしながら、「今日は、体重計で実験するよ」と言うと、子どもは、え、実験って何だろう? とわくわくします。実験というムズカシイ言葉を初めて聞く子どもでも、親自身がわくわくし、楽しそうな口調で言葉がけをすることで、何か特別なことをするのかな、と思い、子どももわくわくするのです。
こうして、測るという行為を通して、予想を立てたり実験したりすることの楽しさ、結果について話すことの楽しさを、子どもといっしょに体験できたらいいですね。
では、具体的に何を測ればよいのでしょうか。
おすすめなのは、まず最初に子ども自身の身長や体重を測ることです。子どもが最も興味をもつのは、自分の身長や体重だからです。
始める前に、体重計の使い方を教えましょう。「これは体重計だよ。体重計って、何に使うかわかるかな?」と聞いてみましょう。それから、スイッチをオンにして、静かにのるんだよとか、手をぶらぶらすると、数字もぶらぶら動いちゃって、測れないよなどと言います。最近の体重計はすべてデジタルですが、数字が読めない小さな子どもには、「ヨシくんの体重は、15.8キロだよ」などと、親が数字を読んであげます。
イラスト:Mariko Minowa「子どもの「数学力」が自然に育つ2歳からの言葉がけ」より
そして、体重を測るだけでなく、思いつくいろいろな実験をします。例えば、「うーん! と力をいれて踏ん張ったら、体重は増えるかな? それとも減るかな?」などと言ってみましょう。あるいは、「大きく背伸びをしたら、体重が増えるんじゃない?」と言ってみてもいいですね。
子どもは早く大きくなりたいという欲求があるので、もしそれで体重が増えるなら、やってみようと思うでしょう。
子どもは、早く結果が知りたいので、すぐに体重計にのって測ろうとするかもしれません。しかし、実際に測る前に、このように子どもに予想を立てることを促す言葉がけを必ずするようにしてください。
子どもと実験をするこうした機会はとても大切で、本書でも繰り返し登場します。それぞれの実験は、1回限りの貴重な体験です。そして、実験では、結果を知ることよりも、予想を立てることが何よりも大切なのです。子どもが自分自身の言葉で「〇〇になると思う」という予想を言えるような雰囲気を家庭の中に作ってください。
また、予想は間違っていてもいいのです。
大切なのは、小さな声でもいいので口に出して予想を言える雰囲気があることです。親には、こうした雰囲気を作る責任があるのです。雰囲気を作るというと、はじめは戸惑うかもしれませんが、何度かやっているうちに、子どもは予想を言うことにだんだんと慣れてきて、そのうちに子どものほうから、「予想は間違ってもいいんだよね」などと言うようになります。
踏ん張っても、背伸びしても体重は増えないし、片足で立っても体重は減らないことがわかったら、子どもは何をしても体重は変わらないと思ってしまうかもしれません。そこで、今度は見かけ上の体重が変化する実験をします。
「ジュースを手にもって測ると、体重計の数字は増えるかな」と言ってみます。500ミリリットルのジュースのパックを1つもつと、数字は0.5キロぐらい増えるでしょう。1リットルの牛乳をもってのると、ちょうど1キログラムぐらい増えます。
目に触れるいろいろなものやことに興味をもつ幼児にとって、視覚、聴覚、触覚などのさまざまな感覚を通して数への興味や数の量としての感覚を高めておくことは、きっと生涯にわたって役に立ちます。ぜひ、ご家庭でできる範囲でいろいろな実験を工夫してやってみてください。
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\言葉がけのコツ/
間違ってもいいので予想を立ててみる
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お話が上手で、何でも自慢することが大好きな3歳の男の子と、凧あげについて話していたときのことです。その子は、「ぼくの凧はね、すごく高くまで飛んだんだよ。アール階まで飛んだんだよ」と言いました。わたしは、「アール階まで飛んだの? すごいね」と言いました。
アール階とはもちろん、マンションの屋上のことです。でも、なぜその子は屋上階のことをアール階と言ったのでしょうか。もうおわかりですね。マンションのエレベーターには「R」というボタンがついていることがあります。それ以外のボタンはすべて数字ですが、いちばん上のボタンにはなぜか「R」と書かれているのです。その子が住んでいるマンションのエレベーターもそうでした。
子どもは、エレベーターの1のボタンを押すと1階で止まり、2のボタンを押すと2階で止まることを経験から学びました。そこで、Rのボタンを押すとR階で止まると考えることは、まったく自然で、そこには何の不合理さもありません。
子どもは、身のまわりで起こるいろいろなことを、いつも驚きの目で見ていますが、単に知識を取り込むだけではなく、取り込んだ知識をもとに頭の中で論理的に考えることも行っているのです。
\「考える力・見つける力」の芽を育てよう/
いつでもできる簡単な言葉がけで子どもの数学力(算数力)は大きく伸びます。
■子どもの数学的な力を育む「言葉のかけ方」をお教えします子育てでは、子どもへの声がけや話しかけが、とても大切です。子どもを伸ばす、子どもが変わるなど、様々な話しかけ方の書籍があります。本書は、子どもの数学的な力が自然と育つ、言葉のかけ方、話しかけ方を紹介する初めての本です。
■考える力の「芽」を育てよう小さな子どもの能力は無限大。幼少時にちょっとした声がけをしながら一緒に遊んだり、ゲームをしたり、実験をしたりすることで、考える力の「芽」はどんどん育ちます。「こっちには何個入っているかな?」「点をつないだら、何に見える?」「これと同じ形はできるかな?」「どうしたらいいと思う?」……などなど、少しのきっかけを作ってあげるだけで、子どもの頭はフル回転しはじめます。
■2~6歳のいまだから渡せる一生モノのギフト著者の植野氏は、数学を教えて35年の経験から、幼少時の習慣が数学(算数)の力を育てることを実感しています。日々、いつでもできる話しかけで、お子さんに生涯使える大きなギフトを贈ってあげてください。
東京大学非常勤講師、くにたち数学クラブ代表、日本数学会会員、数学教育学会代議員。東京大学理学部数学科卒、東京大学大学院で数学を専攻、理学博士。1986年より東京工芸大学講師、准教授。2021年4月、定年退任と同時に国立市で3歳から100歳までの人たちが数学の美しさに触れ、数学で遊び、数学が好きになれる場所として「くにたち数学クラブ」を設立、代表。著書に『考えたくなる数学』(総合法令出版)がある。
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