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皆さんは「自己肯定感」について知っていますか? しあわせな中学受験にするためには、子どもの自己肯定感を高めることは欠かせません。では、どういった親の関わり方が、子どもの自己肯定感を育むことにつながるのでしょうか。教育ジャーナリスト・中曽根陽子さんが掘り下げてみます。
「自己肯定感」とは、自分のいいところも悪いところも含めて、「自分はありのままでいいんだ!」と認められる感情のことです。自分を認められれば、なにかに挑戦してみようという意欲も自信をもつことができます。
一方、その逆はなにかというと、自分の存在を認められない「自己否定」です。「自分はだめだ」と思っていたら、なにかに挑戦しようという意欲や自信はもてないですよね。
つまり、自己肯定感は子どもの意欲を高めるうえでも重要な力であり、生きる力の根幹です。であれば、子どもの自己肯定感をしっかりと高めてあげたいものです。
では自己肯定感を高めるためには、どうすればいいのでしょうか? 私の連載「21世紀の子育て 生きる力の強い子の育て方『自分のやりたい!』がある子はどう育ったのか」では、意欲をもって自分のやりたいことを追求している人の育ちを取材しています。
その取材を通じて見えてきた共通点のひとつが、意欲がある子どもの親たちには、子どもに干渉し過ぎず「子どものありのままを受け止めている」ことです。
子どもがやりたいことがなんであれ、まずは認めてあげて、うまくいかないときには、どうすれば実現できるかと一緒に考え、子どもを支援しているのです。
一方、子どもの自己肯定感が低いと嘆く親に見られる共通点が、「子どもをできない存在としてとらえている」ことです。
そういう親は「子どもは、あらゆることを親が教えてあげなければならない存在」だと思っています。そのため、よかれと思って、自分が正しいと思っていることを押しつけて、子どものやりたいことを否定してしまう。あるいは、他人と比較してダメ出しをしたり、親の望む子ども像を押しつけたりしがちです。それでは子どもの自己肯定感が育まれるはずもありません。
じつは、自己肯定には2種類あります。ひとつが「条件付きの自己肯定感」、もうひとつが「条件のない自己肯定感」です。
条件付きの自己肯定感とは、「誰かと比較して優れている」とか「評価されている」といった、人との比較でもたらされる自己肯定感です。この自己肯定感は、自分より優れている人が現れたり、失敗して評価が下がったりすると、途端に自信がなくなって低下してしまうものです。
もしかしたら、励ますつもりで「今回のテストでは、○○ちゃんより成績良かったね」などと言っていませんか? あるいは「○○ちゃんもがんばっているんだから、あなたもがんばって」など、叱咤激励をしていないでしょうか?
以前のコラムにも書きましたが、子どもたちにインタビューをしたときに、「親に言われて嫌だったのが、友達と比較されることだった」という声が多く上がっていました。良かれと思って発した言葉で、かえって子どもの自己肯定感を下げることになっていたら、もったいないですよね。
一方の、条件なしの自己肯定感は、いいところもダメなところもある自分を受け入れられる自己肯定感です。
「自分はこのままでいい!」「自分は大丈夫!」と感じられるようになれば、たとえうまくいかないことが起こっても、「大丈夫、なんとかなるさ」と思えるようになります。
子どもが自分に自信を持てるようにするためには、他人との比較や評価ではなく、お子さん自身ががんばっているところや、できたことに注目して、そのまま事実を伝えることを心がけてみましょう。
たとえば、お子さんがテストでこれまでよりいい点数をとってきたとします。「すごい! この調子で次も頑張ってね」と励ましたくなると思いますが、そうではなく、「良かったね。お母さんも嬉しいよ」と一緒に喜んであげてから、「がんばっていたものね」とその努力を認めてあげて、「どうしてうまくいったのかな」とうまくいった原因を問いかけてあげます。
そうすると、子どもは自分でやったことを振り返ることができて、次もやってみようという気持ちが芽生えやすくなります。日々の言葉がけに気をつける、その小さな繰り返しで、やがてお子さんは自分に自信が持てるようになるのです。
自己肯定感の高い子どもの親に見られるもうひとつの共通点として、「親自身の自己肯定感が高い」ということも挙げられます。
最近、お母さんたちとお話をすると、「私なんて……」と自分のことを否定的に話される方が多いのが気になります。日本人は謙遜を美徳とするところがありますが、まずは自分にOKを出してほしいと思います。
毎日ご家族のためにご飯をつくり、健康を気遣い、お子さんの勉強について頭を悩まし…、皆さんの頑張りでご家族は支えられています。まず、自分の心のコップを、ありのままの自分を受け入れる自己肯定感という水で満たしましょう。自分のコップに水を満たすことで、初めて、子どもの心のコップにも水を注ぐことができます。
私は最近「ポジティブ心理学」を学んでいますが、そのなかには、自分が幸せになる方法がたくさん研究されています。
ファーストステップとしておすすめするのが、その日にあったよかったことを3つ書き出してみて、なぜそれが起きたのかを考えることです。
これは、マイナスではなくプラスのことに目を向けるレッスンで、続けていくと幸福度が上がるといわれています。日常のなかの小さな幸せに気づけるようになると、自分の心のコップが満たされていくのを感じられるようになります。お子さんと一緒にぜひやってみてください。
しあわせな中学受験にするためには、まずしっかりと子どもを観察すること。そして、できるだけ子どものいい面や、できた部分を見て励ましてあげてください。
中学受験ナビの連載『しあわせな中学受験にするために知っておきたいこと』の記事を、マイナビ子育て編集部が再編集のうえで掲載しています元の記事はコチラ。
この記事のライター
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