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「ちょっと幸せ」をテーマに、グルメ・美容・健康・カルチャーなど、女性にうれしい情報満載のフリーマガジン「Poco'ce(ポコチェ)」から戸田恵梨香さんのインタビューをお届けします♪
太平洋戦争末期、誰もが自分のことで精一杯だった時代に、国の決定を待たずして日本で初めて保育園を疎開させることに挑んだ保母たちがいたことをご存知だろうか?20代を中心とした若手保母たちが子供の命と文化的な生活を守るため、53人の園児を連れて集団疎開を敢行した実話を描いた作品『あの日のオルガン』。幾多の困難を乗り越え、大切な命を未来へとつなごうと毎日必死で戦う保母たちのリーダー役板倉楓を演じた戸田恵梨香さんにお話を伺った。
Profile
1988年生まれ。2006年映画「デスノート」で映画初出演。2007年「ライアーゲーム」で連続ドラマ初主演後、TBS「流星の絆」、フジテレビ「コード・ブルー」、TBS「SPEC ~警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係事件簿~」TBS「大恋愛〜僕を忘れる君と」など、多数の作品に出演。101作目となるNHKの朝ドラ『スカーレット』のヒロイン役が決定。
今ある平穏な生活が当たり前ではないこと。人はひとりでは生きられないこと。戦時中に子供たちを必死に守り抜いた保母たちの姿を通して感じ取ってもらえたら。
昭和から平成、そして新しい元号へと変わる今年。戦争を知らない人たちが増え、平和な日常が当たり前だと思える今だからこそ、見て欲しい作品『あの日のオルガン』が公開される。太平洋戦争末期、日本で初めて保育園を疎開させることに挑んだ保母たちの実話を描いた作品だ。その保母たちのリーダー、板倉楓役に抜擢されたのがドラマや映画で幅広い役柄に挑戦し、今や姿を見ない日はないと言っても過言ではないほどの人気女優、戸田恵梨香さん。この作品のオファーを受けたときの心境を伺うと、ひとつ返事で『やります』とは言えなかったと話し始めてくれた。
「戦争を題材にした作品というのが自分には重く感じて、引き受けるかどうかものすごく悩みました。でもオファーを受けたのは台本を読み、保母さんたちの姿にとても感銘を受けたから。この作品は直接戦争を描いた話ではないんです。でも実際に戦地で戦っている人でなくとも国民全員が戦っていたんですよね。それは改めて伝えて行かなければいけないことだし、それを責任を持って自分の力で伝えたいと思ったんです」子供たちを守ることの大切さを改めて痛感したと戸田さんは続ける。
「現場で子供たちが聞いてくるんです。『楓先生、なんで戦争するの?』『なんで戦うの? やめればいいのにね』って。その純粋な声がグサグサ刺さって、もし今、戦争が起こったとしてもこの子たちだけは絶対に守らなきゃいけないと思いました。現場で子供たちが私たちを保母にしてくれたというか、成長させてくれました。よくお母さんたちが“子供が親にしてくれた”と言うのを耳にしますが、あぁ、こういうことなんだなって実感しました」
戸田さん演じる板倉楓の通称は“怒りの乙女”。子供たちをないがしろにする国に怒り、先の見えない時代に怒り、ときにまとまらない保母たちや子供たちにも怒声を飛ばす。
「楓先生は怒るということで自分を律していた人だと思うんです。実際、楓先生は当時25歳という若さ。怒っていないと責任や戦争の恐怖に負けて立っていられなかったと思うんです。その姿勢はカッコいいなと思いました。それに怒るのと叱るのとは別物。楓先生は保母たちや子供たちに対して怒ってるんじゃなくて、叱ってるんです。そこにはその人を思って伝えているという愛がちゃんとあることをわかって欲しい。最近は、会社で若い人を叱るとすぐに辞めてしまうという話を聞きますが、受け取る側もそこには確かに愛があって、自分のためを思ってのことだと感じ取らなければいけないと思うんです。それこそ言葉というコミュニケーションツールを持つ人間ならではのいい部分だと思うんですよね」
楓とは正反対のおおらかな保母役には大原櫻子さんがW主演として抜擢。ほかの保母役にはオーディションを勝ち抜いた若手俳優が集結したことにも注目が集まっている。
「役柄と本人のキャラクターがマッチしていて、見事なキャスティングだと思いました。若手のみなさんはキラキラしてましたね、ツヤッツヤで(笑)。私、気づいたら最近“若手”って書かれなくなってしまったので、私にもこんな時期があったかしら? なんて思って見てました(笑)」
保母役のリーダーとして、先輩女優として後輩たちに何かアドバイスをしたのかと伺うと『ないです』とキッパリ。
「教えられることなんてないです。ただ、とにかく自分が楽しくないと意味がないから自分がやりたいことを楽しくやって欲しいと伝えました。今回は監督の演出が少し独特で、あの時の意味はどうなんだろう? どうしたらいいの? と苦悩する場面も多かったので、そんなときはみんなを食事に誘ってリフレッシュしたり。楽しい時間を共有するようにしていました。楓先生とちがって私はとことん弱いし、楓先生の持つ強さは私にはないけれど、母性というのは生まれた気がします。子供たちにかぎらず、若い女優さんのことも守りたいと思って接してました。みんなの力になれたらいいなって」
責任感と緊張に押しつぶされそうだったというこの作品。「精神的にきついことが続いたけれど、この作品で経験したことはこの先確実に生きるなという手応え、心強さがついた気がする」と戸田さんは語る。最後に『あの日のオルガン』の見どころを伺うと。
「ずっと笑顔なく怒り続けていた楓先生が最後の最後に見せる、肩の力が抜けた瞬間を見逃さないで欲しいです。彼女が背負って来たものがどれだけ大きなものだったのか、その重圧から解き放たれた先生の姿は今思い出してもぐっとくるし、多くの方に共感してもらえると思います。そして今ある平穏の日々がいかに幸せかということ、人は一人では生きて行けないということ。作品を通して大きな愛を、強さを受け取ってもらえたら嬉しいです」
撮影を終え、開放されたのかと思いきや連ドラ、朝ドラとひっきりなしに出演作が続く彼女。「もし休みが取れたら?」と聞くと『引きこもって好きなだけ寝たい! お寿司も食べたい!』と笑ってくれた。
「あの日のオルガン」
(C)2018「あの日のオルガン」製作委員会
原作/久保つぎこ
『あの日のオルガン 疎開保育園物語』(朝日新聞出版)
監督・脚本/平松恵美子
出演:戸田恵梨香、大原櫻子、佐久間由衣、三浦透子、堀田真由、福地桃子 他
2月22日(金) 新宿ピカデリー 他全国公開
PHOTO/Hirohiko Eguchi (LinX)
STYLING/Yoko Kageyama(eight peace)
HAIR&MAKE/Haruka Tazaki
TEXT/Satoko Nemoto
この記事のライター
Poco'ce
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