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「ちょっと幸せ」をテーマに、グルメ・美容・健康・カルチャーなど、女性にうれしい情報満載のフリーマガジン「Poco'ce(ポコチェ)」から水川あさみさんのインタビューをお届けします♪
「百円の恋」の脚本家・足立紳が2016年に発表した自伝的小説を、自ら脚本・監督を務めて映画化した「喜劇 愛妻物語」が9月11日より全国公開される。第32回東京国際映画祭のコンペティション部門で最優秀脚本賞を受賞したこの作品は売れない脚本家と、夫に悪態をつき続ける恐妻が繰り広げる夫婦賛歌。濱田岳さん演じるまったく売れない脚本家の夫に愛想を尽かし、罵詈雑言を浴びせながらも家族を支える鬼嫁チカを演じた水川あさみさんに作品への想いを伺った。
1983年生まれ。今年は映画「グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~」に出演。Hulu「住住(2020)」、Paravi「love⇄distance」が配信中。また、公開待機作に映画「ミッドナイトスワン」(9月25日公開)、「滑走路」(今秋公開)がある。
「あー、別れとけばよかった。あんたが雑魚だって気付いてたのに!」
「もう一緒にいたくない、顔も見たくない、マジ死んで欲しい!」
水川さん演じるチカの罵声が飛び交うのは『喜劇 愛妻物語』のワンシーン。チカになじられているのは年収50万円の売れない脚本家の夫、豪太(濱田岳)だ。物語は、普段から甲斐性のなさを妻になじられている豪太の元へ、香川に実在する“ものすごい速さでうどんを打つ女子高生”の話を脚本にする依頼が舞い込んでくることから始まる。豪太は家族の関係改善を兼ね、妻と子を連れて取材旅行へと出かけたのだが、その話はすでに映画化が決まっていて…。
「チカと豪太は、監督と奥様の日常を投影した役なのですが、脚本を読んだ段階で会話のやりとりや、細かな仕草などの演出が緻密で素晴らしいなと思いました。普通、会話劇は『こんなこと言うかな?』という不自然さがあったりするのですが、この作品にはまったくない。どうしてだろうと思ったら、実際に監督と奥様が一緒に脚本を書いて読み合わせもしたと聞いて、なるほどなと納得しました。それに実際に演じたときも、濱田くんが本当に腹が立つような素晴らしいお芝居をしてくれたので、自然と罵詈雑言を浴びせられました(笑)」
監督の奥様を演じるにあたり、意識したことや役作りについて伺うと。
「奥様はモデルになっているけれど、奥様そのものを演じるわけではないのでそこは意識しませんでした。でも罵声を浴びせてるうちに監督から『だんだん奥さんに見えてきた』『今の言い方は傷つくわー』って言われたので、近づけたのかなとは思いますね。あとは脚本の冒頭に『チカのでっかい背中が…』という豪太のセリフがあるので、5キロの増量をしました。監督も『背中でっかくなりましたね!』って喜んでくれて、背中とお尻をたくさん撮ってくれました(笑)」
でも太ったスタイルをキープするのは大変だったと水川さんは続ける。
「3週間しか期間がなかったので、とにかく食べ続けないといけなくて。ありがたいことに香川はあちこちにうどん屋さんがあるので、時間さえあれば食べていました。でも、撮影は真夏の炎天下。食べるだけでも大変なのに、常に豪太はイライラさせるし、ワンカットでの撮影が多かったので集中力も切らしちゃいけない。エネルギーの消費は激しいのに痩せちゃいけないので大変でした」
ずっと怒っている役というのは、メンタル的にきつい時もあったそう。
「チカは怒りたくて怒ってるわけじゃないんですよね。チカは豪太の才能を昔から今もずっと信じているのに、それが思うように開花しないこと、そしてそれを本人が真剣に考えてないことがもどかしくてイライラして罵声を浴びせてしまう。だから言えば言うほどチカ本人が傷ついているんです。ただ面と向かって『死ね!』なんて言うことはないので、それは気持ちよかったかな(笑)。チカと豪太にとっては『死ね』と言う言葉は『おはよう』と同じ。あの2人だから成立するんですよね。夫婦っていろんな形があって、それが個性なんだなって改めて思いました」
怒られっぱなしの豪太役、濱田さんのテンションが気になるところ…と伺うと。
「それが、罵声を浴びれば浴びるほどイキイキしていて。それがまた腹が立つんですよね(笑)。きっと監督になりきっていたんだと思います。お家でのシーンは実際に監督のお宅で撮影したのですが、そこには奥さんもいらっしゃって。休憩時間にスイカを出して下さったり、とても気の利く優しい方なんですが、監督には急に『こいつはいつも偉そうに!』とか言い出すんですよ。言われた監督は喧嘩しつつもヘラヘラ嬉しそうだし、本当に面白い現場でした。その空気感が私と濱田くんの演じる夫婦にもいい感じに反映できたんだと思います」
外から見たらキツくて怖い鬼嫁のチカだが、本当は誰よりも夫の成功を信じている。それを表すのが、チカがいつも履いている赤パンツだ。
「豪太と付き合い始めのころ、巣鴨でげん担ぎに買った赤パンツをくたくたになった今でも履き続けているチカ。チカのそういう愛情深いところが好きですね。お芝居する上でも怖い顔の裏に隠された懐の深さや優しさが見えるように意識しました。そうそう、クランクアップのときに監督が私と濱田くんに赤パンツをプレゼントしてくれたんです。それがとっても嬉しくて。大事にしまってあるんですが、この作品の劇場挨拶に履いていこうかなぁ。この作品のヒットを祈願して初めてのげん担ぎですね」
笑いと涙、そして怒りと絶望が入り混じる愛憎渦巻く夫婦の姿をコミカルに描いた痛快コメディ『喜劇 愛妻物語』。夫婦の形に正解はないと考えさせられるこの作品、ダメ夫と恐妻はどんな結末を迎えるのかをぜひ劇場で観てほしい。
原作・監督・脚本/足立紳
出演/濱田岳、水川あさみ、新津ちせ 他
9月11日(金) 全国ロードショー
PHOTO / Hirohiko Eguchi (Linx.)
STYLING / Miho Okabe
HAIR & MAKE / Tamae Okano
TEXT / Satoko Nemoto
この記事のライター
Poco'ce
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