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毎月1日は映画サービスデー!中井圭さんが選ぶ最新映画3選

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毎月1日は、映画サービスデー。この日に映画館に行くと、女性だけじゃなくパートナーと一緒にお得な料金で映画を観ることができます!せっかく足を運ぶなら外さない映画がみたいですよね♪ということで映画解説者の中井圭さんが注目を集める3本の映画をご紹介します。

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目次

この記事で紹介されている映画の上映時間

  • 『彼らが本気で編むときは、』 127分
  • 『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』 101分
  • 『ラ・ラ・ランド』 128分

『彼らが本気で編むときは、』

本作は、おそらく今年の年末に2017年の日本映画を語る際、必ず話題に上がるのではないでしょうか。それくらい、極めて誠実な姿勢に深い感動をおぼえました。

物語は、ネグレクトで父母ともにいなくなってしまった家に残された少女トモが、叔父であるマキオのところに転がり込むところから始まります。そこにはマキオの恋人で、元男性のトランスジェンダー、リンコがいました。深い愛情を自分に注いでくれるリンコに戸惑いをおぼえながらも、トモは徐々に心を開いていきます。

本作は、『かもめ食堂』などを撮ってきた荻上直子監督の脚本・監督作ですが、従来までの作品とは少し違います。彼女自身が南カリフォルニア大学で映画を学んできていて、海外での生活や環境を体験していることもあり、LGBTを身近に受け容れていることが前提となっています。

海外と日本の環境の差異を、自分の内側を通過した映画として表現している点において、彼女しか撮れない作品に仕上がっています。また主演の生田斗真さんの演技は、おそらく彼のキャリアで最高のものといえるでしょう。

画面の中で不条理さえも飲み込んで、誰よりも優しく振舞う彼女は、同時に映画が描いていないところで、つらく哀しい体験をしたことを感じさせます。

先日ご紹介したアカデミー賞候補の『ムーンライト』にも近い表現がありますが、本作は、そこにユーモアというエッセンスを加えることで、荻上直子節へと昇華したことで、多くの方に愛される作品になったといえるでしょう。必見の傑作です。

タイトル:『彼らが本気で編むときは、』
公開:2017年2月25日(土)、新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー!
配給:スールキートス
著作:(C)2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会
脚本・監督:荻上直子
出演:生田斗真、柿原りんか、ミムラ、小池栄子、門脇麦、柏原収史、込江海翔、りりィ、田中美佐子 / 桐谷健太
公式サイト:http://kareamu.com/

第67回ベルリン国際映画祭 テディ審査員特別賞受賞
(パノラマ部門、ジェネレーション部門 正式出品作品)

『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』

大切なものを失ってしまったときに、哀しむことができないことのつらさを描いた作品は、昨年の日本映画『永い言い訳』がまさにそれにあたりますが、本作『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』もまた、アプローチは違えども、感情の再生の物語です。

エリート銀行員として出世街道をまい進していた男デイヴィスは、ある日、同乗していた車の交通事故で妻を亡くしてしまいます。愛する妻を突然失ったことで悲嘆にくれるかと思いきや、まったく感情の波がやってこないことで、自分自身がよくわからなくなってしまいます。そこで、彼はアドバイスを得て、身近なものを破壊することで、自分の心のありかを探すことになります。

本作のややこしい邦題は、作品を観ていくうちに理解できるのですが、原題は、『demolition』です。つまり、解体。物理的な破壊をメタファーにしながら、型にはまって感情が死んでしまった自分自身をも、一旦壊して再生する様を描いています。

本作の監督は、ジャン=マルク・ヴァレ。過去作『ダラス・バイヤーズ・クラブ』や『わたしに会うまでの1600キロ』などでも、心が壊れてしまった人々の再生を描いています。

そんな彼が、本作では妻の死と自身の感情の死からの再生劇を、心の所在がわからない人物を演じさせたら定評のあるジェイク・ギレンホールを迎えて、一見突拍子もない物語に、不思議なリアリティを定着させています。

この映画は、ラストカットが秀逸です。ここに向かって映画が積み上げられていったといっても過言ではないでしょう。ぜひ、その癒しを体験していただきたいです。

タイトル:『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』
公開: 2/18(土)より、新宿シネマカリテ他全国公開!
配給:ファントム・フィルム
著作:(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation, Demolition Movie, LLC and TSG Entertainment Finance LLC. All Rights Reserved.
監督: ジャン=マルク・ヴァレ
出演: ジェイク・ギレンホール、ナオミ・ワッツ、クリス・クーパー他
公式サイト:http://ame-hare-movie.jp/

『ラ・ラ・ランド』

言わずもがな、今年のアカデミー賞最有力で、娯楽作品としても一級品の本作『ラ・ラ・ランド』。2月24日より、ようやく公開となりました。本コラムのアカデミー賞特集でも既に1度ご紹介していますので、簡単に触れる程度にしますが、この映画こそ、映画館で観るにふさわしい作品なのです。

まず、この映画は昨今のデジタル化の流れに反して、アナログの35ミリフィルムで撮影されています。そして、シネマスコープの2.4:1という横縦の画角も、かつての古きよき時代の映画を想定した2.25:1という特別な画角で撮影されています。

そして、冒頭から繰り広げられるカラー映画が始まった頃のミュージカルを髣髴とさせる色鮮やかなカラーリングと、どうやって撮っているのかわからない壮大な撮影による歌と踊りもまた、かつて映画館でしか映画を観ることができなかった頃、そこにあふれ出した大迫力の感動を体感してこそ真価を発揮したものを、現代に再現しているのです。

何事も古いものが素晴らしい、と言うわけではありませんが、本作は、映画館で映画を観ることの喜びをもう一度思い出してみよう、というメッセージを投げかけられているかのような、美しい描写に満ち溢れています。これこそ大画面で、大音量で観るに値する傑作だと思います。

タイトル:『ラ・ラ・ランド』
公開: 2017年2月24日(金)TOHOシネマズ みゆき座他全国ロードショー
配給: ギャガ、ポニーキャニオン
著作:(C)2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
監督: デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、キャリー・ヘルナンデス他
公式サイト:http://gaga.ne.jp/lalaland/



この記事のライター

中井圭

1977年、兵庫県出身。映画解説者。WOWOW「映画工房」「WOWOWぷらすと」、シネマトゥデイ×WOWOW「はみだし映画工房」、TOKYO FM「LOVE CONNECTION」「TOKYO FM WORLD」等に出演中。「Numero TOKYO」「CUT」「観ずに死ねるか!」シリーズ、映画広告ポスター等に寄稿。「映画の天才」「偶然の学校」「映活」「ナカメキノ」などの映画関連イベントを企画し、映画普及につとめる。東京国際映画祭をはじめとした様々な映画トークイベントに登壇し、映画解説を展開している。

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