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薬剤師の三上彰貴子です。「生理痛がつらいのは当たり前」「経血量が多いのは体質」と思っていませんか?実はその症状、子宮筋腫など婦人科系の病気が隠れているサインかもしれません。今回は、生理の量や痛みのセルフチェック方法から、子宮筋腫の基礎知識、最新の治療法までをわかりやすく解説します。
生理が重い、毎月つらい…。
生理痛がひどい、生理の量が多いのは、当たり前だと思っていませんか?
生理痛は子宮が収縮するときに起こるので、特に生理が始まったばかりの10代から20代前半では痛みがあることが多いです。
でも、最近の生理で…
・我慢できないぐらい痛い、冷や汗が出るほどの痛みがある
・痛み止めを飲んでもほぼ効かない(痛み止めは痛みの出始めに飲むのが効果的です)
・痛みが以前よりひどくなってきた
と、気になることはありませんか?
また、生理の量は人と比べる機会が少ないので、自分が多い方なのか分かりにくいものです。ましてや、母親や姉妹も同じような状況だと「これが普通」と思い込んでしまいがちですが、以下のようなサインはありませんか?
・ナプキンを変えてもすぐに漏れそうになる
・会議や授業中に漏れが不安で集中できない
・夜用の大きいナプキンを付けていても漏れる、あるいは夜中に何度も取り替える
・レバーのような血の塊がたくさん出てくる
もし思い当たることがあるなら、それは単なる“生理の重さ”ではなく、婦人科系の疾患が隠れているかもしれません。
その一つに、生理の量が多くなる症状(過多月経)を伴う「子宮筋腫」があります。
子宮筋腫は30歳以上の女性の約20〜30%にみられる、とても身近な病気です。
しかし、つらい症状があっても「体質だから」と受診していない方が多いのが現状です。
筋腫は大きくなると、痛みはなくても下腹部がポッコリと突き出したり、何かが触れると感じられたりすることもあります。生理がつらいだけでなく、将来的な不妊の原因になる可能性もあります。
今回は子宮筋腫の基礎知識や治療の選択肢についてご紹介します。気になる症状がある方は、ぜひ一度受診を検討してくださいね。
子宮筋腫は、できる場所にもよりますが、経血の量が多くなることがあります。 婦人科を受診して初めて「自分は量が多かったんだ!」と気づく方も少なくありません。
ここで、ご自身の経血量についてチェックしてみましょう。
生理の量が多い状態を「過多月経」といいます。
その基準は、一般的に以下の表が目安になります。ただ、あくまで目安ですので、何度もトイレに行く必要がある、常に漏れが気になるといった悩みがあれば、ぜひ一度医師に相談しましょう。

・ナプキンやタンポンを交換するとき、血の量や広がり方で点数を付けます。
・図のような状態の回数をカウントします。
・小さい塊は約1.8cm(1円玉より少し小さい程度)、大きい塊は約2.7cm(10円玉より少し大きい程度)が目安です。
・それぞれの点数と回数を掛け合わせ、生理期間の合計点数を出します。
・一般的には、合計が100ポイントを超えると「過多月経」と判断されます(基準は論文(人種など)により多少前後します)。
(参考※1)
子宮筋腫は、子宮の筋肉にできる“コブ”のような良性の腫瘍です。
“腫瘍”と聞くと驚かれるかもしれませんが、ほとんどの場合が「がん」ではありません。
ただし、放置すると以下のような症状により日常生活に大きな影響を与えることがあります。
・経血量の増加(過多月経)
・強い月経痛
・貧血(動悸、息切れ、だるさ)
・下腹部の圧迫感(頻尿や便秘の原因になることも)
特に30〜40代は、仕事や家庭、育児などで多忙を極める時期。体の不調を後回しにしがちですが、重度の貧血になると日常生活そのものが困難になることもあります。
子宮筋腫は、筋腫ができる場所や大きさによって症状が大きく異なります。

① 粘膜下筋腫:子宮筋腫の中で5~10%程度の割合。子宮の内側にできる。出血量が増えやすく、不妊症や不育症の原因になる可能性がある
②筋層内筋腫:約70%と最も多いタイプ。子宮の筋肉の中にできる。大きさや場所によって出血が増えることも。
③漿膜(しょうまく)下筋腫:子宮の外側にできる。大きくなるまで症状が出にくいが、大きさや場所によっては、筋腫の根元がねじれると激痛を伴うことがあります。
(参考※2)
「婦人科はハードルが高い」「手術になったら怖い」こうした不安が、受診を遅らせる大きな理由です。
しかし現在は、治療の選択肢が大きく広がっています。
子宮筋腫の治療というと「手術で取る!」と聞いて怖くなったという方もいらっしゃるかもしれません。けれど実際には、まず薬で症状をコントロールするケースが多くあります。
貧血があるか、お腹の圧迫感、年齢、妊娠の希望や不妊治療の状況など色々なことを考えて治療が行われます。
薬物療法の目的は、生理痛をやわらげる①、経血量を減らす②③、貧血を改善する④、手術の必要性を見極める⑤など、生活の質(QOL)を守ることにあります。
強い生理痛がある場合、まず用いられるのが鎮痛薬です。代表的な成分には、ロキソプロフェン、イブプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)があります。
これらは、痛みの原因となるプロスタグランジンが作られるのを抑え、月経痛を軽減します。痛みが強くなってからではなく、痛みがでそう、または出はじめのプロスタグランジンがまだ少ししか作られていないうちに服用する方が効果的です。
ただし、鎮痛薬だけでは出血量そのものを減らすことはできません。
毎月たくさん飲まなければ辛いのであれば、医師と相談して他の治療法も考えられます。
子宮筋腫は女性ホルモン(エストロゲン)の影響を受けて大きくなります。そのため、ホルモンの働きを調整する薬が治療の中心になります。卵巣からの女性ホルモンの分泌を抑えるお薬には、主に以下の種類があります。
【GnRHアンタゴニスト(新しいタイプの内服薬)】
従来の注射薬とは異なり、飲み薬で治療できる点が大きな特徴です。
・レルゴリクス(レルミナ錠)(あすか製薬)
1日1回食前の内服で、卵巣からのエストロゲン分泌を速やかに抑えます。その結果、経血量を減らし、月経痛を軽減し、筋腫の縮小も期待されます。しっかりとした症状改善を優先したい場面で用いられます。
・リンザゴリクス(イセルティ錠)(キッセイ薬品工業)
2026年3月に国内で発売された最新の選択肢です。1日1回の服用はレルミナ錠と同じですが、こちらは食前、食後といった服用タイミングの制限はなく、ライフスタイル合わせて服用することができるのが特徴です。
【GnRHアナログ(従来からの標準治療)】
・ブセレリン(スプレキュアなど)(持田製薬)
鼻にスプレーするタイプ(点鼻薬)です。注射の痛みが苦手な方や、毎日の自己管理ができる方に選ばれる選択肢です。
・ナファレリン(ナサニールなど)(ファイザー)
スプレキュア同様、鼻にスプレーする点鼻薬です。
・リュープロレリン酢酸塩(リュープリンなど)(武田薬品工業)
注射製剤として用いられ、エストロゲンを一時的に低下させます。筋腫縮小効果が期待でき、手術前の前治療として使われることもあります。
※使用上の注意点:6ヶ月の制限
これらのGnRH製剤(レルミナ、イセルティ、リュープリン、スプレキュア、ナサニール等)は、いずれも長期間の使用が骨密度の低下を招く恐れがあるため、原則として「最大6ヶ月まで」という使用期間の制限があります。副作用として、ほてり、発汗、頭痛などの更年期様症状が出ることがあるため、体調に合わせた管理が必要です。しばらく使用を休んで再開することもありますが、医師の診断のもとで行われますので相談してください。
月経周期を整え、出血量や痛みを軽減します。筋腫自体を小さくするわけではありませんが、「毎月を楽にする」ための大切な選択肢です。
・低用量ピル(LEP):排卵を抑え、子宮内膜が厚くなるのを防ぐため、経血量が減り、生理痛も軽くなります。
・黄体ホルモン剤(ジエノゲストなど):子宮内膜が増えるのを抑えることで、痛みを和らげたり生理を止めたりします。
・子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナなど):子宮内に小さな器具を留置し、そこから持続的にホルモンを放出させて経血量を劇的に減らします。一度装着すれば最長5年間効果が続きます。(ただ、子宮筋腫の場所や状況によっては適応が難しいこともあります)
過多月経が続くと、鉄欠乏性貧血を合併することがあります。鉄剤を補充することで、動悸や息切れ、強い倦怠感を改善していく治療です。これは、色々な薬と並行して行うことが多いです。
筋腫のみを取り除く方法や、子宮全摘術などもあります。すべての方がすぐに手術になるわけではありません。症状やライフステージに応じて、医師と相談しながら選択できます。
こうした治療を組み合わせながら、その人のライフステージに合った方法を選んでいきます。
「生理が重いのは自分の体質」とあきらめず、まずは医師に相談してみてください。薬剤師でも婦人科でどのような診察・治療をするのかなどお知らせするなど、受診のお力になれるかと思います。
最近では、プレコンセプションケア(Preconception care略して「プレコン」)という用語も出てきました。(※3)
ざっくりですが、妊娠を希望している女性も男性も将来の妊娠・出産を見据えて、健康的に過ごせるように生活習慣などを見直していきましょう!と、いう意味です。
妊娠・出産前から将来の自分の体を守るためにも、18歳の成人前後までにはぜひ一度婦人科に行ってほしいと思います。そして20歳を超えたら最低でも2年に1度は婦人科健診を受けていただきたいです。
もちろん30代以上の方も、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮頸がんなどもありますので、ぜひかかりつけの婦人科を見つけて、定期的に相談に行けるといいですね。
自分に合ったケアを知ることで、生理に振り回されない健やかな毎日を過ごせるようになります。
生理の出血量や貧血など何か気になる方は、まずは一歩、婦人科の初診予約をしてみてください。
参考
※1
Pictorial Blood Loss Assessment Chart (PBAC) 月経量のスコアリング
Ko JK, et al. Hong Kong Med J. 2021;27(6):399-404. 等を参考に作成
※2
1)綾部琢哉, 板倉敦夫 編集. 標準産科婦人科学 第5版 2021: P.153, 医学書院
2)百枝幹雄ほか. 看護学テキストNiCE 病態・治療論[13]産科婦人科疾患 改訂第2版 2025: P.121-122, 南江堂
3)医療情報科学研究所 編. 病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第4版 2023: P.135, メディックメディア
※3
プレコンセプションケア(東京都福祉局)
WHOの定義:「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」
この記事のライター
薬剤師
三上彰貴子
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外資系製薬会社勤務後、慶應義塾大学にてMBA取得。卒業後、朝日アーサー・アンダーセン(現PWC)にて主に医療分野のコンサルティングを手がける。2005年より独立し、株式会社A.M.C代表取締役となり、製薬会社・化粧品会社関連のマーケティング、人財育成セミナーなどを行う。現在は、薬科大学博士課程にて研究も行う。その他、薬局薬剤師、登録販売者向けの講師、薬科大学非常勤講師としても活躍中。
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