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もうその家に「帰る」必然性がないんです。子どもが独立して家を出たら、私たち【不倫の精算#48】後編

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目次

後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。

不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

 

「だって、子どもがいないのに、なんでその家に帰らないとならないの?」

「あのね」

 

ふと思い出したように、Eさんがフォークを持つ手を止めてこちらを見た。

 

「息子がね、大学で東京に行ったのよ」

 

Eさんは今の夫と20代の前半で結婚し、すぐに妊娠して若い頃は家事と育児中心だった、という話は聞いていた。

 

「あ、もうそんなに大きくなられたのですね」

 

Eさんの言葉に感じる違和感の一つに、ひとり息子が出てこないこともあったが、これで解決した。

大学への進学を希望して高校を選んだ息子さんは、寮生活だったはずだ。

「息子が寮に入ってから、旦那とは本当に口をきかなくなったわ」

とEさんは以前話していたが、結局家に戻ることなく手を離れたのだ。

 

おめでとうございます、と言うこちらに「がんばったのはあの子だから」とひらひらと手を振って返すと、

 

「あの子がね、行きたかった大学に無事に合格して、それも彼はすごく喜んでくれたのよ。

そういうのもあって、自分の家よりあの人のところに帰るのが居心地よくなったのかも」

 

と視線を皿に戻しながらEさんは言った。

 

既婚者でありながら、夫と住む家がありながら、不倫相手との時間を選ぶ。

それを妨げる人が誰もいないのが、Eさんの現実だった。

 

でも、その暮らし、ハッピーなことばかりじゃないですよね?

それからしばらく、Eさんと彼の半同棲生活についての話が続いた。

 

Eさんが自分の家に帰るのは週に4日ほど、そのときは「いつも通りに家事をして、自分の部屋で寝る」生活で、平日の1日と週末の2日を不倫相手の部屋で過ごしていた。

 

夫の話は出て来ない。

家での二人分の食事や洗濯について触れても、「旦那は」と様子を語る気配はない。

そればかり気になった。

 

「一応ね、結婚しているからさ」

 

ナプキンで口元を抑え、軽い調子でそう言うEさんがこちらの視線を外したことには気がついていた。

 

「……順調ならいい、のでしょうかね」

 

慎重に言葉を選ぶ。

Eさんは、夫について尋ねることを全身で拒絶していた。

話題に出さない、登場させないのは「いないものとして語れ」のサインだ。

 

「なるようにしかならないと思うのよ」

 

皿が下げられ、デザートのシフォンケーキとコーヒーが運ばれてきて、Eさんはその日はじめてため息をついた。

 

「……」

 

想像してみる。

夫がいる家と、不倫相手の男性と過ごす部屋。

ドアノブに指をかけるときのテンション。

行動の痕跡がわかるシンクのなかを見るときの気持ち。

乱れたシーツを視界に入れて湧き上がる感情。

 

ふたつの家を行き来するEさんがその都度受け取るのは、不安定で両極端な思いではないのか。

 

それでも、流れに任せて何も決めようとしないから、「なるようにしかならない」という言葉が出る。

 

「あ、チョコだ。

美味しそうですね」

 

普段から滅多に食べたいと思わない甘いケーキにデザートフォークを突き刺しながら、視線を落としてそう言った。

 

シフォンケーキ、好きだったのねと白々しく言葉を返すEさんの表情はわからなかった。

 

いずれ目をそらせなくなる「選択の瞬間」

コーヒーも飲み終わり、そろそろ出ようかと思った頃、Eさんが口を開いた。

 

「ねえ、私のしていること、やっぱり軽蔑する?」

 

その声に不安を感じ取って、顔をあげると正面からEさんを見た。

 

「いいえ」

 

きっぱりとした声に安心してくれたのか、少しこわばっているように見えたEさんの頬が緩むのがわかった。

 

「ごめんなさい」

 

視線をマスクケースに移しながら、Eさんの言葉が聞こえた。

 

「何がですか」

 

「……こんな話で」

 

「私が聞かせてくださいとお願いしたのですよ。

こちらこそ、ありがとうございます」

 

笑顔でそう言ったのは、本心だった。

どんな話であれ、それを教えてくれたことに感謝するのがこちらの筋だ。

 

ただ。

 

「いずれ、決めないといけなくなるのかもですね」

 

そう続けると、同じようにマスクを手に取っていたEさんが、無言でこちらを見た。

 

「なるように、なったときに」

 

「……」

 

その瞬間は必ず訪れる。

ふたりの男の間を移動し続ける生き方が、死ぬまで可能だとは思えない。

 

夫を生活から除外したところで、夫婦の枠からは逃げられないのだ。

今後、たとえば子どもが結婚するときに「その状態」で妻の仮面をかぶることができるのか、疑問だった。

 

「……」

 

Eさんは答えない。

 

「選択の瞬間」に誰よりも怯えているのはこの人なのだと、伝票を掴みながら思った。

 

 

 


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この記事のライター

OTONA SALONE|オトナサローネ

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