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「どう見ても民家」「おばあちゃんちみたい」。先日、サッカークラスタの間で一躍注目を集めたのが、サッカーJ2のV・ファーレン長崎のクラブハウス。確かに見た目は家のようだが、実際はどうなっているのか。民家をクラブハウスに転用した経緯を取材してきた。
日本初! 伝統的な日本家屋をクラブハウスに改装
V・ファーレン長崎のクラブハウスがあるのは、長崎市街から車で20分ほどののどかなエリア。目の前に海があり、美しく整備されたグラウンドで、選手が日々練習に打ち込んでいる。話題のクラブハウスは、グラウンド側から見ると1棟のようだが、実は2棟あり、母屋は選手が使い、離れは監督やスタッフが使用している。
詳細な築年数は不明ながら、40〜50年程度と思われ、外から見ても「立派」のひと言。漆喰仕上げやそびえる屋根瓦からは、もともとは漁師の網元の住まいだったのでは……と推測される。では、なぜサッカークラブが、この民家をクラブハウスとして使用することになったのだろうか。
「そもそも、弊クラブは専用練習グラウンドがなく、長崎県内の競技場を点々としながら練習を重ねてきました。しかし、2014年は長崎国体が開催されたことから、今まで借りることができた練習場が借りられなくなってしまったんです。そんなとき、スポンサー各社、関係者のご協力もあり、なんとかグラウンドを確保することができました」と話すのは、V・ファーレン長崎で広報を担当する新ヶ江周二郎さん。
しかし、グラウンドは確保できたものの、クラブハウスはなく、選手は近隣のコミュニティセンターのシャワーを借りて、練習後の汗を流していたのだとか。そこでクラブスタッフが目をつけたのがグラウンドに接した民家。調べていくうちに空き家ということが判明したため、クラブハウスへのリフォーム計画が進められていくこととなった。そして、ひとまず室内のリフォームが終わり、この春から晴れてクラブハウスとして使用できるようになったのだ。
長年、数多くのお宅を取材しているが、こんな純日本家屋は久しぶり、というより初めてに近いかもしれない。めっきり減ってしまったもんなーー、と筆者はひとりで大興奮。さっそく中を案内していただくことに。以下、写真で部屋のようすをご見学あれ。
V・ファーレン長崎は、予算の都合もあり、既存の日本家屋を改装したクラブハウスとなったが、選手たちはというと、「やっと私物が置けるようになった」「選手同士での会話が増えた」「練習後すぐに体がケアできるようになった」などと好評。特に外国人選手は日本家屋に興味津々のようで、利用開始日にはツイッターでそのようすをアップしていたそう。サポーターの興味も集めているようで、見学会を開く可能性もあるそうだ。
日本代表監督も務めたオシム氏は「古い井戸があります。そこには水が少し残っています。それなのに、古い井戸を完全に捨てて新しい井戸を掘りますか? 古い井戸を使いながら、新しい井戸を掘ればいいんです」との名言を残しているが、筆者に言わせれば建物も同じだ。
日本の一戸建ては、耐震性の問題もあり平均40〜50年で壊されてしまうことが多い。だが、今回のように職人のワザを駆使してつくられた日本家屋は、まだまだ利用できるように思える。というより、こんな立派な建材を使った建物を放置・壊してしまっては、大きな損失ではないか。クラブハウスとしての活用は珍しいケースかもしれないが、今後もこうした空き家の利活用が進むことを願ってやまない。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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