/
土をメインとして積み上げてつくる建築物があるらしい。その名は「アースバッグドーム」。イランの建築家が考案したこの工法を日本で広めている第一人者、日本アースバッグ協会の中野さんにアースバッグドームの魅力を聞いてみた。「アースバッグドーム」とは一体何なのか? という質問に、「土を主体とした素材でつくる、曲線による建造物」と答えてくれた中野さん。筒状の袋に土を入れて、アーチ状に積み上げて建てられるドーム型のこの建物は、地震にも強く、震度5〜6でもビクともしない。当然土でできているので火災にも強く、台風や竜巻などの風にも強いという。
「イランの高層建築家ナダー・カリリ氏により1998年に確立されたこの工法は、圧縮実験、強度実験でも良好な結果が出て、アメリカ・カリフォルニア州の建築法でも認められている建て方の建造物です」
土にセメントを10%程度混ぜて積み上げるのが基本のようだが、土に消石灰を混ぜて使うと岩のようになり、ローマの遺跡のように何百年経っても壊れない頑丈さが得られるという。
「アースバッグドームにはホルミシス効果という土や鉱石、セラミックなどによる癒やし効果があります。ほかにも電磁波を遮断する効果や、家の上部に換気口をつくることで風の通りが上に向かって流れるため熱効率も良く、冬は暖かく夏は涼しい建物です」
ドームは直径約4.5m〜5.5m程度で、1番大きいアースバッグドームでは11個のドームが連結されたものもある。建築期間も8名で1つのドームを1週間から10日ほどで完成するようだ。
「残念ながら日本の建築法では、都市計画区域外エリアにしか建てることができませんが、そういう場所であれば家を建てる素材や環境には申し分ありません」
日本の建築法とこのアースバッグドームの関係について、全くの個人的見解と前置きしながらも、中野さんは次のように教えてくれた。
「地震用シェルターや防空壕のようなものとして、自宅の敷地内に建てるのであれば問題はありません。ドーム状なので音響効果が素晴らしく、楽器の演奏などには最適です」
屋根材に瓦など、一般的な屋根素材を使う円筒状の工法もあり、現在工務店などがアースバッグドームの技術を教えて欲しいと勉強に来たりしているそうだ。
和歌山県や熊本県、沖縄県、静岡県伊豆の国市などには実際のアースバッグドームがあり、ワークショップもやっているので興味があれば一度訪れてみては?
●取材協力この記事のライター
SUUMO
172
『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
ライフスタイルの人気ランキング
新着
カテゴリ
公式アカウント