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後ろ指をさされる関係とわかっていても、やめられない不毛なつながり。
不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。

Fさんは46歳、20代の頃に離婚して以来「再婚は考えずに生きてきた」と話す。
地元でもそこそこ大きな会社の総務で働きながら、両親と共に実家に住んでいるため「生活費には困らないから」といつも口にしていたと思う。
再婚はしないが彼氏の話はたまに出てきて、シングルとして恋愛を楽しんでいるのだろうなと思っていた。
だから、「実はいま不倫しているの」と打ち明けられたときは、まず「どうして」と思った。夫のモラルハラスメントに耐えることもなく、育児に追われることもなく、堂々と太陽の下を歩ける恋愛ができるはずだからだ。
そう言うと、
「……あなたは、相手は誰かの前にそんなことを気にするのね」
と鼻白んだような調子で返され、彼女の浮ついた気持ちに水を差したことに気づいた。
「まあ、いいわ。
別にいいじゃない、こんな年になって今さら清い関係ばかりじゃないわよ」
そんなふうに続けてから、Fさんは視線を外すとバッグに手を入れ、タバコを取り出した。
午後のカフェ、平日のテラス席に人はおらず、テーブルの灰皿を引き寄せながらFさんが言った。
「不倫でもバレなきゃいいのよ」
改めて「どんな人なのですか?」と聞くと、待ってましたとばかりに笑顔を浮かべたFさんは
「よく行くバーのマスターなの。
ほら、前にあなたを連れていった、◯◯町にある3階の」
と勢いよく言った。
そのバーは、周りに飲食店の類がない静かな住宅街のビルに入っており、こんなところで営業できるのかと驚いたことを覚えている。
そのとき、「だからいいのよ、うるさくないしこの店が好きな人しか来ないでしょ」と、今と同じように弾んだ声で木製のドアを押していたFさんを思い出した。
マスターはどんな男性だったか記憶が曖昧だが、低い声色で「お腹は空いてませんか?」と尋ねてきたのではなかったか。
彼は、既婚者だったのだ。
「そうなのですね。
いつの間にそんなことに」
と返すと、
「うーん、流れに身を任せていたらこうなった、って感じかな」
と空に向かって煙を吐いてFさんが答えた。
「流れ」
首を傾げて繰り返すこちらを見て、ふふっと笑う。
「ま、私が独身だからね。
こっちさえOKなら、男なら誰だって嫁以外の女を抱きたくなるものじゃないの?」
「……」
それを肯定はできないが、配偶者のいない空間でよく顔を合わせる独身女性と親しくなり、“そういう流れ”になるかもしれないことは、想像ができた。
「最初はね、疑似恋愛みたいな感じだったのだけど」
疑似恋愛。
それが不倫だとしても、落ちていくものだろうか。
独身である彼女は、自分の側に止める要因がないことで、「流れ」に乗ったのか。
「そういう関係になっても、普通にお店って行けるものですか?」
サービス業とその客の立場ではじまる不倫はいくつか知っているが、たいていは仲がこじれて気まずくなればお店そのものから足が遠ざかる。いつまでも不倫を続けながらお店にも通う、というパターンを知らなかった。
短くなったタバコを灰皿に押し付けながら、Fさんが言った。
「そうね、私は行けるわね。
というか、お金を落としたいじゃない、彼のために」
「それが当然」な調子で返ってきた言葉に、先ほど出た「疑似恋愛」の単語が急に虚しい響きで蘇った。
「ああ、売上に協力したい的な」
「そうそう」
好きな女性にお金を使わせることに違和感を持たない男って、どうなのだろうか。
その代償として肉体関係を用意するこんなケースは決して珍しくなく、疑似恋愛にのぼせ上がるFさんにふと不安を覚えた。
「好きなのですよね?
彼のことが」
そう言うと、目を丸くして顔を突き出し、
「もちろんよ。
そうじゃなかったらホテルなんて行かないわよ」
と高い声で返すFさんの様子は、その関係はリスクのある不倫なのだという事実を忘れているようだった。
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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