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「雑木林に住む」が実現? 成長するユニークな賃貸住宅

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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「雑木林に住む」が実現? 成長するユニークな賃貸住宅(画像提供:(株)グローバルセンター)

香川県高松市の栗林公園の近く、峰山の麓に位置する宮脇町。小高い山に沿うように埋もれている、驚きの賃貸住宅がある。その名は「宮脇町ぐりんど」。10年後には植えた苗木が、峰山と一体となった雑木林に成長し、雑木林の中に住むことになるという。どういうことか?詳しく見ていこう。

5層が段々に並び、総戸数7戸の賃貸住宅を形成

まず、波のように連なる「宮脇町ぐりんど」がどうなっているか、説明しよう。

俯瞰図(ふかん)図を見ると分かりやすいが、5層の連層建物になっている。5階建ての集合住宅を1層ごとにずらして並べて、地中に埋めているような構造だ。1層と2層は半分に仕切って、単身者向けの1LDK(27.52m2)の「木(moku)」と呼ばれる住戸を4戸、3層と4層はファミリー向けの2LDK(72.75m2)の「林(rin)」と呼ばれる住戸を2戸、5層は一部を2階建てのメゾネットにした3LDKの「森(shin)」と呼ばれる住戸を1戸、計7戸の構成となっている。

いったい、なぜこんなユニークな連層賃貸住宅が誕生したのだろう?

【画像1】宮脇町ぐりんどの俯瞰図(画像提供:(株)グローバルセンター)

【画像1】宮脇町ぐりんどの俯瞰図(画像提供:(株)グローバルセンター)

傾斜地をうまく活かし、自然の持つ力をさまざまに利用

賃貸住宅が建つ前は、かつて建っていた住宅が撤去されたままの荒れた傾斜地だった。傾斜地に家を建てるには造成工事が必要になるなどの理由から、なかなか買い手がつかずに値下げが続いていた。そこへ、以前から土地を探していたオーナーが、長田慶太建築要素の長田慶太さんに設計について相談をしたうえで、結果として土地を買い取ったという。

設計をした長田さんは、最初に宮脇町の街の一角にある土地を見たとき、街にも山にも面していながら、そのいずれでもない中間の印象を受けた。傾斜地を造成して通常の住宅を建てるのは、造成に費用もかかるうえ、擁壁(斜面の土砂がくずれるのを防ぐために設ける土留めの壁)を大きくつくるなど、「街に対しても大地に対しても違和感があった」という。そこで、「傾斜地にそっと建物を置いてあげる」ような発想が生まれたのだそうだ。

鉄筋コンクリートの構造体の外壁が土留めの役割を果たすように、地盤の安定に配慮し、なおかつ天井、床、壁とコンクリートの間に魔法びんのように空気層を設けることで、湿気の調節を行うなど、さまざまな工夫がされている。

上層階の庭にもなる各層の屋上を緑化しているほか、地熱を利用するなど、自然エネルギーを活用している。地中深くなるほど外気の影響を受けずに、安定した快適な温度(15℃など)になる。各層の構造体のほとんどが土に接しているため、地熱によって室内の気温が安定する。さらに、地熱を活用したヒートクールチューブを導入。これは、給気塔から取り込んだ外気が、地下に埋めたチューブ(ダクト)を通る間に、夏は冷やされ、冬は暖められて室内に流れるという仕組みだ。

間口の広さが開放感を演出。傾斜地ならではの眺望も

では、気になる住宅の中の様子を見ていこう。
大きな特徴は、細長い形状であるために、間口が広くなっていることだろう。間口の広さを活かして、リビングいっぱいにサッシを設けるなど、開放的な空間になっている。屋上緑化された庭園をのぞみながら、上層に行くほど街を見下ろす眺望が開けるという不思議な居住空間が実現している。

一方で、細長い形状ゆえに、「林」の場合では洋室(9.7畳)が細長くなり、キッチンの奥にもう一つの洋室(8.2畳)があるなど、一般的な間取りとはかなり異なっている。住まい手がうまく使いこなすことも必要だろう。

【画像2】左:「林」(2LDK)の玄関。右:浴室には天窓が設けられている(画像提供:(株)グローバルセンター)

【画像2】左:「林」(2LDK)の玄関。右:浴室には天窓が設けられている(画像提供:(株)グローバルセンター)

【画像3】左:「林」(2LDK)のLDKと洋室。右:テラス(画像提供:(株)グローバルセンター)

【画像3】左:「林」(2LDK)のLDKと洋室。右:テラス(画像提供:(株)グローバルセンター)

長田さんによると、峰山はクヌギやカシなどの雑木林で、この山に生えている植物を植えることで、山の環境を持ち込みたいと考えたという。屋上緑化部分と地面が連続しているので、微生物が移動して土が循環され、種が運ばれて成長するなど、メンテナンスをしなくても自然の力で木々が育つことを狙っている。10年以上の年月をかけて雑木林に育ち、ようやくこの住宅が完成するというのだ。

さて、ヒートクールチューブに使われる給気塔がキノコ型であることを活用して、長田さんは近隣の子どもたちを招いて、ペインティングのワークショップを行った。「ぐりんどのつくり手として、子どもたちに参加してもらうことで、成長していくこの家をともに見守ってもらえたらいいと考えました」と長田さん。

着工から竣工まで2年半と通常より長い工期で、さらに10年以上の年月をかけて雑木林に育てていくという時間のかかる計画だ。子どもたちは、自分の成長と家の成長を重ね合わせて見守ってくれることだろう。

【画像4】左:ワークショップでペインティングされた給気塔。(撮影:長田慶太建築要素) 右:GREEN+土、どんぐりのアナグラムなどをヒントに名づけられたぐりんど(GREENDO)の桜が咲いた(画像提供:(株)グローバルセンター)

【画像4】左:ワークショップでペインティングされた給気塔。(撮影:長田慶太建築要素) 右:GREEN+土、どんぐりのアナグラムなどをヒントに名づけられたぐりんど(GREENDO)の桜が咲いた(画像提供:(株)グローバルセンター)

●宮脇町ぐりんどのホームページ
HP:http://www.green-do.info/ 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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この記事のライター

SUUMO

『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。

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