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生活保護を理由に入居差別。賃貸業界の負の解消に取り組む自立サポートセンター「もやい」の願い

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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生活困窮者に住まいを! 生活が苦しくても自分の住まいを得られる社会を目指す~自立生活サポートセンター・もやいの挑戦

長引くコロナ禍で、仕事を失ったり、家賃を支払えない人が増えています。また以前から、生活保護受給者を入居拒否する入居差別はありました。連帯保証人がいないなどの問題もあります。こういった生活困窮者の住まい探しのサポートを行っている自立生活サポートセンター・もやいに、生活困窮者の住まい探しの現状と入居支援などについて取材しました。

生活保護受給者の住まい探しは難しい。入居を希望しても断られる入居差別の実態コロナ禍で困窮が深まったため、2020年4月から臨時の相談会を開催。公的制度の利用のための支援や、宿泊費・生活費を提供するなどのサポートを行っている(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

コロナ禍で困窮が深まったため、2020年4月から臨時の相談会を開催。公的制度の利用のための支援や、宿泊費・生活費を提供するなどのサポートを行っている(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

自立生活サポートセンター・もやいの名前の由来は、「もやい結び」という船を港に係留するときや、登山や救助活動で安全を確保するときのロープの結び方を表す言葉です。“船と船をつなぎあわせること”“寄り添って共同でことをなすこと”という意味があり、「日本の貧困問題を社会的に解決する」という理念を表しています。2010年からもやいの活動に携わってきた理事長の大西連さんは、生活困窮者による問い合わせ件数がコロナ禍前に比べて1.5倍以上に増えているといいます。

メディアからのインタビューを受ける大西さん。2022年には、地方新聞46紙と共同通信社が選ぶ「地域再生大賞」の優秀賞にもやいが選ばれたが、「もやいが必要のない世界」を目指し発信を続けている(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

メディアからのインタビューを受ける大西さん。2022年には、地方新聞46紙と共同通信社が選ぶ「地域再生大賞」の優秀賞にもやいが選ばれたが、「もやいが必要のない世界」を目指し発信を続けている(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

生活困窮者とひとくくりにいっても、ネットカフェに泊まりながら派遣で働く若者や、パートナーのDVから避難してきた女性、低年金・無年金の高齢者などさまざまな人がいます。年代は、10代~70代と幅広く、男女比は6:4で男性が多いですが、年々女性の数も増えています。

「6000件/年の問い合わせには、『生活費が足りない』『仕事が見つからない』という生活に関する相談のほか『住むところが見つからない』という住まいに関する困りごとも寄せられます。賃貸住宅に入居を希望する場合、入居審査を受ける必要があります。もやいの設立当初、審査で重要視されていたのは、収入や支払い能力のある連帯保証人がいること。ホームレスで仕事がなかったり、連帯保証人が見つけられないと、審査に通りませんでした。近年では保証会社の利用が一般的なので連帯保証人は必須ではありませんが、親族等の緊急連絡先が必要です。緊急連絡先は連帯保証人とは異なり法的な責任を問われるものではありませんが、依頼できる先が見つからず物件申込ができないという相談は多く寄せられます。入居を希望しても、生活保護だからという理由で断られる入居差別もあります」(大西さん)

連帯保証人を引き受けるなど、生活困窮者の住まい探しをサポート

設立当初、野宿者支援を行うなかで、連帯保証人を見つけられず賃貸住宅に入居できない問題に直面したもやいは、連帯保証人を引き受ける入居支援「もやい保証」の取り組みをはじめました。今までに、もやいが連帯保証人になったのは、延べ2400世帯。宅建免許を取得した2018年以降は、仲介を行う「住まい結び」で生活困窮者の住まい探しをサポートしてきました。

入居支援チーム。左から川岸夕子さん、東あさかさん、伊藤かおりさん。入居者、大家さん、管理会社、それぞれの利害を調整しながら、支援の形を模索している(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

入居支援チーム。左から川岸夕子さん、東あさかさん、伊藤かおりさん。入居者、大家さん、管理会社、それぞれの利害を調整しながら、支援の形を模索している(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

全体の問い合わせのうち、住まいが見つからない相談者に対し、身分証や携帯電話がない場合の取得方法、収入がなくて家賃が払えない場合の生活保護の利用についてアドバイスしています。

仲介担当の東あさかさんは、入居差別があるなかで住まいを探す厳しさを実感しています。

「生活相談後に希望があれば、不動産情報サイトを使って物件を調べ、不動産会社に問い合わせをします。生活保護を利用している方だと伝えると、当初は7割断られる状況でした。『生活保護相談可』という物件でも『受給理由』によるというケースは多く、精神障害のある方は断られることが多いという二重の差別もあります。入居拒否の理由はさまざまですが、『無職だと生活サイクルがほかの居住者と合わない』と心配される大家さんもいます。明確な理由はなく『トラブルを起こすのでは』という先入観もあるようです。一般の人が、さまざまな不動産情報サイトにアクセスし、自分で住まいを選べるのに対し、生活困窮者の選択肢はとても少ないのです」(東さん)

都営住宅や市営住宅など公的な住宅は老朽化していたり供給戸数が限られており、エリアによっては選択肢にならない場合も多いのです。行政は、生活困窮者向けの居住支援として、住宅セーフティネット制度を2017年にスタート。高齢者、障害者、子育て世帯など住宅の確保に配慮が必要な人が今後増加すると見込み、民間の空き家・空き室を活用して供給を促す取り組みです。「セーフティネット住宅情報提供システム」から誰でも検索できるようになっています。さらに2021年7月には、住むところに不安を抱えている人の相談窓口「すまこま。」のサイトがオープン。最近では、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(通称:住宅セーフティネット法)に基づき、都道府県が指定した団体(居住支援法人)が居住支援を行えるようになりました。

もやいでは、2017年から毎年、厚生労働省に対して、「生活保護制度の改善および適正な実施に関する要望書」を提出している(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

もやいでは、2017年から毎年、厚生労働省に対して、「生活保護制度の改善および適正な実施に関する要望」書を提出している(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

「社会的意識の高まりという面での前進はあると思いますが、『セーフティネット住宅情報提供システム』は、登録件数も少なく相談現場での現実的な選択肢にはなりません。『すまこま。』は、電話・メールなどからの相談を受けて、最寄りの該当窓口へつなぐもの。仲介は行っていません。生活保護の住宅扶助内では、新宿区や千代田区など家賃が高いエリアで物件探しが難しい実態もあります」(東さん)

生活困窮者に向けた居住支援は少しずつ広がりを見せていますが、まだ課題が山積みです。

「制度があっても現実に即していない場合があるのです。住宅確保給付金は、離職・廃業や所得の減少が受給条件の一つとなっているので、慢性的貧困に陥っているワーキングプアは使えません。月々の家賃の支払い能力があっても、転居のための初期費用が用意できず、やむなくネットカフェ暮らしをしている人もいます。公的補助による転居支援が必要とされています」(大西さん)

サロンや誰でも入れる互助会「もやい結びの会」を運営。孤立しがちな生活困窮者を息の長い支援で支えるもやいの事務所内で、誰でも立ち寄れる交流サロン「サロン・ド・カフェ こもれび」を運営(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

もやいの事務所内で、誰でも立ち寄れる交流サロン「サロン・ド・カフェ こもれび」を運営(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

週替わりランチ・おやつ、飲み物を提供していた。現在はコロナ禍での活動を模索中(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

週替わりランチ・おやつ、飲み物を提供していた。現在はコロナ禍での活動を模索中(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

もやいでは、新たな取り組みとして、2020年に、住居がない人のためにシェルターの運営を開始。アパート型のシェルターに住民票をおいてマイナンバーカードなどの身分証明書を取得するなど態勢を整えた上で、賃貸住宅に移ってもらおうというものです。

期間限定のモデル事業としてスタートした「もやいシェルター」だが、コロナ禍で困窮が深まったと判断し、2022年度も継続している(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

期間限定のモデル事業としてスタートした「もやいシェルター」だが、コロナ禍で困窮が深まったと判断し、2022年度も継続している(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

保証人の担当をしている伊藤かおりさんは、「相談者との付き合いは、入居後の方が長い」と言います。

「不動産会社とトラブルがあれば間に入って対応をしています。入居しても、その後、孤立してしまう相談者もいますので、契約更新時には面談をするなどコミュニケーションを図っています。バースデーカードや年賀状、年4回の会報も郵送しています。会報には、切手不要のハガキを添え、近況を返信してもらえるよう工夫しています。コロナ禍に送ったお米には感謝の声が寄せられました」(伊藤さん)

「助けられるだけでなく、もやいの活動に参画するひとり」だと感じてほしいと、連帯保証人・緊急連絡先の引き受けを行った相談者は、すべて、『もやい結びの会』という互助会に属しています。もやいの事務所を開放した『サロン・ド・カフェ こもれび』や農業活動も行ってきました。今後、コロナ禍での交流をどうしていくか検討を進めています」

2021年4月にはじまった「もやい畑@藤沢」。藤沢市と協働して行っている。2021年度の開催回数は53回、延べ390名が参加。畑づくりをきっかけに新たな目標を見つける参加者も(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

2021年4月にはじまった「もやい畑@藤沢」。藤沢市と協働して行っている。2021年度の開催回数は53回、延べ390名が参加。畑づくりをきっかけに新たな目標を見つける参加者も(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

「もやい畑@藤沢」で収穫したじゃがいも。休憩時間は、持ち帰った野菜の食べ方などの会話で盛り上がる(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

「もやい畑@藤沢」で収穫したじゃがいも。休憩時間は、持ち帰った野菜の食べ方などの会話で盛り上がる(画像提供/自立生活サポートセンター・もやい)

「サロンや農業は自由参加です。ゆるく長く見守り続けるのがもやい流。『ここに来れば安心できる居場所があるんだ』と思ってもらえたら」と大西さん。

生活困窮者は遠い存在ではなく、身近に困っている人がいるかもしれません。「生活保護に先入観のある人も、知らずに出会っていたら、その人に違った印象を持ったでしょう。一面だけで判断しないでほしいのです」という東さんのメッセージが心に残っています。皆が安心して住めるように、関心を持ち続け、自分の意識から変えていくことが大切だと感じました。

●取材協力
・自立生活サポートセンター・もやい

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この記事のライター

SUUMO

『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。

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