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空き巣や強盗、ストーカーなど、物騒なニュースは後を絶たない。力の弱い女性を狙った事件も数多く、不安を抱く女性も多いことだろう。とはいえ、やはり自分の身を守るのは自分。今回は、「女性の防犯」にテーマを絞って専門家に話を聞いた。「人通りが多ければ狙われないとか、インターホンは出ないほうが安全とか、逆のことを思っている人が多い」。そう話すのは、防犯アドバイザーの京師(きょうし)美佳さん。京師さんは、住居・ネット・ストーカー・子どもなど、幅広いジャンルの防犯対策に詳しい、防犯のスペシャリストだ。
「オートロック=安心」。その油断が命取りになる
物件選びの際、オートロックや女性専用のマンションなどを選ぶ女性は少なくないだろう。不審者を多く侵入させないという点でオートロックは有効だが、だからといって、セキュリティが万全であるとは限らないと京師さんは話す。
「『オートロックだから安心』と思って、自室の鍵をかけずに在室していたり、ちょっとコンビニに行ったりする人は少なくありません。しかし最近では、鍵のこじ開けやガラスを割る侵入よりも、無施錠を狙った侵入が多くなっているので、注意が必要です」(京師さん、以下同)
特に、新生活がスタートするこの時期は、気が緩みがちだそう。
「仕事や学校で慣れない生活が続くこの時期は疲れているし、気が緩んでしまいます。家のことや細かいことにまで気が回らない人が多いのです。特に初めての一人暮らしだと、これまで親がしてくれていたので、戸締りを気に掛けない人もいます。仕事や学校で頭の中がいっぱいなのは分かりますが、最初だからこそ気を引き締めてもらいたいです」
また、「大金を持っているわけではない」「盗られるものは何もない」からと、無防備でいる女性の声もよく聞くが、これも大きな間違いだ。
「泥棒にも好みがあって、大金が欲しい人もいれば、貴金属を狙う人もいます。レディースマンションだと、簡単に換金できるブランド品が狙われやすいですし、男性の一人暮らしも、パソコンやゲーム機が対象になります。パスポートだって、1枚30万円で売買されることもあるのです。そう考えると、狙われるものは思っている以上にたくさんあります。特に、パソコンやスマートフォンを盗まれてしまうと、個人情報も漏れてしまいます。友だちに連絡されて、共有した写真を使って脅迫されたという事案もありますよ」
“鍵をかける”という行為。たったこれだけでも、犯罪に巻き込まれるのを防げるかもしれない。「オートロックだから」「盗られるようなものは何もない」と、ほんのちょっとの油断が命取りになることもあるのだ。
居留守は良くない?! 在宅中の来客対応は「スマホ」が役に立つ来客というのは、友だちだけとは限らない。勧誘や宅配業者など、まったくの赤の他人と接することもある。しつこい勧誘の対応は面倒だし、宅配業者になりすまして強盗に入るケースもあるため、居留守を使う人も多いのではないだろうか? しかし、「良くないのが、面倒だからとインターホンに出ずに居留守を使うこと」と、京師さん。いったい、なぜ?
「マンションなら、オートロックではじかれますが、一戸建てやアパートの場合、留守だと思って泥棒が侵入してくることがあります。もしそうなれば、正面はふさがれているので、窓から逃げるしかなくなります。高層階に住んでいたとしたら、逃げ場がなくなってしまいますよね。対応しないほうが安心だ、面倒だと思っている人も多いのですが、一旦は必ず対応してほしいです」
その上で大切なことは、「簡単に鍵を開けないこと」と京師さん。
「私は、在宅中でも「宅配ボックスに入れておいてください」とお願いしたり、担当がいつもと違う人ならドアロックやチェーンをしたままハンコを押して、足元に荷物を置いてもらって、エレベーターで下まで降りたことを確認してから荷物を入れるなどしています。もしも、なりすましの場合、侵入されるのが一番怖いので」
また、来客対応時には、スマホを常に持ち歩くことも対策のひとつだそう。
「女性はまず、逃げることが大事です。何かあったらトイレやお風呂など、一旦、鍵がかかるところに避難して、その後に110番をする。逃げ込んだものの、助けを呼べなくなっては意味がありません」
来客すべてが悪い人ではないし、いちいち気にしていたら気が休まらない。しかし、“いざというときのために”スマホを片手に対応する程度なら、すぐにでも始められそうだ。
セキュリティ強化 まずは100円ショップから始めよう!部屋のセキュリティを高めるにはどうしたら良いのか。いまいちピンとこない人もいるはず。そこで、簡単にできる対策も聞いてみたところ、「鍵を自分で取り付ける程度の安価なものから、ホームセキュリティの加入まで、自分でできるセキュリティ対策は幅広いですが、100円ショップにあるものでもできることがあります。何もしていないよりはマシです。補助錠やステッカーなどは100円ショップでも手に入りますよ」とのこと。
「泥棒は、鍵の部分のガラスを割って侵入することが多いですが、割ったときに開かなければ『補助錠が付いているな』と警戒します。補助錠がどこに付いているか探すには、音も出るし、時間もかかるので、泥棒もそのリスクまで負おうとはせず、十分な心理的効果を発揮することができるのです」
偽物感がある「防犯カメラ作動中」などのステッカーも同様に有効だ。
「『防犯カメラ作動中』ステッカーも、いかにも偽物だ、こんなの買っても意味がないと思うかもしれませんが、実は有効です。たしかに、泥棒も『偽物っぽいな』と思うでしょうが、『でもステッカーを貼るくらいだから、ここの住人はアラームくらい仕掛けているだろう』と考えるはずです。それなら、何も貼っていない家に侵入するほうがリスクは低いですよね。100円のシールを侮るなかれ。下見の段階で、侵入する側の優先度は低くなると思いますよ。あまりコストをかけられない人にオススメです」
また、最近では、帰る前に部屋の中が確認できるカメラや電子錠(どちらも3万円程度)もあるそう。しかも、スマホと連携して操作できるのだとか。
「賃貸の場合は、補助錠も勝手に取り付けられませんよね。でも、これらは工事不要で貼り付けるだけ。さらに、スマホで操作できる電子錠もあります。穴を開けるわけではないので、取り外して出て行けばいいだけ。賃貸でも安心です」
補助錠やステッカーは100~300円程度。窓に付けるアラームも1000円前後で買えるそう。高額なものでなくても、何もしていないよりはマシというもの。まずは手始めに、試してみてはいかがだろうか?
SNS投稿の際にも要注意! 画像の位置情報から場所が特定されてしまうセキュリティは、部屋の防犯対策に限ったことだけでなく、普段の行動のなかにも見直すべきポイントが有る。代表例が、SNSの画像投稿。散歩中に見つけた猫、行きつけのカフェなど、何気なくSNSに投稿している写真にも注意が必要だ。
「例えば、店名を出していなくても、写真に写っている景色で場所を特定されることもあります。料理やペットの写真でも、GPSをオフにしていなければ画像の情報から住所が特定できてしまうのです。また、『これから旅行に行きます』『遊園地に行きます』など、投稿してしまいがちですが、留守がバレますよ。この2つの情報を合わせれば、自宅は分かる、留守も分かる。これではいつ侵入されてもおかしくはありませんよね。基本的に、何事も事後報告にすると良いでしょう。SNSを使うなとは言いませんが、特定されたくなければ、GPSはオフにする。デジカメの写真も緯度や経度が付いているので、設定でそれらの情報が添付されないようにしましょう」
FacebookやTwitter、インスタグラムなど、気軽に楽しめるSNS。しかし、リスクもあることを知った上で利用するのが賢明だ。
「女性の場合、待ち伏せ強盗も少なくありません。物も盗みたいし、カード番号を聞き出してお金も欲しいし、もちろん体を狙われることもある」と京師さん。女性は、男性に比べ力も弱く、体格も小さいことが多い。何かあってからでは遅い。楽しい生活を送れるよう、新生活前にできる限りの対策を。
●取材協力この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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