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セックスがきらいなんです、という女性は案外多い。世間的には「すごくいいもの」とされている。なのに自分は好きではない。気持ちよくなったこともない。もしかすると自分はどこかおかしいのではないか、女性として何かが欠けているのではないか。そう思い悩む女性もいる、が、セックスはひとりでするものではない。
育った家庭の影響などで性についての忌避感が強いなどといった理由もあるだろう。けれど、本人がいくら好きになろうとしても、ほかならぬ相手によってそれが阻まれてしまうことがある。逆に、ずっとセックスを避けてきた女性が、パートナーが変わったことによって初めて快感を知ることもある。

その両方を経験しているのが、東北地方在住のアオイさん(44歳)だ。
アオイさんは、「初めての人」と結婚した。出会いは職場、本社から出向してきた彼は沢村一樹似のイケメンで、何人もの女性社員が彼との交際を望んでいた。どちらかというと目立たないタイプ、と自分のことを分析するアオイさんは当初、彼のことを遠巻きにして見ることしかできなかったが、共通の知人を介して少しずつ親しくなり、やがて交際に至った。25歳のときだった。
「それまでの私は奥手だったし、体型にコンプレックスもあって、まさか自分がセックスをする日がくるなんだ想像もしませんでした。生々しくて怖いもの、としか思っていなくて……。でも、自分にはもったいないくらいの人とつき合っているんだし、と勇気を出して彼を受け入れました。結婚して夫婦になるんだからしないほうがおかしい、という思いもありました。でも実際にしてみたところ、まったく気持ちよくなくて……次第に苦痛になっていきました」
その原因を、アオイさんは「自分に性の知識も経験も乏しすぎたから」とふり返る。たしかにそれは見当はずれでともいえないだろう。そうしたものは、ないよりあったほうが気持ちよさにつながりやすい。けれど、アオイさんの話を聞くうちに主な原因は別のところにあることがわかってくる。

「彼は性欲がとても強い人でした。結婚前も、会えば必ずする。私が体調を崩していても、お構いなしに求めてくる。私はただ終わるのを待っているだけ。体はたしかにつながっていますが、心はまったくつながっていないので、いつもむなしかったです。でも彼は女性にモテる人だったので、拒めば浮気される、私なんか捨てられるという不安から応じていました」
アオイさんは彼がベッドでどう振る舞っていたのかについては話さなかったが、身勝手だったことは容易に想像がつく。自分の快感だけしか考えない、セックスとは呼べないものだったに違いない。結婚して生活を共にしたら毎日のように求められるのだろうか……アオイさんの懸念は、意外な形で裏切られた。
「結婚して1年経つころには、ほとんどしなくなりました。というのも、その1年のあいだに、次から次へと私の知らなかったことが明らかになったからです。彼は無類のギャンブル好きで、消費者金融から多額の借金をしていて、姉が新興宗教に入信していました。それまで私が見ていたのは、嘘で塗り固められた姿でしかなかったんです。結婚後はすぐに子どもが欲しいと思っていたので私は仕事を辞めていたのですが、生活のためいくつかのパートをかけ持ちするようになりました。いくら働いても借金返済で消えてしまうのに、彼はそれでもギャンブルをやめなくて。私は精神的に追い詰められ、無理がたたって身体を壊し、子どもはもう望めなくなりました」
あこがれの男性、初めての男性との結婚生活は、アオイさんの心身をさんざん蝕んだ末に終わった。とても生真面目な性格で、だからこそひとりで背負いこんでしまった。そもそもセックスも「恋人なら、妻なら、受け入れるもの」と生真面目に応じ、苦痛な時間をひとりで耐えていた。
そんな彼女に、ある日…次ページ
そんなまじめなアオイさんが、離婚後、不倫の恋にはまってしまう。相手は、転職した職場での同僚で、3児の父親でもある男性・ケンジさん。当時38歳のアオイさんより6歳年下だった。
「結婚前に妻子のある男性とおつき合いしたことはないです。もともと頭がカタイといわれる性格なので、不倫=絶対的な悪だと思っていました。いまでも基本それは変わっていません。でも、というと言い訳がましいんですが、当時の私は離婚をし、その影響でたくさんのものを失って、表向きは何も変わっていないように見えてもどこか自暴自棄になっているところがありました。無意識のうちに刹那的な刺激を求めていて、そこに彼がいたんです」
よく笑う人だ、というのが彼に初めて会ったときの印象。周りを明るくし、誰からも慕われるような存在が職場にいるのはありがたい。アオイさんも彼に好感を持った。でもそれ以上のものではなかった、はずだった。
「彼は職場でも私への好意を隠そうとせず、周囲からも『ケンジさんはアオイさんに永遠の片想いをしているんですよね』とからかわれるほど。かといって手が早いというわけではなく、長いあいだ姉と弟のような関係を保っていました。彼が必死に自分をおさえようとしている様子がいじらしくて、最後は私からキスを誘いました」
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この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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