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この人に必要とされている–そう感じてはじまった不倫の恋がハルカさん(46歳)に残したものは、苦い思い出のほかにもうひとつあった。それは、セックスに対する強烈な好奇心。20代のころは快感を知らないままにゆきずりのセックスをくり返し、夫とは一児をもうけたもののその後セックスレス。不倫相手とのセックスで初めて快感を知った。38歳のときだった。
セックスには中毒性がある、とハルカさんはいう。一度気持ちよくなったら、何度でも気持ちよくなりたい。さらなる刺激を、無意識のうちに求めてしまう。

その日、ハルカさんは東京行きの特急電車に揺られていた。旅の目的は、有名なセックスセラピストとセックスをすること。
その男性は独自のセックスメソッドを編み出し、著書はベストセラーを記録した。当時は悩める男女にそのメソッドを伝えるためのスクールを開校していた。ハルカさんがそこでモニターを募っていると知りエントリーしたところ、当選の連絡があった。
「私は40代になっても一度もイッたことがなかったんです。不倫していたときそれに近い感覚はあったので、もっと知りたい、気持ちよさの頂点を知りたいという衝動にかられました。モニターとしてセラピストの先生の事務所を訪れ、まずはこれまでの男性遍歴を聞かれました。その後、同じフロアにある一室に案内されたのですが、そこだけ大きなベッドが置かれていてシャワールームもあって、まるでホテルみたいでした」

著書も読んだうえでその日を迎えたハルカさんにとって、テクニック自体は納得がいくものだった。女性の身体をていねいに扱うことを謳う人物だけに、これまでにない快感があった。けれど……。
「独自のテクニックで刺激されたとき、すごく痛かったんです。それを伝えたら彼は納得がいかないように首をかしげ、『それはあなたが精神的な問題を抱えているからじゃないの』といわれたんです。びっくりしましたね。こういうときは我慢してやりすごしたほうがよかったのかなと思いました」
期待を上回る体験ではなかったようだ。ハルカさんはその後、セラピストとさらに二度セックスをする。
「回を重ねるごとに私への扱いが雑になっていきました。三度目のときなんて、行為の途中に電話が鳴ったんですが、彼はそれに出て話しはじめたんです。あ、私、すごく軽く見られているんだなぁと気づきました。自分から望んで飛び込んだ世界ですが、セックスはやっぱり好きな人としたいなぁという結論に至りました」
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ハルカさんの性行動はときに驚くほど大胆だ。雑誌でヌードモデルを務めたこともある。憧れの写真家の被写体になる機会を得て、上京した。スタジオで衣服を脱ぐ段階になってはじめて、ヌードモデルは前日から下着をつけないのだと知った。跡が肌に残るからだ。ハルカさんの身体にはくっきりと跡が残っていて、しかしその写真家はそれがかえって生々しいと大喜びだった。
扇情的な内容も多いけれど、それらを話すときのハルカさんの表情には屈託のようなものが頻繁に顔をよぎる。セックスを心から楽しんでいるわけではないのではないか。罪悪感のようなものを抱いているのではないか。
ハルカさんには、思いあたる理由があった。
「中学生のとき、同級生の男子から性的暴行を受けました。美術部に入っていたんですが、ある日、部活が終わっあとの片づけ当番が私と彼で、そのときに押し倒されました。最初からそのつもりで計画を立てていたんだと思います。でも不思議なことに私、その男子のことをずっと忘れていたんですよ。30歳ぐらいになって仕事で偶然再会したのですが、嫌な感じはしたけれどそれが誰か思い出せなくて。『私のこと知ってます?』と聞いたら、知らないといわれました」
記憶が蘇ったのはつい最近のこと。自身の娘が、被害を受けたときの自分と同い年になったのがきっかけだった。
>>後編「自分はなぜこんなに自己肯定感が低いのだろう。『被害』という意識のないまま被害を受け続けてきた彼女は…」に続く
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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