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恋人が家族と幸福に過ごす時間をひたすら耐え、連絡を待ち続ける「不倫女性」。
どうして彼女たちは妻ある男を愛してしまったのか。
彼女たちは、幸福なのか。不幸なのか。
恋愛心理をただひたすら傾聴し続けたひろたかおりが迫る、「道ならぬ恋」の背景。
【不倫の精算 リバイバル2023】#5 前編
–「また彼とケンカしちゃって……」
Hさん(40歳)は、そう言うと肩をすくめて見せた。
あたたかいコーヒーの入った紙コップを取り上げたとき、左手にはまった結婚指輪が指に食い込んでいて少し窮屈そうなことに気がつく。「むくんでるね」と言うと、
「夕方はダメね、いつもこうなるの」
痛くて困ると言いながら、Hさんは指輪を外すとテーブルに置いた。白く跡の残る細い指は、彼女が既婚者となって長いことを無言で伝えてくる。
Hさんは医療事務の仕事をしている。結婚して8年になる夫と、子どもがふたり。息子たちが小学校にあがってから外で働くようになった。
そして、結婚生活より長い付き合いになるのが、独身の「彼」だった。正確には元カレだが、それを指摘すると「付き合い方が変わっただけで、私にとっては今も彼氏よ」と笑いながら言われたことがある。
今日は、その「彼氏」との約束の日だった。「ケンカするといつも次の約束とか平気ですっぽかす人だから、ひとりで待つのがつらくて」という理由で呼び出されたとき、何とも都合よく扱われたものだと思ったが、本当は不安でひとりで過ごしたくないのだろうことは、わかっていた。
ケンカの原因は、Hさんが彼に「もっと会いたい」と不満をぶつけたことだった。
「いつものことだね」と呆れながら言うと、
「だって、私から言わないと会えないのよ? たまには誘ってくれてもいいじゃない」
と返すHさんの言葉もまた、これまで何度も耳にしてきたものだった。
次のページ▶▶好きだったけど、彼とは結婚できなかった。その理由とは…
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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