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不倫を選ぶ女性たちの背景には何があるのか、またこれからどうするのか、垣間見えた胸の内をご紹介します。後編です。
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G子と彼の出会いは5年前、今とは別の派遣先で働いている頃の上司が今の彼だった。
彼のほうからG子に声をかけ、肉体関係を持つまでそう時間はかからなかった。G子はその頃も今と同じように恋愛にのめり込むことは避けていて、本当に体だけのドライな関係のつもりだった。
だが、いざ付き合ってみると、彼も配偶者の浮気で大きな悩みを抱えていた。世間体を気にして離婚は避けたが、夫婦の仲は修復が不可能なくらい冷え切っていた。子どもがいないこともあって、完全な仮面夫婦だったという。
そんな彼の姿が、昔の自分と重なった。夫からの拳に怯え、小さな娘と肩を寄せ合うようにして過ごした惨めな自分を思い出したとき、G子は彼を精一杯励ますようになっていた。大丈夫、私がいるから、と。
そのせいもあってか、ふたりの絆は順調に育っていった。彼の妻は、彼が不倫をしていることに気がついても何も言わなかった。G子は娘を紹介することは避けたが、ふたりで誕生日を過ごしたり旅行に出かけたりと、それなりに幸せな時間を過ごしていた。
が、それでもG子は彼に離婚を望むことはなかった。
「娘のため」、をいつも前面に押し出してきたが、本当の理由は別にあった。
どんな嘘? と尋ねると、G子は
「彼に、ほかに好きな人ができたって言っちゃったの」
と答えた。思わず呆気にとられ、「なんでそんな嘘をつく必要があるの?」と返すと、G子は
「彼が独身になったら、私の自由がなくなるじゃない」
と今度は吐き出すように言った。
G子にとって、彼はあくまで「既婚者」でないと困るのだった。別れて独身になってしまったら、正々堂々と付き合える代わりにふたりの関係に責任を持つことになる。
▶だが、G子の意図に反して彼が取った行動は…
G子は何よりも娘の存在を大切にしている。だが、自分のことをないがしろにするわけではない。自由でいたい。5年も不倫の関係を続けていたのは、この関係に無責任でも良いという暗黙の了解を勝手に手にしていたからだった。
だが、
「離婚されたら困るから別れるなんて言えないじゃない!」
と視線を落としたまま肩に力を入れるG子の姿には、どこかで矛盾を感じた。
彼のことが本当に軽い存在なら、すっぱり別れを切り出せたはずだ。だが、それができないのはどこかでG子自身もこの不倫を大切にしていたから。先はないと思いながら、一方で彼を愛している気持ちもまた、事実だった。
だから嘘をついた。それはG子の弱さだった。
だが、G子の意図に反して彼が取った行動は、さらに離婚に向けた動きを進めるというものだった。
「自分が離婚しないせいでほかのオトコを好きになったって思ってるんだね」
だから、離婚すれば戻ってくると考えたんだ。ぼそっとつぶやくと、頷きながらG子が言った。
「もう、これだから恋とか面倒くさい……」
それが彼女の本音だった。
▶「都合の良い恋」の代償

「別に独身になってもいいじゃない。それは向こうの自由なんだし」
そう言うと、G子は
「でも、そこまでさせておいて面倒になったから別れるなんて、ひどくない?」
と泣きそうな声で言った。普段は柔和な笑顔で和ませてくれる彼女は、今は髪を乱して引きつった表情を見せていた。
G子は後悔していた。彼と奥さんが冷めた仲だからと、不倫であることをあまり意識せずに堂々とふたりで旅行にも行っていた。そんな親密度が、彼を本気にさせたと思っていた。
そして、彼女もまた、そんな彼との時間を愛おしく感じていたのも本当だった。だから、再婚する気がないことを強く言えなかった。彼を拒否することで別れを選ばれることもまた、心のどこかで恐れていた。
そんな中途半端な付き合い方が、彼に離婚届を書かせることになったのだ。
「都合の良い恋愛なんてないよ」
そう言うと、G子は怯えた目を向けた。
本当のことを話すなら、早いうちでないと取り返しがつかないことになる。それはG子もわかっていた。
「恋は面倒だ」と思いながら、実際は彼の愛情を引き寄せ、また自分もそれに応えるようなことを続けていた。その結末が彼が離婚を決意することであっても、責任は彼女にもあるのだ。
独身になった彼と向き合う勇気がないなら、彼に伝えないといけないのは嘘ではなく本音。
それが、せめてもの彼に対する誠意になると、うなだれる彼女に告げるしかなかった。
G子は、彼が離婚することはないだろうとどこかで高をくくっていた。
だが、それとは裏腹に彼との時間を愛する自分もいたことが、かえって彼の背中を押す事態になってしまった。
不倫でつく嘘は、大きな代償を払わされる。
それは、相手の愛情を裏切るという、大きな痛みを引き受けることになるのだ。
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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