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夫婦問題・モラハラカウンセラーの麻野祐香です。経済的に自立した「働く女性」であってもなお逃げ切れずに苦しむ夫のモラハラについて、長年に渡りカウンセリングを続けてきた私なりの対策をお伝えしています。
前編に続き、経済的DVで妻に現金を渡さずに家族カードのみで生活をするように命令をしている夫の話です。普段の暴言や無視などの精神的DVプラス経済的DVも相当なレベルです。
クレジットカードの使用限度は毎月5万円まで。小学生の2人の息子の食費、部活代、洋服代、文房具代、美容院代など全てをその金額でやりくりするのが妻の役目と言われています。
カードを使えば即座に夫にメールが届く設定になっているので、何にいくら使ったのか全て把握されています。現金しか使えない店もあるので現金を渡して欲しい、と言っても聞き入れてもらえないのです。
5万円をオーバーしてしまう分と現金分は、自分の貯金を切り崩して生活しているTさんのお話。
前編の続きを書かせていただきます。
▶前編『モラハラ夫は現金を1円も渡さずに、私を「金の亡者!」と罵り続けた末に…』を読む
そんな日々のなか、息子さんの部活の合宿代がどうしても必要になったときのこと。Tさんは夫に「今月は長男の部活の合宿代を現金で納めないといけないの。4万円もらえませんか?」と相談しました。
恐る恐る夫に言い出したものの、「バカか! 俺が必死で働いているのになんでそんな余計な金を出さないといけないのか」とすごい勢いで怒鳴りだしてしまったそうです。
「夫の怒鳴り声に長男は『僕の合宿代のことでお母さんが怒られているの? 僕はじゃあ合宿にはいかないよ」と、話に入ってきてくれました」
すると「合宿代なのか。お母さんの言い方で合宿代とはわからなかったんだ。楽しんでおいでよ」と、夫はその場で4万円を現金でくれたそうです。
夫の態度にイラついたものの、Tさんは息子さんが合宿に行けるということのほうが嬉しかったので「お父さんありがとう」とお礼を言い、その場をなんとかやり過ごしました。
その時は、Tさんの想像をはるかに超えることが、その後に起こるなんて考えもしませんでした。
子どもが寝た後、いつも通り夫に正座を強要されたTさん。夫は「今月は4万の出費がもうあるから、1万で生活するように」と言い出したのです。
「『あなたは合宿代は子どものためだって言ったじゃない』と言いましたが、『お前はバカだな。使える金が決まっているのにその分を先に払ったら、残りが少なくなることもわからないのか?』と夫が笑いながら言うのです」
「1万円で1ヶ月の生活費なんて無理です」と涙ながらにTさんは訴えました。けれど夫は、「努力が足りない」「他の家は普通にやっている」と平然と言い放つばかり。
「『他の家ってどこの家ですか。私の友人にはそんな人はいません』と反論しても『お前の友人にはろくな人間がいないから当たり前だ。良妻賢母ならできるんだよ。とにかく残りは1万だからな!』と言って夫は布団に入って眠ってしまいました」
これではもう生活ができない。実母にお金を借りに行こうと決心して、Tさんは久々に実家を訪ねました。
実は付き合って3ヶ月で結婚を決めたTさんに、実母は結婚を決めるのは早すぎると結婚に反対していたそう。そんな実母の言うことも聞かずに結婚をしたので、Tさんは自分が幸せじゃないなんて言い出せなかったのです。
久々に実家を訪ねたのですが、実母はTさんを優しく出迎えてくれました。
そして「Tちゃん、髪がボサボサよ。お洋服も毛玉があるし一体どうしたの?」と心配そうに見つめます。
「母の言葉に今まで我慢していましたが、涙が溢れ出してしまいました。夫からの生活費のことを打ち明け、生活費が少なすぎて美容院も行けないし自分の洋服も買えないことも全て話しました」
実母は「それはね、経済的DVっていうのよ。この前テレビでやっていたのを見たの。そんな金額で生活なんてできるはずがないでしょ。なんで今まで我慢していたの?」とねぎらいながらも教えてくれそうです。
Tさんは夫から経済的DVを受けていたんだということがわかって、今までずっと張り詰めていた緊張と不安がなくなりました。
泣きながら実母に「お母さん、私どうしたらいいの? いくら夫に言っても給与も教えてくれないし、現金をもらえない。カードでの支払いしかできないし、何に使ったかもすべて管理されているの」と相談をしたTさん。
「母に話したことで、こんなことはおかしい。私は今までなんでこんな夫の言うことを聞いて、自分を追い詰めて怖がっていたのだろうとやっと気がつきました。
今までは夫の言うことに従うしかなかったのは、夫が怖かったからです。暴言と説教、いつの間にか夫に従わないといけないと洗脳されていたのです」
「そんな辛い状況ならすぐに離婚しなさい、子どもと実家に戻ればいい」と実母は言ってくれたそうです。その言葉で目が覚め、自宅に戻り夫に勇気を持って言いました。
「あなたのやっていることは経済的DVです。私はもう無理です。離婚してください」
夫は驚き、「何を言ってるんだ! 意味がわからない」と相手にしてくれませんでした。けれどもTさんの真剣な態度に、夫も本気で離婚を突きつけられていることがわかったようです。
「今の状態で生活できないのはわかった。生活費は増やしてやるから離婚は考え直せ」と妥協案を示してくる夫。
しかしTさんは「生活費が増えても、あなたの給与明細もわからないし、生活費以外を何に使っているのかもわからない状態では継続できません」と強く言ったところ、夫は給与明細と通帳、カード会社の明細をやっと見せてくれました。
給与は想像していたよりずっと多く、生活費以外は全て自分の趣味や時計、ブランド品につぎ込まれていました。購入していたブランド物のバッグは、カード明細から浮気相手へのプレゼントにしていたことがわかりました。
「浮気をしていたというショックよりも、『この事実があれば離婚が優位になる』と思ったのは、夫への愛情が一切残っていなかったからでしょうね。
夫から今さら謝られても私や子ども達に辛い思いをさせ、自分は浮気をしていた、離婚の意思は変わりません。
給与明細も通帳も撮影したので、今までの辛かった分も含めて養育費と慰謝料はきっちりもらおうと思っています」
今回はTさんの例をお話しさせていただきましたが、「生活費をわたさない」「給料や貯金を勝手に使われる」「外で働くことを妨害される」などの「経済的DV」はモラハラに含まれます。
モラ夫は、暴言や無視などによって相手から自尊心を奪い、自分に従わせる特徴がありますが、経済的DVは、まさに妻へ金銭面の圧迫で優位に立とうとする行為です。
おかしいと思ったら誰かに相談する勇気を持ってください。
夫婦問題・モラハラカウンセラー 麻野祐香
モラハラ/HSP専門カウンセラー。モラハラで悩む方の心を守ることを使命とし、カウンセリングとTikTokライブでモラハラとHSPで悩む方のサポートを続けている。モラハラと夫は別れるべきと勧めることが多い中、離婚をしたくても事情があって別れられない人々のために、モラハラ夫からの自分の心の守り方を発信。著書「モラ夫のトリセツ」「夫婦の気持ちすれ違い解消ドリル」「モラ夫のトリセツ2」
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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