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出没!アド街ック天国、執念の「街リサーチ術」をついに語る。最高の街の見つけ方とは

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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出没!アド街ック天国、執念の「街リサーチ術」をついに語る。最高の街の見つけ方とは

放送29年目に突入した「出没!アド街ック天国(テレビ東京系列)」。今まで1400を超える街を紹介してきた。
街の魅力を徹底的に掘り下げる番組だが、あまり知られていないリサーチ方法がわかった。
それは数週間も一つの街を徹底的に歩いて駆けずり回る、愚直な手法だ 。
他の番組でも類を見ないほどのアナログ式の徹底リサーチで、街調べを完遂する達人たち。その詳細から、「自分にピッタリの街」を見つけるヒントまで聞いた。

まず『アド街』と明かさずに地元民と仲良くなる?(写真撮影/辰井裕紀)

(写真撮影/辰井裕紀)

番組制作会社ハウフルスの会議室にいたのは、出没!アド街ック天国の演出・堀江昭子さん。
放送開始3年目で飛び込み、アド街を知り尽くした人だ。

さらに、プロデューサーの佐藤実さんにも話を聞く。

左から、プロデューサー・佐藤実さん、演出・堀江昭子さん(イラスト/タテノカズヒロ)

左から、プロデューサー・佐藤実さん、演出・堀江昭子さん(イラスト/タテノカズヒロ)

堀江「まず、リサーチをするのは担当ディレクター1人とアシスタントディレクター(AD)2人、計3人の班です。インターネットや書籍などで事前取材もしますが、基本はとにかく街歩きですね」

そもそも「3人」とは、あれだけの内容を調べるには少なくないか?

堀江「他の番組って、放送までにかけられる時間がすごく短いんですよね。うちは一つの街にリサーチから放送まで約2カ月かけていますから、少ない人数でもくまなく調べられるんです」

「8班」体制を組むからこそ可能な約2カ月スパン。リサーチだけで1カ月かけることもあるという。それでも、人数と予算が限られている中でどうやって探すのか。

番組制作には、ロケハン、ロケ、VTR編集、収録、番組全体の編集などの工程を経る(写真提供/ハウフルス)

番組制作には、ロケハン、ロケ、VTR編集、収録、番組全体の編集などの工程を経る(写真提供/ハウフルス)

一つの街では、メイン通りだけではなく、私道でなければ地元の人しか通らないような細い路地裏に至るまで、くまなく歩いてリサーチを行うという。

ちなみに、どんな方から話を聞くのか。

堀江「まず、商店街があったら商店街の会長さんや老舗のご主人など、地元の『生き字引みたいな人』に聞きます」

より街を知っている可能性の高いキーマンに話を聞くわけだ。

堀江「街にとって大事なスポットを聞いて、居酒屋をオススメされたら足を運び、周りの常連客とも『アド街』と明かさずに仲良くなって。他においしいお店も聞きます」

飲みニケーションからの数珠つなぎである。

さらに居酒屋にいるお客さんだけだと偏ってしまうので、美容室に髪を切りに行ったり、八百屋さんに行ったりして、「アド街」とは言わずに話しかける。そして目星をつけて各所を訪問するのだ。

田無で「スコップ三味線」を体験するディレクター(写真提供/ハウフルス)

田無で「スコップ三味線」を体験するディレクター(写真提供/ハウフルス)

ちなみに、担当ディレクターが一つの街につき1人だけなのはなぜか。

堀江「この街をどう見せようかの演出を統一できますから。同じ街でも魅力の見せ方次第で変わって見えますので。街の人とも1人の方が、仲良くなれますし、端的に言うと『深く』できるんです」

たしかに、1人で話しかけた方が向こうも心を開いてくれやすい。深いリサーチや演出に必要なのは「孤独」なのだ。

ディレクターは猫しか通らないような路地も探索する。そのおかげで白山・千石(東京都文京区)の放送回では、花街だった名残を多く見つけられた。

白山・千石エリアの路地裏には現役の井戸&手押しポンプがあり、住民が植物の水やりなどに使う(写真提供/テレビ東京・ハウフルス)

白山・千石エリアの路地裏には現役の井戸&手押しポンプがあり、住民が植物の水やりなどに使う(写真提供/テレビ東京・ハウフルス)

堀江「たとえば、白山が花街だったのは有名ですけど、路地に石畳が残っています。ふつうは通り過ぎちゃうような場所なんですけど、そこを調べれば街の歴史がわかるんです」

お蔵入りの街も「時代が変われば放送できる」

ちなみに、ネタが見つからなさそうなときはどうするのか。

堀江「正直、放送までこぎつけられなかった街もあります」

過去に3つほどあったという。

佐藤「時代が変われば放送できると思っています」

時間をおいて、見直された街はあるか。

佐藤「ありますよ、西武新宿線の武蔵関とか。2022年に取り上げたんですけど、これまでは『何もないかな?』と思いこんでいたのですが、行ってみたら、すごく面白い街でした」

世界的かつ日本を代表するお店が多くあったという。たとえば、バイク店の「チェリーズカンパニー」。

堀江「メディアに一切出てないとこだったんですけど、行ってみたら凄腕のバイク職人さんのお店で。カスタムバイクの全国大会で3連覇し、ブラッド・ピットのバイクも手がけた人のお店だったんです」

パーツのほとんどはこの店の黒須さんのオリジナル。『仮面ライダーBLACK SUN』に登場するバイクやブラッド・ピットが愛用するバイクも手がけた(写真提供/テレビ東京・ハウフルス)

パーツのほとんどはこの店の黒須さんのオリジナル。『仮面ライダーBLACK SUN』に登場するバイクやブラッド・ピットが愛用するバイクも手がけた(写真提供/テレビ東京・ハウフルス)

それでもベッドタウンの住宅街などは、特筆すべきところが見つからなさそうだが。

佐藤「地元の方からは『うちの街は1時間も紹介できないでしょう』とよく言われるんですけど、そんなことはなくて。地元民だからこそ魅力に気付かない、『灯台下暗し』なこともあるんです。人が住んでいれば、僕らはできると思います。街の方にとって大事なスポットをどれだけ浮き彫りにできるかです」

理想の街の見つけ方

「自分にとってピッタリな街」を見つけたい人も多いはず。

佐藤「お店などで人と話せばわかりやすいんですけど、『人との距離感の違い』が見えてくるんです。都市でも大阪は距離感が近くて、東京だとやや遠いですが、下町の方ならもっと近いとか。人それぞれに距離感がちょうど合う街があると思います」

都心で「江戸っ子の人情」が残っているのが、老舗も多い日本橋や神田、墨田区あたりという。

佐藤「アド街はロケハンや撮影の期間も長いんですが、顔なじみになり、昔ながらの方に『本当にあの子たち頑張ってるんだ』と思ってもらえて、『暑いから冷たいもの飲んでよ』と差し入れまでいただきました」

「うちなんかいいから。あそこの店頑張ってるし、取材してやってよ」と言われて、そのお店に行ったら、本当にいい店だったことも。

押上・東京スカイツリー回では「最先端とは真逆の、渋さ満点の定食屋さん」たちを紹介(写真提供/テレビ東京・ハウフルス)

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東陽町の居酒屋「あづま」でロケハン後にあめのお裾分けをたくさんいただく(写真提供/ハウフルス)

東陽町の居酒屋「あづま」でロケハン後にあめのお裾分けをたくさんいただく(写真提供/ハウフルス)

堀江「あと、元気のいい街は商店街がしっかりしていると思っていて。(山田)五郎さんに言わせると、お茶屋さんが営業できている商店街はいいそうです。専門店で買い物する意識の高い人や、お茶の習慣を持った昔からの人たちが住んでいる街なので」

そして、老舗のお店が多い街はこんな土壌も育つ。

堀江「老舗をみんなで支えていこう、みたいなね。コロナのときにも周りが、大変だろうから、どうにかしなきゃって意識があったようで。店が住んでる人を育てて、人が店を育てているんでしょうね」

古いものを守り、未来に向かう街のよさ

最近見てきた中で、印象的な街はあるか。

佐藤「たとえば蔵前(東京都台東区)とか。かつて倉庫が立ち並ぶ街でしたが、今では使われなくなった倉庫が生まれ変わり、外観を残しつつ、中が綺麗にリノベーションされています」

単なる再開発にとどまらず、新しいものの利便性と、古いもののいい部分を調和させた街ができあがっている。

年貢米を貯蔵するなど、江戸時代から倉庫街だった蔵前。倉庫リノベーションで生まれたお店たちによって若者にも人気に(写真提供/テレビ東京・ハウフルス)

年貢米を貯蔵するなど、江戸時代から倉庫街だった蔵前。倉庫リノベーションで生まれたお店たちによって若者にも人気に(写真提供/テレビ東京・ハウフルス)

堀江「蔵前みたいに、古いものを大事にしている街を見つけるのも手ですよね。街の魅力をわかっていて、未来にこの街をどう残すかをちゃんと考えている人たちがいることが、すごく大事」

さらには、未来へ向かう街がある。

堀江「つくば市(茨城県)は子育て世代にはすごくいいと思います。都会と田舎のよさが共存し、教育環境もすばらしくて。このご時世で、子どもがすごく増えています」

1977年からスタートしているICT教育をはじめ、2012年度から市内全ての小中学校で9年一貫教育を完全実施。最近では生成AIの活用を学ぶ授業を全小中学校に順次取り入れるなど、先進的な学びを推し進めてきた。

つくば市にある学園の森義務教育学校では児童数の多さを活かして、2,039人でだるまさんが転んだを行い「ギネス世界記録」に認定された(写真提供/テレビ東京・ハウフルス)

つくば市にある学園の森義務教育学校では児童数の多さを活かして、2,039人でだるまさんが転んだを行い「ギネス世界記録」に認定された(写真提供/テレビ東京・ハウフルス)

堀江「北海道の東川町も、バブル期直前の1985年、当時の町長さんが『写真の町宣言』をして。他の町が特産物をアピールする中ですよ。インスタなんかない時代に、未来が見えていたんでしょうね。今では写真を軸とした文化の町になりました」

東川町の人口は25年で20%増加し、約8600人の住民は半数以上が移住者。家の新築、薪ストーブの設置などに補助金が出るなど、助成・支援制度が充実する(写真提供/テレビ東京・ハウフルス)

東川町の人口は25年で20%増加し、約8600人の住民は半数以上が移住者。家の新築、薪ストーブの設置などに補助金が出るなど、助成・支援制度が充実する(写真提供/テレビ東京・ハウフルス)

数え切れないほどの街の魅力を見せてきたアド街は、ついに30周年が目前。何を大事にして番組を続けたいか。

佐藤「(初代宣伝部長の)愛川欽也さんが言っていた、『街をつくるのは建物じゃない、人なんだ』が、アド街の真髄です。本当に街をつくるのは人だと思います」

そして、街の移り変わりを見届ける。

佐藤「地元の人が頑張って街は成長していきますし、魅力も膨らんでいきます。街並みが変わっても変わらなくても、アド街は何度でも出没していきますので」

番組が29年間も探求してきた「アド街視点」を学べた今回の取材。知らない街から、知ってるつもりの街まで、もう一度イチから魅力を探してみたくなった。

30周年とその先へばく進する番組に期待しつつ、いつかどこかの店で「アド街見た」と言ってやろう。

最後に、取材後の立ち話で「今住んでいる街のさらなる魅力」を発見するコツを教えてもらった。

・いつもと違うルートを歩く
・いつもと違うことをやる
・入ったことのない店に入る

堀江「自分のテリトリーを変えることじゃないですかね。そのお店で周りやご主人と話してみるとか。意外な街の側面が見えてくるかもしれませんよ」

北鎌倉の円応寺でロケ後の記念撮影(写真提供/ハウフルス)

北鎌倉の円応寺でロケ後の記念撮影(写真提供/ハウフルス)

●取材協力
「出没!アド街ック天国」テレビ東京系列にて毎週土曜日夜9時~9時54分放送中

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この記事のライター

SUUMO

『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。

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