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「毎日忙しくて、気づいたら部屋が大変なことに!」「片づけたいけど、どこから手をつければいいの!?」「部屋をどうにかしたい。誰か助けて!」……心の中でそんな叫びを上げている汚部屋の方はいませんか? そんな人はすぐに脱・汚部屋を! ゴミを片づけてスッキリ暮らす方法を、汚部屋清掃のプロに伺いました。
汚部屋&ゴミ屋敷でいいことはひとつもない
「汚部屋」とは「お部屋」をもじった造語で、足の踏み場もないほど散らかった部屋をさします。1部屋だけでなく家全体が汚部屋化すると、「ゴミ屋敷」「汚屋敷(おやしき)」と言われるようになります。
「散らかっている方が落ち着く」「埃じゃ人は死なない」なんて耳にする事がありますが、それには“程度”があります。床が見えないほど物が散乱した汚部屋・ゴミ屋敷(以下、まとめて汚部屋と呼びます)は実は人の生死に関わります。
年間700軒超の汚部屋清掃を手掛けているという[株式会社まごのて]代表の佐々木久史さんと妻の佐々木薫さんのお二人に、汚部屋の実態について伺いました。まずは汚部屋のデメリットから。
「命に関わるような悪影響も多く、いいことは一つもありません。ゴミ屋敷での暮らしは人をダメにします。まずはそれを認識してください」と佐々木さん。取材を元に分類すると以下の7つになります。
●恐怖!汚部屋のデメリット汚部屋はたびたびテレビで特集されることがあり、そこまで部屋を汚せるなんて特別変わった人なのだろうと思う人もいるかもしれません。しかし、「実は誰でも汚部屋住人になる可能性があるんですよ」と佐々木さん。仕事に忙殺され、大きなストレスを抱え続けるような日々を過ごしていると、「ふと気付くと自分が汚部屋住人だった」となる可能性が高いようです。
そもそも部屋が汚れていく原因は大きく分けて次の3つ。
(1)時間がない
残業時間が多い、出張が多いなどで忙しく、体が疲れていると、つい掃除を後回しにしがちです。
(2)気力がない
仕事や人間関係などでストレスが多いと、掃除をする気力がなえていきます。特にストレスを発散するすべがなく、抱え込んでしまう人は特に汚部屋に陥りやすいそうです。
(3)片付けが苦手
これは全ての人に当てはまる原因ではありませんが、物を片付けたり捨てたりする事が苦手という人は少なからずいます。ついゴミ捨てが億劫になって、気付いたらすごい量になっていたということも。
「仕事をしていると無意識のうちに多少のストレスや負のオーラを感じてしまうものですが、普通なら、帰宅して家でリラックスすることでストレスが癒やされたり、マイナスオーラを浄化することができます。
しかし、多忙な方だとそうはいきません。部屋を片付ける時間も気力もないので、少し散らかっている程度の部屋が、あっというまに足の踏み場もない状態になっていくわけです。そして、物が多く部屋が片づいていないと、さらにストレスが積み重なって行きます。悪循環です」
だから、仕事や人間関係の状況次第では誰でも汚部屋住人になってしまうのです。
「当社にご相談されるお客様では、女性が7割弱と多めです。お仕事がかなり多忙で、常に大きなストレスを抱えてしまうような職種の方が多いですね。ストレスが過大になることで心が疲れてしまい、自分の世話を放棄してしまうわけです」(佐々木さん)。ある程度収入がある人や周囲から一目置かれるような職業の人にも多いそうです。
「根がまじめな方が多いから、これではいけないと自分を責める→精神的に落ち込む→さらに片付けられなくなる、という負のスパイラルに陥ってしまうのです」と佐々木さん。
「そうした方は、休日も疲れているから、朝、カーテンすら開けずずっと薄暗い中で寝ている…。これでは、負のオーラをうまくコントロールできませんよね。家の中にどんどん不要な物や汚れが溜まっていく一方になってしまいます。せめて毎朝カーテンと窓を開けて、部屋の空気を入れ替えましょう。また、中には、『ゴミを多く出すと汚屋敷に住んでいるのがばれる』と気に病んでしまう人もいます。周りの人はそんなことは気にしません。決められた日にゴミをきちんと出してスッキリしましょう」
汚部屋を脱するには?では、汚部屋を脱するにはどうすればいいのでしょうか。
(1)自分が汚部屋の住人だと認識する
まず自分の家が汚部屋だと認識することが大切。「好きな人が今から遊びにくる場合、家にあげられる?」という質問に対して、答えが「絶対無理」となったら、その人は汚部屋敷住人です。
疲れてストレスを溜めていると、人は問題を先送りにしがちになります。それに加えて、汚部屋のマイナススパイラル環境にいると感覚が麻痺してしまい、自分の部屋や家が問題とは感じていない汚部屋住人も多いそうです。そうした人は、ある日はっと気付くまで、手に負えない汚部屋状態に陥っている自分の状況を認識できていないのだとか。だからまず現状を把握することが必要です。
自分の家が汚部屋だと気付くのは、「転勤で引越さなくてはならなくなったため」「業者が部屋に入る必要が生じたため」という外的要因がきっかけとなることも多く、期限が迫っていることにより自分ではどうすることもできなくなって、[まごのて]のような会社に依頼してくるようです。
「余談ですが、当社への依頼が多いのは6、7月ごろ。『害虫が部屋に出たから』『エアコンが壊れたのに修理の会社を呼べないから』という理由が目立ちます。ただ、私が言うのもなんですが、清掃会社に依頼するのが一番高くつきます。お部屋の状態によりますが、数万円から数十万円もかかります。自分でやれば無料ですよ(笑)」
そして前述した通り、「汚部屋暮らしは命に関わる」ことを強く認識しましょう。
(2)誰かに相談・カミングアウトする
「汚部屋住人は、元々、気分が落ち込んで片付けの気力がなえているわけですから、自分だけでなく誰か身近な人にカミングアウトして相談してみるといいですよ。片付け方法などのアドバイスをしてもらったり、実際に手伝ってくれるかもしれません。身近な人がいない、恥ずかしいという場合は、ブログやツイッターなどで片付け報告をしたり、サイト上の第三者に相談をしてみると、気力が湧いてきたり、何らかの方法が見つかりますよ」
特に「自分は片付けが下手で、毎日のゴミ捨てすら難儀してしまう」という人は誰かに助けてもらう方がはかどります。本当にどうしようもできないと感じたら、清掃会社に依頼して一気に部屋を片付けるのもいいでしょう。苦手な物を抱え込み続けるより有効な手段です。
(3)まずちょっとだけ片付けてみる
自分でできるかもと思った場合は、少しやってみます。
「ベッド以外で、自分が家でくつろいでいる場所だけを片付けてみましょう。そこが片付けられたら、“やればできる”と自信がつくので、部屋の隅から順に“ちょっとずつ”片付けていけるようになります」
ちなみに筆者も、日常の家事でちょっとだけやる手法を実践しています。例えばシンクに山になっている食器を洗うのが億劫だと感じた場合に「3つだけ洗う」のです。山のような食器を一気に洗おうとするとゲンナリしますが、そこで、「スプーン3つだけ洗おう」とか、「コップを3個洗う」などと決めて洗い始めます。そのうち勢いがついて、一気に全部を洗ってしまうのです(3個でやめて間を開けてから再開することもあります)。なぜ3個なのかというと自分が取りかかりやすいと感じたから。それが2個でも5個でもやりやすい個数でいいと思います。
要は、「全部やろう」と思うから気力がわかないので、「少しだけならできる」と思い込んでいけばいいわけです。ちょっとずつ取りかかる、習慣づけることが片付けの第一歩になります。
(4)今の自分にふさわしい物を選別
「お客様の中には4LDKの立派な一戸建てなのに、物が多すぎて1部屋しか使えない状態という方もいらっしゃいました。例えば東京辺りでは家の購入価格や家賃が高いのに、ゴミを置くために部屋を用意したようなもの。もったいないですよね」
片付けに当たっては、そんな汚部屋が自分にふさわしいのかをよく考えて、理想の部屋のイメージを思い描きます。
最初はゴミに取りかかります。とにかく物で埋め尽くされているので、単純にゴミとして捨てられる物を減らしていかなければ、埋もれた物に辿り着けません。可燃ゴミ、不燃ゴミ、資源物など分別しながら捨てるか、ゴミを一気にまとめて袋に入れておいて、後から分別するか、やりやすい方で捨てましょう。
ゴミを捨てた後に、生活用品や雑貨、服など多くの物の中から、捨てるもの、売るもの、保管するものなど選別していく必要があります。その際に「今の自分にふさわしいかどうかで持つ物を決めましょう。安く購入した気に入らない物をたくさん持つよりも、お気に入りの逸品を一つだけ持って、それを大切にしたいですね」と佐々木さん。この服は今の自分に似合っているのか、この本は今の自分にとって再度読みたい本なのか、「今」という軸で考えます。
ただし、今の自分には不要な物でも、どうしても捨てたくない物ももちろんあるでしょう。そうした物は捨てずに取っておくのが精神衛生上いいと思います。
「物の選別については、特に実家を片付けている方がぶち当たる問題ですが、70代以上のご高齢の方は物を捨てる習慣がなかったり、物を捨てる基準が若い世代とは異なる場合が多いです。子世代の人間が明らかに不必要な物だと感じても、安全面や衛生面が確保できるという前提があってのことですが、無理に捨ててはいけません」
「脱!汚部屋」での一つの着地点は、「どこに何があるかが把握できるレベル」。そこまで物を減らせたら、次のステップ、より快適に過ごせるスッキリ空間を目指しましょう。
おわりに「誰しも汚部屋住人になる可能性はある」という佐々木夫妻のお話にドキッとさせられましたが、多くの人を“救済”している[まごのて]の実体験話を数多く伺って、汚部屋・ゴミ屋敷に陥っていても、やる気や根気があれば状況は上向くのだと感じました。
しかし、今現在、気持ちが萎えていて自分ではどうすることもできないという困ったときには、家族・友人、ネット上の第三者、清掃業者など誰かに相談するという姿勢も必要です。負の環境を少しでも早く抜け出られるよう、誰かに頼ることで自分を客観視してみてください。
この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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