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38歳で4月から東京大学に通い、夏季休暇の間も英語とフランス語とプログラミングと哲学を勉強し続け、現在は毎日1限から授業を受けています。さんきゅう倉田です。職業は芸人です。
まわりには、20ほど年齢が離れた東大生たち。違和感なく付き合えているのは、彼らが高い倫理的思考力や豊富な知識を持っているからだと思います。
その中でも、ぼくが特に学びたいと思っている能力についての【後編】を紹介します。

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ある日講義で知り合った3年生の女の子が、シェアハウスに招いてくれた。そのシェアハウスに住んでいるわけではないが、週末だけ行って、空いている部屋に寝泊まりしているという。
「空いている部屋などあるのか?」と思ったが、誘われたら応じる性分なので、行くことにした。
女の子の部屋で食事をしたり話をしたりするのかと思ったら、リビングのソファに案内された。目の前では、住人がソファに座ったりお蕎麦を茹でたりしている。
シェアハウスのLINEグループでは事前に「東大芸人がやってくる!」と告知されていたらしい。
みんな様子を伺うことなく、どんどん話しかけてくる。こちらは他人の家で、あちらは自分の家。さらに、仲間も大勢いる。遠慮という概念が忘れられやすい環境が整っている。
今までのぼくなら、その場の空気を悪くしないために、あらゆる質問に答えていた。
でも、今はSくんというお手本がいる。
彼ならどのように受け答えをするのか推測することができる。
聞かれても最小限の言葉だけで答え、話を終わったら目をそらし、「はい」か「いいえ」で答えられる場合は、首の動作だけで対応する。沈黙が生まれれば、持ってきた書道の雑誌を興味深そうに見入る。
そうやって、ぼくは90分耐え続けた。今までのぼくだったら、初対面の人には興味深そうに質問をして場を盛り上げようと努めたかもしれない。でも、もうそんなことしなくていい。
Sくんのような毅然とした態度で沈黙すればいい。
今まで出会うことのなかった人たちと思いがけずめぐり合い、成長できる。そこが東大の素晴らしい点の一つだ。
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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