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今回紹介するのは東急田園都市線・つくし野駅にあるマンションのリノベーション。筆者がHandiHouse projectのメンバーとして初めて手掛けた物件です。どのような家が完成し、どのような関係性が生まれたのか、紹介します。【連載】施主も一緒に。新しい住まいのつくり方
普通、家づくりというのはハウスメーカーや工務店、リフォーム会社などのプロに施工をお任せするのが一般的です。ですが、自分で、自分の家づくりに参加してみたい人もいます。そんな人たちをサポートするのがHandiHouse。合言葉は「妄想から打ち上げまで」。デザインから工事までのすべてを自分たちの「手」で行う建築家集団です。坂田裕貴(cacco design studio)、中田裕一(中田製作所)、加藤渓一(studio PEACE sign)、荒木伸哉(サウノル製作所)、山崎大輔(DAY’S)の5人のメンバーとお施主さんがチームとなって、デザインや工事のすべての工程に参加するスタイルの家づくりを展開する。そんな「HandiHouse project」が手掛けた事例を通して、「自分の家を自分でつくること」によって、「住まい」という場所での暮らしがどういうものになるのかを紹介します。「選んで終わり」から「自分でやってみたい」へ
つくし野の家は、RC造マンション、3LDKのリノベーションでした。お施主さんは同じ沿線沿い、宮崎台の家のお客さんがご紹介くださったTさん。ご要望内容としてはリビングに隣接した和室を洋室にし、リビングのフローリングを張り替え、キッチンを改修することでした。Tさんには職場でも経験のあったという壁面の塗装をお願いしました。
リノベーションのなかでとても頭を悩ますのと同時にとても楽しい工程の一つが、フローリング選びだと思います。Tさんのイメージを具体的にするため、木の種類、材料の幅、オイルの色味など、約20種類のサンプルを作成し選んでいきました。Tさんは最終的に決定したフローリングをとても気に入ってくれて、当初はリビングだけの予定だったフローリングの張り替えも、廊下・それぞれの個室とすべてを施工することになりました。
時間をかけて悩み抜いたフローリングに特別な愛情が生まれ、Tさんご自身でも張ってみたいと言ってくれました。Tさんとお母様とでスライド丸ノコでフローリングのカットをし、接着剤を塗って、フィニッシュネイルで留める工程を一枚一枚、丁寧に施していってくれました(このフローリングたちは溺愛され過保護に育てられていくことでしょう)。
見える所で読書をするほどお気に入りの扉お母様の一番のご希望は、和室を洋室にした際に整えたウォークインクローゼットへ通じる扉を、アンティーク調にしたいというものでした。そこでいつもお世話になっている業者さんからアンティーク扉の写真を取り寄せ、約300枚(!)もの写真を見ていただきました。
しかし、イメージにドンピシャなものが見つからず。最終的にはイメージに近い写真をもとに図面を描き、扉の幅・高さ、ガラスのサイズ、取っ手の高さなど悩みながら決めていただき、建具屋さんにオーダーをすることにしました。最終仕上げの着色ワックスはお母様とTさんで色の濃淡を微調整しながら塗ってもらいました。こうして苦労して出来上がった扉。
今では扉が見える位置に椅子を置き、そこで本を読むのが楽しいのだと話をしてくれました。
Tさんの人柄も手伝って、友人、弟さん夫婦がたくさん現場に手伝いに来てくれました。Tさんも含めたみなさんにリビング壁面のアクセントカラーに塗る部分のパテ(下地)塗り、やすりがけ、塗装をすべてやってもらいました。パテは力みながら悪戦苦闘していましたが、根気強く丁寧なやすりがけでプロのような塗装下地になっていました。塗装はさすがみなさんTさんと同じ経験者ということでお上手。
そして、みんなでピザを選んで食べたり、クリスマスケーキを食べたり、ミカンの新しいむき方を教えてもらったり、弟さんの家の洗面所改装を妄想したり……。そこにお客さんと工事請負者という関係はなく、Tさんの仲間に入れてもらえた感覚でした。
完成後Tさんからメールをいただきました。
『……どこを見ても思い出がいっぱいです。いろいろな所に住んできたけど、こんな空間に住むのは初めてです。…すけさん(筆者)に教えてもらったこと、これからはMYインパクト(インパクトドライバー)でやってみますね。そしてこれからもよろしくお願いしますm(__)m』
この原稿の執筆にあたりT邸のことを思い出すと、Tさんがパテをやりすぎて腕がプルプルするといっていたことや、タイル目地の色を間違えて発注したときのことや、辛い食べものと熱い食べものの話をしたことなど、建築的な思い出よりTさん、ご家族、ご友人たちとの出来事を思い出します。前職のゼネコン時代ではなかったことで、こんなにお客さんとの思い出ばかりの家を施工させてもらったのは僕も初めてでした。
初担当物件を無事終え「妄想から打ち上げまで」というコンセプトのパワーを実感したのと、なんと言ってもとてもよいご家族とご一緒に家づくりができたんだなとつくづく思いました。
あ、そろそろ一年点検に行かなきゃですね!
文/山崎大輔(DAY’S)
●参考この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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