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メディアで性行為についての悩みを広く募ると、最も多いのが「オーガズムを経験したことがない」になるそうだ。けれどセックスの満足度をイッた/イカないのみで図るのは、きっと味気ない。絶頂感はなくとも総合点が高いセックスはあると思う。けれど、それを知ったことで新たな価値観を得た女性がいる。
会社経営者のチヒロさん(43歳)は、2人の子どもと暮らすシングルマザー。色白でカーヴィーな身体つきには、女性である筆者でも抱きとめてもらいたくなるような包容力が色濃く漂っている。甘い声で、オーガズムを感じるようになるまでのいきさつを語ってくれた。
「元夫は毎日でもしたがる人でした。まだ小さいとはいえ子どもがすぐ横で寝ているのに求めてくるときもあって、とても困っていました」
20代のときのチヒロさんは、早く子どもがほしいという気持ちがとても強かった。子どもを二人授けてくれた元夫には、いまでも感謝している。しかし結婚生活において幼い子どもら以上に手を焼いたのが夫という存在だった。
「家にいるあいだはずっと私にくっついてくるんです。子どもではなく、夫の後追いに悩まされましたね。常に私の身体に触りたがるのは構ってほしいからなんでしょうけど、こっちは気が休まらない。そのうえ束縛が強くて、私がひとりで外出するのをいやがるんです。学生時代の友人に会うことになったというと『みんなで行こう』っていい出すし、相手が独身だからと子どもを預けて外出したらしょっちゅう電話がかかってくる。ひとりで出かけるほうが面倒なぐらいになったので、結婚していた12年間は独身時代の友人と連絡をほとんど取りませんでした」
いかにも困った男性だが、離婚の主な理由は仕事。会社を経営しているチヒロさんの目に映る夫の仕事ぶりは褒められたものではなく、次第に男性としての魅力も感じなくなっていった。1年の別居期間を経て、離婚が成立。
「不思議なのは、周囲に別居を明かした途端、男性たちの態度が変わったこと。突然、子どもを3人も抱えて大変だね、僕が守ってあげたいなんていい出すんです。シングルマザーだからかわいそうだと思われたみたいで」
それはあまりに短絡的ではないだろうか。
「そうなんです、以前の生活で一番手がかかったのは、夫でした。私と子どもだけの生活はとても快適です。結婚していたときよりも家事負担、経済負担が減ったので、本当に楽になりました。別の男性に頼りたいとはまったく思わないし、今後結婚するつもりはないです」
きっぱりといい切るチヒロさん。男性たちが押し付けてくる勝手なストーリーを気にも留めることなく、みずから出会いを求めていく。
「結婚前に交際していた元カレともつき合いましたが短期間でお別れし、その後はマッチングアプリを利用しました。リスクは背負いたくないし、短期間で効率的に出会いたかったので、まずはこの業界をよくリサーチしてから登録しました。10人ぐらいの方とお会いして、おつき合いしたのは2人です」
こう聞くと男性と出会うことにずいぶん積極的なようだが、恋愛経験や性の知識が豊富というわけではないという。
「結婚が20代前半と早かったんですよね。学生時代、お友だちでセックスのことも赤裸々に話す子もいたんですよ。『失神した』なんていうから私、びっくりしちゃって。そんなこと現実にあるの? って。私にとっては官能小説の世界です。でもその子の彼氏も知り合いだったし、聞いているこっちが恥ずかしくなるしで、あんまり生々しい話はしないでってお願いしました」
「子どもが生まれたあとママ友と話すのは育児の話が中心で、たまに夫婦関係のことが話題に出ても家事をしてくれるとか義実家のこととかで、セックスについて触れられることはほとんどありませんでした。学生時代の友人で独身の子たちは、その間、恋愛をしてセックスをしていたのでしょうが、すっかり接点がなくなったので、そんな話も耳に入ってこなかったんです」
ところが別居後に親しくなった友人のなかに、性に対してとても奔放な女性がいた。
「経験人数も驚くほどで、彼氏がいても夫がいてもあちこちで愉しんでいて、まるでスポーツ感覚。彼女の話すべてを、目を丸くして聞いていました。私にとっては、自分からセックスを求める女性がいるということだけでも驚きだったんです」
奥手というわけではないが、チヒロさん自身セックスが特に好きではなかったことも手伝って、愉しみとしての性とは遠いところで生活してきた。積極的な友人の体験談を聞いても、自分とは関係がないと思っていた。そんなチヒロさんの固定観念に風穴を開けたのが、マッチングアプリで出会った男性、シンゴさんだった。
ふたりで突き詰めていく楽しみとは、次ページ
「それまで経験してきたセックスでは、手や口での前戯でイクことはできるんですが、中でイクというのがわからなくて。もしかしたらこのまま感じつづけたらイクのかもしれないけど、自分が知らない感覚の渦に巻き込まれるようで怖くてなっちゃってやめる……というのパターンでした。シンゴさんは40代後半の男性で、お仕事は研究開発。だからなのか、セックスについてもすごく研究熱心で、私の反応を見ながらいろんなことを試し、分析と検証を重ねていました(笑)。私にも『あのときこんな反応をしていたけど、それはこういうメカニズムなんだよ』と説明してくれて。私はそうまでして中でイクにこだわらなくても、という気持ちがあったのですが……」
シンゴさんはあきらめなかった。ふたりは一度別れたがヨリを戻し、現在進行形で交際している。そのあいだにチヒロさんはオーガズムを体験した。
イクとは“反射”だといわれている。鼻の穴に細いものを差し込んでくすぐればクシャミが出るように、適切な刺激を与えればほとんどの女性はイケるということで、一度オーガズムを身体が覚えればその後は比較絶頂感を体験しやすくなる。
「シンゴさんとのセックスはこれまで経験したことのないほど長くて、挿入してから1時間半ぐらいかかるんです。私はそのあいだずっとイキっぱなし。メーターを振り切った状態がつづくので終わったあとは綿のように疲れきってしまうのですが、彼はその反応を見ているのがおもしろいようでいつもたっぷり時間をかけてセックスします」
オーガズムを知る前と知った後とでは、セックス観が変わったのだろうか?
「変わりましたね。こんな世界があるんだ! って目が開かれた感じです。それまでは、肉体的には誰としても同じ。愛されている、大切にされているという実感はあっても、身体の満足感はといえばどんぐりの背くらべでした。だから、セックスを愉しんでいる人の話を聞いてもよくわからなかったんです。私にとってはほとんどファンタジーの世界の出来事だったのですが、いまはその気持ちよさを知っているのでそれを追究しようという人の気持ちもわかるようになりました。結婚していたころは子どもがほしかったのと、義務感からセックスをしていましたが、いまは好きな人との共同作業や共通の趣味といった感覚です」
では今後も、充実したセックスライフを送っていきたい?
「更年期が始まると身体にもいろんな変化があるといわれますが、いまみたいな感じだったら、お互い工夫しながら歳を重ねても一緒に愉しめると思いますね」
【編集部より】
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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