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累計発行部数900万部を超え、子どもたちに広く愛される絵本「だるまさん」シリーズ。作者のかがくいひろし(1955~2009年)は特別支援学校のベテラン教員でした。50歳で作家デビューし、病で急逝するまでのわずか4年間に、珠玉の絵本を次々と生み出しました。読み聞かされると自然に体が動き出し、大きな笑い声を呼び起こす「かがくいひろしの絵本」は、長年にわたる障がい児教育の現場経験で培われた知見や実感から生みだされたものです。本展は、絵本原画や制作資料とともに、教員時代の貴重な映像記録や生徒たちとつくった教材などから足跡をたどり、今この瞬間にも日本中の子どもたちを笑顔にしているかがくい絵本の魅力に迫ります。

光と闇、その間の漠とした陰影に心を配り、多様な技法を用いた作品を、40年以上にわたり手がけてきた西川勝人(1949–)。抽象的なフォルムをもつ彼の白い彫刻は、木や石膏を用いた簡素な構造ながら、表面に淡い陰影を宿し、周囲の光や音さえもそっと吸い込んでしまうように、ただ静かにあります。本展は、1980年代より現在まで、一定して静けさという特質を保持し続ける西川作品の美学に触れる日本初の回顧展です。彫刻、写真、絵画、ドローイング、インスタレーション、建築的構造物の約70点が、作家自身の構成によって展示されます。静寂が拡がり、淡々とした時が流れる空間で出会うのは、きっと私たち各々の内なる静謐さでしょう。日常から隔たった美術館という場において、観想に耽る一人ひとりのための展覧会です。

2000年に台湾台北で生まれ、日大芸術学部絵画コースを卒業し、東京にて制作を行っているKAYA。画面から発せられる躍動感。大胆にデフォルメされた形体。不思議な力学でバランスを保つ絵画空間。KAYAの創り出す物語は新鮮さと発見に満ち、私たちの前に姿を現します。本展は絵画の持つ物質性や虚構性の狭間で思考を巡らし、具象と抽象の間を揺れ動くKAYAの初個展となります。束の間のタイムトラベルや長いロードムービーを楽しむように、KAYAの世界に思う存分浸ってみては。

最小限の要素で高速に球が行き交う卓球の動的瞬間を見事に紙面に定着してみせた「世界卓球2015」のポスターなど、力強いヴィジュアルメッセージが印象的な上西祐理さん。「大好きなものに囲まれて、関わって、生きていきたいとの想いからデザイナーになり、私が作るものがまた、誰かにとって大切な何かになるようなものでありたいと思ってやってきました」と語る上西さんは、どこまでも正直で、作り出すデザインからもその誠実さが伝わってきます。本展では、そんな上西さんの現在地点を飾り立てることなく紹介。“展示を見る”という体験ではなく、上西さんの好きなモノや美意識を一緒に楽しんでくださいね。

ヒップホップ、スケートなどのストリートカルチャー、また、それらと親和性の高いカンフームービーや東洋的なバックグラウンドを持つモチーフの要素をサンプリングソースとしてデザインに落とし込み、主にスクリーンプリントを用いてアウトプットを試みているグラフィックユニット「ZONSHANG」と、雑誌・書籍の表紙にあるロゴやイラストを、表紙から裏表紙までまるごと1冊手で切り抜き、それを製本することで新たに生まれる「ヌキ本」という作品を制作している作家「ヌキ本」の2組による展覧会です。過去から続く、時代時代のカルチャーをサンプリングし、オリジナルな手法をもって再構築する2組のアーティストによる「Ultra NUKImatic K.A.C.」。ぜひ会場で体感してみてください。

対象への個人的感覚の実現をテーマに、形式上の色・形のバランス・構図に重きを置いた絵を描く、南田真吾氏による個展です。カラフルな配色や、直線が折り重なることによって現れるどこかユニークで不思議な“奥行き”。思わずじっと見入ってしまいそうな作品が並びます。

主に木を用い、木の彫跡の無骨さと共存するポップな色彩、郷土玩具や童話・小説・SFファンタジーなどに登場してくる動物や人などファンシーでポップでシュールなモチーフで見る人を思わず微笑ませてしまう作品を制作している北浦和也氏による個展です。「親密でやわらかい記憶を回想【recollection】するように、断片的に見えるモチーフが溶け合っている。そんなイメージでタイトルをつけました。生活のなかに散りばめられた愉しさ、可笑しさを味わうように、誰かの個人的な思い出につながってくれると嬉しいです。」と北浦氏。ぜひ会場でご覧ください。
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