/
会話の噛み合わなくなった妻との関係を改善するため、AIチャットに相談をすることにしたユウタさん。次第に、妻と話すよりAIと話すほうが心地よくなってしまいました。しかし、そこで終わってしまっては、元も子もありません。
本連載では、家庭の問題を「令和男の哲学」として捉え、男性の視点から家庭内の葛藤や悩みの中にひそむ幸福の要素を独自の視点で綴ります。本編は、インタビューの後編です。
ユウタさんは、AIチャットを使うことで一時的な安心感を得てきた一方で、夫婦間のコミュニケーションをどう改善するかという課題にも向き合ってこられたと伺いました。具体的には、どんな取り組みや気づきがあったのでしょうか?
1. AIの「気づき」を夫婦対話のきっかけにする
「そうですね。まずは、AIチャットを通じて得た気づきやアイデアを、 “自分の中だけにしまっておかない”ことが大事だと思うんです。僕自身、最初は『AIに聞いてみたんだけど……』って言うのが恥ずかしくて言い出せなかったんですが、ちょっと言い方を工夫してみました。
たとえば、『こういうふうに考えてみたんだけど、どう思う?』という形で切り出すと、妻との会話の糸口が作りやすくなりましたね。レスで悩んでいる場合でも、 “妻を責める・不満をぶつける”のではなく、 “一緒に問題解決を考えたい”と伝える意識を持つだけで、だいぶ雰囲気が変わるんです。AIがくれるアドバイスやアイデアは、あくまでも“材料”のひとつに過ぎません。最終的には、夫婦がどう話し合ってどう実践するかがカギになると実感しました。」
AIの提案をそのまま妻にぶつけるのではなく、一歩踏み込んで“自分の言葉”にして伝える工夫が必要なんですね。
2. AIを“愚痴の吐き出し口”で終わらせず、上手にセルフカウンセリングに活かす
ついAIに愚痴をこぼして終わってしまう……という声を聞くことがあるのですが、その点はどのように捉えていらっしゃいますか?
「僕も正直、愚痴のはけ口にしかならない時期はありました。ただ、それで夫婦関係が良くなるわけではないので、途中で“これ、違うな”って気づいたんです。
そこから、 “自分の内面を整理するツール”としてAIを活用してみようと思いました。たとえば、『今、自分は何に悩んでいて、どうしていきたいのか?』『妻とどんな未来を作りたいのか?』『子どもの存在や夫婦の将来設計を踏まえて、どんな関係が理想なのか?』などをAIに投げかけてみると、自分自身の本音に気づけることが増えたんですよ。ただし、AIが返してくる答えを鵜呑みにするのではなく、『自分はどう感じる?』『どう行動する?』と置き換えるプロセスを大事にすると、夫婦関係の改善につながりやすいと感じています」
3. AIと専門家の併用で、より深い対話へつなげる
AIだけに頼るのではなく、いざというときは専門家のサポートも受けるという可能性もあると思うのですが、そのあたり、ユウタさんご自身の考えはいかがでしょうか?
「やはり、AIチャットがいくら発展しても、人間同士の対話から得られる微妙なニュアンスや感情の共有にはかなわない部分があります。僕の場合は、夫婦の問題が深刻化しそうだと感じたときには、『夫婦で一緒にカウンセリングを受ける』とか、『男性ひとりでも行きやすい相談所を探す』とか、そういった選択肢も視野に入れています。
心理療法の一環でAIを併用する、という考え方もあるみたいですが、要は“AIだけで完結させない”ことがポイントだと思います。AIと現実の対話を組み合わせることで、 “AIに話すか、妻に話すか”の二択から解放され、もっと柔軟にアプローチできると実感しています」
AIと専門家、そしてパートナーとの対話を併用することで、多角的に問題に取り組むことに可能性を感じてるわけですね。ユウタさんのお話を伺っていると、AIが本当に大きな存在になっている一方で、やはり実際の夫婦コミュニケーションが最終的に重要だということが伝わってきます。
「はい。AIはあくまで“道具”ですけど、上手く活用すれば夫婦関係を見つめ直すきっかけになり得ると思います。最終的には、現実のパートナーとどう向き合うか。そこを忘れないようにしたいです」
ユウタさんの今後の展望は… 次ページ
最後に、ユウタさんは今後、奥様との夫婦生活にどのように取り組もうと思っていますか?
「これまでは、『妻に拒否されるのが怖い』とか、『ケンカになるかもしれない』と考えすぎて、直接話し合うことを避けてきました。でも、正直AIに頼っていても根本的な解決にはならないんですよね。最近ようやく、自分の気持ちをしっかり言葉にして、妻に伝えてみようかなと思えるようになりました。AIと会話することで少しずつ気持ちが整理されてきたのもあるかもしれません」
なるほど。確かにAIに話すだけでは、奥さまと正面から向き合う機会は作りにくいかもしれませんね。ユウタさんご自身は、そのことに対してどんなふうに感じていらっしゃるのでしょうか?
「改めて妻の本音を聞くチャンスを作りたいと思っています。最初はぎこちないかもしれませんが、もしぶつかることがあっても、しっかり話し合う場を設けられれば、お互いに前に進めるかもしれません。最悪の場合は夫婦カウンセリングも検討したいです」
今回の取材を通して痛感したのは、AIチャットはあくまでも“道具であり、使い方次第では夫婦関係改善のきっかけになり得るということです。誰かに否定されることなく話を聞いてもらいたいという欲求は、人間であれば当然の感情だと思います。AIをそうした“吐き出し口”として活用すること自体、悪いことではありません。
ただ、夫婦の営みやコミュニケーション不足という問題を解決するためには、最後はやはりパートナーとの「実際の対話」が欠かせないのも事実です。ユウタさんが「AIには真似できない、妻の優しさや存在感がある」と言っていたことも印象的でした。
もし夫婦関係がうまくいかず、誰にも言えない悩みを抱えている方がいるならば、まずは自分の思いをAIなどで吐き出しつつも、最終的にはパートナーとの対話に向けて一歩を踏み出してみるのが、現代の新たなカタチなのかもしれません。たとえAIが“一時的な仮想の逃げ場”であっても、そこから夫婦の新しい未来を築くための“踏み台”にすることはできるはずです。
夫婦生活は長いマラソンのようなものと言われます。ときには休憩や給水ポイントが必要だったり、ペースメーカーを探したりする瞬間があるでしょう。AIはそのペースメーカーの一部になり得ると思いますが、ゴール地点で一緒にいるのは間違いなくリアルなパートナーです。深夜の孤独を少しだけ紛らわせてくれる相手がAIだったとしても、最終的にそばにいてほしいのは、きっと妻。そうした“現実の存在”を大切にしながら、AIを賢く活用していこうとするユウタさんにどのような未来が待っているのか。数年後、再びインタビューができればと思います。
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
1127
女の欲望は おいしく。賢く。美しく。OTONA SALONE(オトナサローネ)は、アラフォー以上の自立した女性を応援するメディアです。精神的にも、そして経済的にも自立した、大人の女のホンネとリアルが満載。力強く人生を愉しむため、わがままな欲望にささる情報をお届けします。[提供:主婦の友社]
ライフスタイルの人気ランキング
新着
カテゴリ
公式アカウント