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タカシさん(仮名・40代)。奥さま(同年代)と娘さん(7歳)の3人暮らしの共働き。タカシさんは営業職で残業続きの多忙な日々、奥さまは時短勤務なものの家事育児以外に「家の段取り」を担う時間が長く疲労困憊。平日は夕方以降が特に忙しいといいます。
家事分担をしているつもりのタカシさんですが、妻のイライラが収まらず夫婦間に溝ができ、ついには寝室を別にしたいと妻から切り出されてしまいました。
関連記事『「パパとママ、仲悪いの?」7歳のひと言で我に返った。夫婦のスキンシップ以前に止まっていたもの』につづく後編です。
<<関連記事を読む(前編)
『「パパとママ、仲悪いの?」7歳のひと言で我に返った。夫婦のスキンシップ以前に止まっていたもの』
※写真はイメージです
転機になったのは、妻からの一言だったとタカシさんは振り返ります。
「ある夜、娘が寝たあと、妻がぽつりと言ったんです。私、別にあなたに何かしてほしいわけじゃないんだよねって。最初は、また突き放されたのかと思いました。でも続きがあって。ただ、私が大変なときに、大変だねって言ってくれるだけでよかった。解決しなくていいから、わかってくれるだけでって」
タカシさんはそのとき、自分が何を間違えていたのか、少しだけ輪郭が見えたそうです。
「僕はずっと『何かをする』ことで関係を取り戻そうとしていました。家事を増やす、触れない、波風を立てない。でも妻が求めていたのは、行動じゃなくて『気持ちを受け取ること』だったんです。僕は営業の仕事柄、課題があれば解決策を出す癖がついていました。でも家庭では、解決より先に『聞く』が必要だった。それがわかるまで時間がかかりました」」
これは多くの夫婦に共通する構造かもしれません。問題が起きたとき、解決しようとする側と、まず理解してほしい側。どちらも悪意はないのに、すれ違います。
タカシさんは、それ以降、少しずつ言葉を変えていったそうです。
「以前は何かあると『ごめん』ばかり言っていました。でも妻からすると、ごめんって言えば終わりだと思ってるように見えたらしいです。謝罪が逆効果になることもあるんですね。だから『ごめん』の代わりに『教えて』って言うようにしました。『何がずれてた?』『どうしてほしかった?』って。最初は怖かったです。また怒られるんじゃないかって」
こうようなタカシさんの変化に対し、最初は奥さまに警戒されていたといいます。
「妻は『また関心あるふりしてすぐ忘れるんでしょ』って。でも僕が続けていたら、少しずつ話してくれるようになりました。週末の朝、娘が起きる前に15分だけ話す時間を作りました。最初は気まずかったです。でも続けていくうちに、妻の表情が少しずつ柔らかくなっていきました」
ここで重要なのは、一度の会話で関係が戻るわけではないという点です。信頼が崩れた夫婦は、小さな積み重ねでしか修復できません。派手な仲直りより、地味な継続が効きます。
家事についても、タカシさんの関わり方は変化したそうです。
「前は『手伝おうか?』って聞いていました。でも妻に言われたんです。『手伝うって言葉がもう違う。あなたの家でもあるんだから』って。その言葉に正直、最初はカチンときました。やろうとしてるのに何が不満なんだって。でも冷静になって考えると、確かに僕は『妻の仕事を手伝う』という意識だった。自分ごとになってなかったんです」
タカシさんは、それ以降「手伝う」という言葉を使わなくなったそうです。代わりに「今日は僕が夕飯をつくる」「洗濯、僕が回しとくね」と、主語を自分にするようにしました。
「言葉を変えただけで、妻の反応が変わりました。『ありがとう』って言ってくれるようになった。前は『やってくれたんだ』みたいな、どこか他人事の反応だったのに」
言葉の選び方ひとつで、関係性の質が変わることがあります。これは夫婦に限らず、あらゆる人間関係に通じることかもしれません。
>>夫婦の触れ合いは「戻った」のではなく「変わった」
スキンシップについても少しずつ変化があると、タカシさんは言います。
「完全に元通りではないです。でも、前とは関係の質が変わった気がします。以前の僕は、触れることで安心を得ようとしていました。自分が愛されているか確認したかった。でも今は、妻が安心できる状態かどうかを先に見るようになりました。妻がリラックスしているとき、僕が隣に座ると、向こうから寄りかかってくることがあります。それが今はすごく嬉しいです。自分から触れるより、相手が近づいてきてくれる方が、信頼されている感じがします」
スキンシップは「する・しない」ではなく、「どんな状態で触れ合うか」が大切なのかもしれません。疲れているときに触れられると負担になる。でも安心しているときに触れ合うと、絆が深まる。同じ行為でも、タイミングと文脈で意味が変わるのですね。
最後に、同じような状況にいる男性に向けて何か伝えたいことを聞くと、タカシさんは考えながらゆっくり語りだしました。
「僕が学んだのは、夫婦には正解がないってことです。ネットで調べても、本を読んでも、結局はうちの妻に当てはまるかどうかは別の話で。観察することと、聞くことだと思います。妻が何に疲れているのか、何を嫌がっているのか、何があると安心するのか。それは関係性の中で変わっていくので、一度わかったと思っても、また確認が必要になる。あと、自分の気持ちも伝えることですね。僕は怖かったとか、寂しかったとか、言えなかった。男だから弱音を吐いちゃいけないと思っていました。でも、言わないと妻もわからない。僕が黙っている間、妻は『この人は何も感じていない』と思っていたそうです」
沈黙は誤解を生みます。傷ついていることを言葉にしないと、相手には「平気な人」に見えてしまう。これは男性側が陥りやすい罠かもしれません。
現在のタカシさん夫婦は、完璧な関係ではないといいます。でも、以前と違うのは「話せる」状態になったこと。黙り込むのではなく、「ちょっとまずくなってる気がする。話せる?」と切り出せるようになったそうです。
「正直、今でもたまにやらかします。妻が疲れてるときに気づけなかったり、余計な一言を言ってしまったり。そのたびに『あ、また関係が揺れてるな』って感じます」
「戻った」とは言い切れない。でも、「戻ろうとし続けている」ーータカシさんはそう表現しました。取材の最後、タカシさんはこう付け加えました。
「たぶん、ゴールってないんですよね。関係がうまくいったら終わり、じゃなくて、ずっと続いていくものだから。面倒くさいけど、その面倒くささと関係を続けてるってことなのかなって、最近は思います」
寝室の問題は、寝室だけでは解決しない。その手前にある会話、信頼、安心感。それらに向き合い続けた先に、触れ合いが戻ってくることもある――タカシさんの話は、そのことを教えてくれました。
この記事のライター
OTONA SALONE|オトナサローネ
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