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結婚して家を買う。「夫婦」ならごくふつうの話だが、「同性カップル」だと幾多のハードルが立ちはだかる。そこで、前後編で同性カップルの住宅購入について紹介しよう。前編では住宅ローンの組み方から将来の相続まで、特に気になるポイントと対処法を4人の専門家に取材した。
※以下、同性カップルのAさん(35歳)・Bさん(32歳)の例として紹介
Q:支払いはどう分担するの?
A:片方が住宅ローンを組み、もう片方と支払いを分担するケースが多い
双方が住宅ローンを組む「ペアローン」は、夫婦など連帯保証人になれる親族同士でないと利用できない金融機関がほとんど(※)。そのため、同性カップルの場合は、片方がローンを組み、もう片方が返済の一部を負担するのが現実的であり、実際にそうしているカップルが多い。
だが、Aさんが住宅ローンを組み、Bさんが月々決まった額をAさんに渡して返済を助ける場合、さまざまな点で注意が必要だ。
例えばBさんが払うお金が「家賃」だとすると、家賃はAさんの「不動産所得」となり、確定申告の必要が生じる。一方、Bさんが渡すお金が「家賃」ではなく、Aさんへの資金援助だとしても、贈与とみなされ、贈与税の課税対象となる。
仮に、月々10万円を支払う場合は年額 120万円となり、贈与税の基礎控除額110 万円を超えるため、超えた10万円の10%にあたる1万円を納税する必要がある。ただし、月々9万円の支払いなら年額108万円となり、基礎控除内のため、贈与税は不要となる。
※本校執筆時点(2017年7月7日)で、同性カップルでもペアローンを組める邦銀はみずほ銀行のみ。同行では7月6日から同性カップルのペアローンを受け付けることを発表した
Q:2人の家だから、2人の名義にしたいけど、どうすればいい?住宅の名義は、本来出した額に応じた割合にするもの。Aさんが住宅ローンを組み、かつ頭金も出して買う場合は、Aさんの単独名義にすることになる。
Bさんも頭金の一部を出資する場合は、その額に応じて共有名義にするのが筋だが、親族ではない以上、2人の共有名義を前提に住宅ローンを組める金融機関はほぼない(※前述のみずほ銀行のみ)。
つまり、共有名義にしたければ、みずほ銀行のペアローンを利用するか、双方が(住宅ローンを組まず)現金を出し合って購入する必要がある。しかしながら、双方がそれだけの現金を持っているケースはなかなか考えにくい。
ほかに、Bさんも名義人(所有権者)になる方法として考えられるのは、AさんがBさんに借金をするというやり方。(画像1を参照)
まず、BさんがAさんに月々いくらかを貸し付け、Aさんの住宅ローンが終わった時点でBさんに返済するという借金の契約を結び、「金銭消費貸借契約書」をつくる。そして、Aさんの住宅ローン返済が終わったときに、Aさんが住まいの一部をBさんに譲渡する形で“借金を返済”し、名義の一部(所有権) をBさんに移転する。
このとき、Aさんに利益(譲渡益)が出ることになると、「譲渡所得税」がかかることにも注意が必要だ。譲渡益が出るかどうかは、購入額と売却額、諸費用や手数料次第だが、将来その可能性もあることは留意しておきたい。
「 借金」を清算する形で名義の一部を移転する方法 Q:ないとは思うけど…もしも、別れることになったら?万が一別れることになった場合は、(現実問題として)どちらかが家を出ることになる。Aさんが住宅ローンを組んで買った場合、Bさんが出て行くのが現実的だが、Bさんが住宅ローン返済を助けていたり、生活費を負担していたりした場合、Bさんが「共有財産である」と権利を主張することも考えられる。
夫婦が離婚する場合は、財産の一部を分ける(財産分与)よう求めることができるが、法的な「婚姻関係」を結べない同性カップルだと、財産分与という形で求めることは、現時点では難しい。そのため、曖昧な形で生計を折半していると、別れる際にもめる可能性は高い。
こうした離別リスクを考えると、本来は、家を買う際に「別れるときの精算方法」についてもあらかじめ取り決めておくのが望ましい。例えば、前段でも紹介した「BさんがAさんにお金を貸す」形にするなら、「万が一、関係を解消することになったら、借りた分をAさんがBさんに返す」と取り決めておく方法もある。
ただ、大好きなパートナーと一緒に家を買おうというときに、別れを前提にしたルールは決めにくいもの。そこで、別れる場合に限定せず、もっと広い意味で一緒に暮らすための取り決めを結んでおくことを専門家は勧めている。
それが「パートナーシップ契約」。住居費や家事の分担など、家にかかわること以外にも、貞操義務やパートナーの看護義務など、取り決めておきたい項目を盛り込むことができる。加えて、2人の絆をより強くする側面も期待できそうだ。
パートナーシップ契約の項目例 Q:どちらかが病気になったり、亡くなったときへの備えは?Aさんが病気で高度機能障害の状態になったり、亡くなったりして住宅ローン返済ができなくなった場合、団体信用生命保険に入っていれば、住宅ローンの残債は保険金によって弁済され、住宅ローン返済は免除される。だが、その家にBさんがそのまま住み続けられるとは限らない。なぜなら、Aさんが亡くなった場合、Aさんの財産は法定相続人である親族に相続されるからだ。Bさんは法定相続人ではないので、法律上、そのまま相続はできない。
AさんがBさんに財産を遺したければ、遺言書をつくっておく必要がある。公証役場で公証人に公正証書としてつくってもらえば、作成過程に疑いが生じないのでトラブルを避けやすいが、自筆のものでも要件を満たせば、法的効力はある(画像3を参照)。
ただし、遺言書で「Bさんにすべての財産を譲る」としても、法定相続人(親族)が「遺留分(法的相続人としての取り分)」を主張すれば、一定分は親族に。
AさんがBさんの存在を親族に隠していた場合、Aさんの親族から、「“パートナー”と称する人がいきなり現れて子どもの財産を横取りしようとしている」と思われてしまう可能性もある。そうならないように、親族にパートナーの存在を知らせておくか、それが難しい場合は遺言書の「付言事項」として、パートナーとの関係を記載しておくことが考えられる。
自筆証書遺言の書式例 遺言書があっても3分の1は親に 養子縁組でパートナーへ財産を残す方法もパートナーに財産を確実に遺したければ、養子縁組によってパートナーを養子とする方法もある。子どもであれば、法定相続人となるからだ。実際、養子縁組を組むことでパートナーに財産を遺そうとするカップルは多い。
養子縁組を組む際は、年上のAさんが親、Bさんが子どもとなり、Bさんは姓が変わることになる。だが、先にBさんが亡くなると、養親であるAさんとBさんの実親の3人が法定相続人であるため、相続人間でもめる可能性が生じる。
自分が亡くなった後、パートナーに財産を残すことだけが目的であれば、生命保険の形で残す方法もある。従来は、生命保険の保険金の受取人を配偶者か二親等以内の親族に限っている保険会社が多かったが、最近はもう少し条件を緩めている保険会社も出てきた。保険金を受け取る際に必要となる死亡証明書の受け取りなど、実務上のハードルは高そうだが、生命保険金や預貯金の形で財産を遺し、家については法定相続人である親族に遺して親族とパートナー間のトラブルを避けるのも、ある意味現実的な決着の仕方といえそうだ。
後編では住宅を購入した同性カップル2組の購入時のエピソードと購入後の暮らしについて紹介する。
●お話を伺った方・ファイナンシャルプランナー 竹下さくらさん
なごみFP事務所代表。住宅ローン等の相談、講師を行う。著書『事実婚・内縁 同性婚 2人のためのお金と法律』(共著)
・弁護士 寺原真希子さん
東京表参道法律事務所共同代表。女性、性的マイノリティーの相談に応じる。著書『セクシュアル・マイノリティQ&A』(共著)
・行政書士・ファイナンシャルプランナー 永易至文さん
東中野さくら行政書士事務所所長。ゲイとして当事者の相談に
応じている。著書『ふたりで安心して最後まで暮らすための本』
取材・文/日笠由紀
※税制や法律に関しては諸条件によって異なるため、詳しくは税務署もしくは各種専門機関にお問い合わせください
※この記事はSUUMO新築マンション首都圏版7月11日号からの提供記事です
この記事のライター
SUUMO
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『SUUMOジャーナル』は、魅力的な街、進化する住宅、多様化する暮らし方、生活の創意工夫、ほしい暮らしを手に入れた人々の話、それらを実現するためのノウハウ・お金の最新事情など。住まいと暮らしの“いま”と“これから= 未来にある普通のもの”の情報をぎっしり詰め込んで、皆さんにひとつでも多くの、選択肢をお伝えしたいと思っています。
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