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騒音・糞害…「ムクドリの都市ねぐら問題」自治体の防除策・最前線を探る! 個人宅でも防げるの?

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当記事はSUUMOジャーナルの提供記事です

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騒音・糞害…「ムクドリの都市ねぐら問題」自治体の防除策・最前線を探る! 個人宅でも防げるの?

ムクドリってどんな鳥か分かりますか? 茶色い翼・茶褐色の頭にオレンジ色のくちばしと脚のカラーリングがかわいらしい鳥です。しかしムクドリは大群になると困った存在。初夏から秋にかけて駅前など人に近い場所をねぐらにするため、鳴き声や糞(ふん)などで周辺住民に大きな被害が生じています。被害に遭った自治体はどんな対策をとっているのでしょうか。さらに個人宅での防御策も調べました。
ムクドリが初夏から秋にかけて駅前広場に集まるのはなぜ?

初夏以降、夕暮れどきになると、ムクドリ(椋鳥)の大群が駅前の街路樹に集まり、大きな鳴き声や糞で、周辺住民が迷惑を被っているという場所が全国で見られます。
「歩道が糞と抜けた羽だらけ。不潔で臭い」「駐めていた車が糞まみれに」「屋根や屋上が汚れるが掃除しにくいし、雨樋(あまどい)が詰まる」「鳴き声がうるさくてテレビの音が聞こえない」などの被害が見られます。こうしたムクドリ被害は全国の自治体で対応に苦慮している問題で、各自治体では対策を模索しています。

なぜムクドリは駅前などの繁華街に集まるのでしょうか。そもそもムクドリは、農作物に被害を与える害虫を補食するため、益鳥(えきちょう)とされ、人間と共生してきた存在です。本来は人里に生息し、里山の樹林地や屋敷林などをねぐらとしていましたが、宅地開発とともにそうした場所が減少してしまいました。そのため、天敵である猛禽(もうきん)類(鷹、フクロウなど)やヘビなどから身を守るために、大木のある駅前広場や街路樹が連なる大通りなど、ねぐらにしやすい樹木があって天敵があまり近づかない市街地に移ってきたと考えられています。

春から初夏までが繁殖期で、ヒナが巣立つまではつがいで行動し、木や人家の軒先などに巣をつくります。ヒナが成鳥となる初夏以降には大群化し、夜1カ所に集まってそこをねぐらとします。昼間は分散して郊外の田んぼや公園など緑と水がある場所で餌を採り、夕方になると市街地に大挙して戻って来ます。

群れは10km以上の範囲から集まり、数万羽となることもあるそう。東京都日野市にある筆者宅の近くでも、春以降、数羽から数十羽のムクドリが草原や河原にいるのをよく見かけますが、こうした家族規模の小集団がどんどん集まって、大集団になっていくのでしょう。

【画像1】ムクドリは全長24cmほどで雀と鳩の間くらいの大きさ。日本のほぼ全域に生息する留鳥(通年いる鳥)です。天敵から身を守るために群れで生活をしており1万羽以上になることも。鳴き声はギャーギャー、ギュルギュルなど。集団になると大騒音が(写真/PIXTA)

【画像1】ムクドリは全長24cmほどで雀と鳩の間くらいの大きさ。日本のほぼ全域に生息する留鳥(通年いる鳥)です。天敵から身を守るために群れで生活をしており1万羽以上になることも。鳴き声はギャーギャー、ギュルギュルなど。集団になると大騒音が(写真/PIXTA)

世界遺産・姫路城も困惑? 姫路市の対策を見る

ムクドリ被害を受けている自治体は、江戸川区、富山市、長野市、高松市など全国に多々ありますが、なかでも、多数の観光客が訪れる世界遺産のお膝元ということで注目された兵庫県姫路市の事例を見てみましょう。

姫路市は30年ほど前から、姫路駅と姫路城を結ぶ大手前通りの街路樹に数千羽のムクドリが押し寄せてねぐらとし、多くの観光客でにぎわう歩道を糞で汚すなどの被害が生じていました。周辺住民にとっては集団での鳴き声にも悩まされています。

この大手前通りの糞汚れの清掃と街路樹の枝葉の剪定(せんてい)に、姫路市では2003年から2014年までにおよそ1億円もの莫大な費用がかかったそうです。姫路市道路管理課によると、街路樹を剪定すると効果があったそうですが、樹勢が衰えないようにしたり、樹形が変わらないような景観上の配慮が必要とのこと。

ほかにも次のような対策を行っています。
●1990年:フクロウの模型を75個以上、街路樹につり下げる
●1997~1999年:磁石を設置(鳥類の体内時計を乱すと言われている)
●2006年:商店街などで、忌避音(ムクドリが危険を感じたときの鳴き声)を流す
●2012年:イオン(電荷を帯びた原子)を発生する特殊なテープを設置(鳥が嫌がると言われている)
いずれも一時的に効果があったものの、すぐに慣れてしまう結果となったそうです

【画像2】姫路駅から姫路城へ続く大手前通り。人通りがあり、うっそうと茂る並木が続く通りは、ムクドリのねぐらに最適のようです(写真/PIXTA)

【画像2】姫路駅から姫路城へ続く大手前通り。人通りがあり、うっそうと茂る並木が続く通りは、ムクドリのねぐらに最適のようです(写真/PIXTA)

姫路市の対策のほかに次の方法も各自治体で試されています。
●街路樹をネットで覆って、侵入を防ぐ
●木酢液など、忌避剤(ムクドリが嫌がる成分)を街路樹などに設置する
●LEDの電飾を街路樹に取り付ける
●サーチライトを向ける
●街路樹をばっさり伐採する
●目玉模様の風船を設置する
いずれの結果も、ほとんど効果がないか、一時的に効果があるものの次第に慣れてしまうようで、各自治体では対策に苦慮しているようです。

2007年には、姫路市「大手前通り街づくり協議会」の呼びかけで「ムクドリサミットin姫路」を開催し(後援:姫路市)、ムクドリ対策で悩みを抱える24の自治体などの担当者が集まりましたが、決定的な方法は見つからず情報共有に留まったそうです。

【画像3】ムクドリが住み着くと下の歩道がひどい状態に(写真提供/株式会社エイカー)

【画像3】ムクドリが住み着くと下の歩道がひどい状態に(写真提供/株式会社エイカー)

効果アリと考えられるムクドリ防除の最終兵器!?

●特殊波動方式の防除装置
姫路市は上記の経緯を経た後に、2015年に、特殊波動方式のパルス発生装置「Bird Protector」を導入することにしました。この装置はムクドリが嫌う不規則な周波数のパルス(ごく短時間だけ流れる電流や電波のこと)を流すことで、装置の周辺に寄せ付けなくするというもの。

この装置を開発した滋賀県の企業「株式会社エイカー」によると、鳥が嫌う不規則なパルスをプログラム上で生成し、毎回異なった高速パルスを浴びせることで寄せ付けなくするのだそうです。爆音機器、忌避音機器(危険を知らせる鳴き声)、超音波発生機器のように音で追い払う機器はムクドリが次第に慣れてしまい、効果が一時的であるのに比べて、特殊波動方式の機器はパルスをランダムに発生させるため、慣れを防止する効果があるとのこと。音は人間には「ガリガリ、ガガガガ」というように聞こえます。

姫路市がこの装置を大手前通りの街路樹に50mおきに8台設置し、毎日18~20時に数分置きに作動させたところ、ムクドリの大群が移動したそうです。しかし、移動した先は駅の反対側の南駅前広場だったため、新たにねぐらとなった場所でも防除策が必要になってしまいました。南駅前広場に装置を2台設置したところ、今度は大手前通りの装置がない場所に移動。大手前通りに機器を増設して対処したそうです。

ムクドリにとって安心して寝られる場所は人の多い市街地。追い払ったからといっても山へ飛んでいっている訳ではないことが分かります。姫路市道路管理課にお話を伺うと、「装置の効果は確実にありましたが、結局、市内のほかの場所に移動してしまうので、市全域での完璧な対策というのは難しいですね。いたちごっこであるのは分かっていますが、やるしかありません」とのことでした。

【画像4】写真左/作成装置例(実際の装置はそれぞれの現場状況に合わせた特注製造となります)。費用は特注内容によって異なり、姫路市の場合は1台30万円程度とのこと。写真右/樹木への設置イメージ(写真提供/株式会社エイカー)

【画像4】写真左/作成装置例(実際の装置はそれぞれの現場状況に合わせた特注製造となります)。費用は特注内容によって異なり、姫路市の場合は1台30万円程度とのこと。写真右/樹木への設置イメージ(写真提供/株式会社エイカー)

【動画5】エイカーが行ったムクドリ追い出しテスト(動画提供/株式会社エイカー)

株式会社エイカー・鳥獣被害対策企画課の笹岡聡悟さんによると、この装置「Bird Protector」は全国で100件以上の納入実績があり、そのうち7割近くが、姫路市のほか、浜松市、富山市などの自治体でムクドリ、カラスなどの害鳥防除対策に使われています。自治体のほかには、空港や漁港、漁業組合、病院、マンション・集合住宅管理会社、牧場、アミューズメント施設、運送会社、製造業などの企業が多いとか。鳥の被害が多いのが分かります。設置型のほか、メガホン型のBird Protector「トリップバード MZ-800」(税別9万9800円)もあります。

効果アリと考えられるムクドリ防除、こんな方法も

●鷹による追い払い
福井県福井土木事務所が、福井市・大名町交差点付近で行った対策も有効なものと考えられます。ムクドリの防除策として、鷹による追い払い、街路樹の剪定、磁気発生装置、テグスの設置、電飾の設置等を試みたそうですが、確実に効果ありと判明したのが鷹だったそう。

経験を積んだ鷹匠(たかじょう)により鷹をムクドリのねぐら付近に飛び回らせて威嚇。ムクドリは命の危機を感じて、その場所に戻らなくなるそうです。5~9月にかけて週に2~3回程度実施した結果、すべてのムクドリが移動しました。ただし、継続的に行わないと長期的な効果は見込めないようなので、費用がかかるのも事実です。
※鷹匠とは:日本の伝統文化として受け継がれてきた鷹狩りのために、鷹の飼育や狩りの訓練を行う専門家

【画像6】鷹の威嚇によってムクドリは命の危機を感じ、その場所に戻らなくなるそうです(写真/PIXTA)

【画像6】鷹の威嚇によってムクドリは命の危機を感じ、その場所に戻らなくなるそうです(写真/PIXTA)

●ロケット花火と猛禽類の剥製・鳴き声の組み合わせ
長野市では、2015年からロケット花火の打ち込み、フクロウやオオタカの剥製に鳴き声を組み合わせることで、市立南部小学校校庭の木に飛来しているムクドリの追い払いに一定の成果を見せているそうです。ただし、ロケット花火は校庭の広さがあるからできることで、使用場所が限定されるのがネックだと思われます。

姫路市、福井県、長野市の行った防除策は効果が見られますが、別エリアに大群が移動してさらなる防除策が必要になる、断続的に行わないと効果が表れず費用がかかるといった点が気がかりです。広範囲かつ継続性を考えて防除策を考えていかなければならないことが分かります。

それでも、「ここは危険な場所」「居心地が悪い場所」とムクドリが認識するよう、根気よく追い払うことが大切なのだと感じました。

個人宅にもムクドリが飛来! どうすればいいの?

ムクドリ被害に遭うのは自治体や企業だけでなく、個人宅でも同様です。とはいっても自治体のように音波装置や鷹、ロケット花火などを導入することは困難です。個人で防除するにはどうすればいいのでしょうか。

自治体の行った防除策で個人でも可能なものは、猛禽類の模型を置く、庭木をネットで覆う、木酢液などの忌避剤を庭木に設置する、LED電飾を庭木に取り付ける、庭木を伐採するなどが挙げられますが、効果が一時的だったり、美観を損なったり、ご近所に迷惑が掛かるなどの問題も考えられます。

姫路市などで効果の見られた特殊波動方式の装置はどうでしょうか。自治体・企業向けの装置の場合は比較的高額なため個人での導入は難しいでしょうが、個人向けの小型メガホン型装置が昨年から市販されています。コストは2万円近くかかりますが、個人宅でムクドリ等の被害に深刻に悩んでいるなら、こうした装置を使うのが良いかもしれません。

【画像7】「Miniトリップバード MZ-100」(税別1万9800円)。有効範囲は約5~10m。庭やベランダ、近くの電線にいるムクドリ等に効果があるそうです(写真提供/株式会社エイカー)

【画像7】「Miniトリップバード MZ-100」(税別1万9800円)。有効範囲は約5~10m。庭やベランダ、近くの電線にいるムクドリ等に効果があるそうです(写真提供/株式会社エイカー)

【動画8】「Miniトリップバード MZ-100」のカラス追い出しテスト。20mほど離れた場所でも効果が見られました。ムクドリ以外にカラスや鳩などの野鳥にも効果があります(動画提供/株式会社エイカー)

こうして調べてみると、ムクドリ被害は人間の都市開発・宅地開発によって引き起こされたものということが分かります。しかし、都市部ではムクドリ大集団との共生が難しい以上、ムクドリに少しでも本来の生息地である里山へ移り住んでもらえるよう、根気よく防除策を続けていくことが最も大切なのだと感じました。

●取材協力
・姫路市道路管理課
・株式会社エイカー 住まいに関するコラムをもっと読む SUUMOジャーナル

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この記事のライター

SUUMO

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